エラいヤツのハートを盗んじまった怪盗の話。
なろうラジオ大賞用小説第十一弾。
【 今夜あなたをさらいに参ります 】
俺が住んでるボロアパートの居間に、そんな予告状が置いてあった。
表社会では会社の営業マン、裏社会では義賊な泥棒やってる俺の家に泥棒入ったとなれば笑い者なので、多くの防犯センサーを置いてた部屋に。
いつでも部屋に入れる。
正体不明の相手が、遠回しにそう主張している。
正直恐怖しか感じない。
仮に予告状の文面が多少ロマンチックだとしてもだ。
というか今日は残業で遅くなり、もう夜だ。
いったいどんな奴が俺の部屋に侵入して予告状を置いたのか。
とその時、玄関のドアノブがガチャガチャ回る音がした。
回し方がとても乱暴で、しかも一回回して開かないと分かったのに何回も回している。その行動に俺は狂気を感じた。
「あれれ~? なんで閉めてるのぉ? 今夜来るって予告したのになんで閉めてるのぉ~?」
とその時。
ドアの向こうから鈴を転がすような声がした。
まさか、相手は女なのか?
「こうなったら強引に入りま~す♪」
そして女は、ガチャリという音が聞こえた後……俺の部屋のドアを開けた。
やっぱりこの女、合鍵作っていたのか!
こいつ、いったい何のつもりで俺の部屋に……ん? その短めの金髪に、右目の泣きぼくろ……まさかお前は前回の盗みの標的の宝石の持ち主、バース家の跡取り娘のエミリア!?
「うんその通りだよ私の怪盗さん♡」
エミリアは両目を開けたまま、口角を上げた。
「あの時宝石と一緒に私の心も盗んで私をその気にさせておきながらあれから何にもないからここまで来ちゃったけどいいよね? 貴方は私の物。だから今夜は私が貴方を盗んで、ア・ゲ・ル♡」
長い長い台詞を言い終えると同時に、エミリアは、どこでどうやって入手したか分からんテーザー銃を懐から出し俺に向けた。
さすがに身の危険を感じた俺は、護身用にと、前々回の盗みの時に警官から拝借したテーザー銃を彼女に向けようとした……とその時!
「警察だ! 住居不法侵入の現行犯で逮捕する!」
「な、何を? は、放しなさい!」
玄関から突然女性警官が現れ、エミリアを羽交い締めにした!
助かった。
侵入者を感知すると警察や警備会社に自動で連絡する防犯センサーが働いた……って、あれ?
じゃあなんでエミリアが最初に侵入した時に反応しなかった?
「まったく。一度しか会ってない程度で抜け駆けしようとするとは」
「「へっ?」」
謎の台詞に、俺とエミリアは同時に反応した。
ちょっと待て?
ここにいるのは俺とエミリアと……。
あまりホラーな感じにできませんでしたが、あとは……お解りいただけますね?