ろく
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レイズナー伯爵が王立図書館での勤務中に母からの手紙を受け取ったのは2日前のことである。
グランベルム侯爵家の次男として生まれたシグルズ・レイズナーは幼い頃から本が好きで、知的好奇心溢れる性格だった。
5つ上の兄バーシアスは侯爵家の後継として幼い頃から教育を施され、自分と2歳年上のテセウスはスペアとして育てられてきた。しかし、兄は弟の目から見ても丈夫で優秀だし、問題はないだろうと兄弟で考え、弟は剣の道、彼は学問の道を選んだ。
そんな彼のもとに7つ年下の妹が生まれた。ビエラと名付けられた赤ん坊はグランベルム侯爵家にとって待望の女の子であり、母上がんばったなぁー、なんて思いながら愛らしさに家族一同が夢中になった。
ビエラは今まで見たどの赤ん坊よりも可愛らしいが、段々とシグルズの好奇心を刺激する存在となった。
「ミルクないの?」
ティータイムの紅茶。ミルクティーのおかわりを頼んだら侍女が苦笑して部屋を出ていく。いつもストレートかレモンティーだったシグルズがミルクティーを頼むのはかなり稀だった。
「急に頼んで悪かったね。」
戻ってきた侍女は、思っていた以上に早く帰ってきてミルクティーの用意をする。
「いいえ、こちらこそ、シグルズ様のご希望に添えず申し訳ありません。」
「にしても、早かったね。」
「はい。お嬢様のミルクを分けて頂きましたので。」
「えっ!これ母乳!!」
ぎょっとするシグルズ。侍女達はコロコロ笑う。
「まさか、嫌ですわ。ちゃんと牛の乳ですよ。」
シグルズは、妹が乳母だけではなく、母、そして牛の乳を沢山飲んでいることを知った。
「2人がかりで足りないなんてある?妹は僕達みたいに男の子じゃないだろうに。」
尽きることのない食欲。
侍女達は、困ったような顔を見せるばかりだった。
「父上や、母上は、知っているの?」
尋ねるとどちらかと言えば呑気な母はともかく父は疑問に思っているだろうに。
「ご存知ですとも。しかし、シグルズ坊っちゃまが気になさることではありません。」
確かにそうではある。
侍女からそう言われたものの、気になり出すと止まらないシグルズは妹の食欲に注目した。
(乳母の乳だけでなく、牛の乳をあれほど飲む赤子がいただろうか。)
母に指摘すると、母は何かに気付いたらしいが、苦笑しただけだった。
観察すればするほど異常な食欲をみせる妹。
空腹と思われる泣きの時に地震が起きる不思議。
空腹時に屋外にいると傍らにある草花が成長する不思議。
これが一体何をさし示すのか。シグルズの好奇心は尽きることがなかった。