いち の に
長いので切っていこう作戦展開中。
娘は立ち上がった。
同じ年頃の令嬢とは違い少々背が高い彼女の視線は第二王子にほぼ並ぶ。
「は?」
「婚約破棄と国外追放ですね。」
娘は欠伸を噛み殺しながらも溜め息の出るような見事な礼を王子達と控える貴族に行い、立ち去ろうとした。弟も姉に追随する予定であったが、母が止めた。苦情を言おうとした弟は母からの怒気を察し再び座り直した。
焦ったのは、誰でもない王子だ。彼は慌てて彼女の腕を掴む。
「ま、待て!貴様!逃げる気か!」
娘は掴まれた腕に視線を落とした後、ゆっくりと視線を上げて王子を見た。
ベール越しではあるが王子は一歩下がり腕を放した。
「逃げません。ただ、自宅で父の指示を待ち追放先の発表を待ちたいと思います。では。」
あっさりと言って身を翻す。
「いや、だから、待て!ステラに対する謝罪を要求する!」
再びの言葉。
ここで初めてブランジェは、王子の後ろで震えている少女に気付いた。
ふわふわしたピンクブロンドの愛らしい少女はブランジェの視線を感じて身を隠した。
「どなたでしょうか?」
本当に分からないから首を傾げる。しかし、王子はブランジェを鼻で笑った。
「白々しい、貴様がステラの大切な母君の形見の品を壊したり、彼女を一人だけお茶会に呼ばなかったり、次々に嫌がらせをしたことは分かっているんだぞ!」
ブランジェは黙って王子を見る。
真っ直ぐな青い瞳に射ぬかれた王子の背中にステラの体が当たる。
「きゃっ!」
「あぁ、ステラごめんよ、」
「デイビス、怖いわ、ブランジェ様が睨んでる。」
第二王子は視線をブランジェに向けるが彼女は既に礼拝堂の中間辺りに移動していた。
「ま、待て!」
「デイビス王子…。」
低い夫人の声。
「…ラーゼフォン公爵夫人。」
「神聖なる礼拝堂でのこの騒ぎ、許されるとお思い?」
ここに来てデイビス王子は人々の視線が冷ややかであることに気付いた。
「し、神聖なる場所だからこそ、非道なる罪を白日のもとに晒さねばならなかったのだ!せ、正義のため、」
夫人から発せられている怒気に押され王子の言葉は尻すぼみになっていった。
「娘のことは、後程詳しく聞くとして、お座り下さいませ、ほら、そろそろ陛下方がいらっしゃる時間ですわ。」
有無を言わせぬ夫人の迫力に第二王子とその一団は押し黙るしかなかった。




