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いち

一度は書きたかった婚約破棄もの。物語を書くのは久しぶりのため最後まで到着出来るか不安ですが、がんばります。

6/28”続く“を削除してみました。

「ブランジェ・ラーゼフォン公爵令嬢!ステラ・ダンバイン男爵令嬢に対する数々の非礼、未来の王族として、いや、貴族、いやいや人として許されん!この私、デイビス・ド・ファフナーの名に於いて、貴様との婚約は破棄し、国外追放処分とする!」


突然の大声に人々の注目が集まった。美しいと言われる顔をベールで半分隠しているため名指しされた公爵令嬢の表情は見ることができず、人々のざわめきだけが大きくなる。

「ふん、己の罪の重さに言葉をなくしたか?」

発せられた言葉の波を向けられた娘は豊かな黒髪を背に流し貴族令嬢として恥ずかしくはないが清楚で地味なドレスを身に纏っていた。

しかし令嬢は王子の言うように言葉を無くした訳ではなかった。

『ブランジェ、起きなさい。』

『姉上、今は得意技を見せている時ではありません!』

娘の両脇に座る家族の心の声。

ざわざわとした喧騒は美しい天井画や国の歴史を語るステンドガラスに反響し大きくなっていたが、

「皆のもの!!静まれ!」

耳を塞ぎたくなるような良く通る声。この国の第二王子の言葉で多くの人々は傍観者となることを決め、徐々に落ち着いていった。

状況を見守ることを決めた多くの者達が、この場所に相応しくないことが王族により行われようとしていることを悟っていた。

『ブランジェ(怒)』

この建物は、王都の中心にある大昔王の祖先が神から与えられたと言われる聖杯を祀ってある礼拝堂。時刻的には後小一時間もすれば、ミサが始まる時間帯だった。


普段は貴賤に問わず開かれた礼拝堂であったが、第一日曜の朝は、王侯貴族、そして上流階級の民達の祈りの場となる決まりになっていた。

現状、礼拝堂の席は九割方埋まっており、王と王妃、そして第一王子の登場を待つばかりで、座っているのは臣下である貴族や役人幹部であった。

この国の宰相であり、娘の父親でもある公爵や第一王子の側近である長兄は仕事の都合上、まだ礼拝堂には来ていない。また魔法省の仕事で夜勤明けの次兄や他の兄達の姿もなく、娘の味方は、肘で姉を小突きながら第二王子を睨み上げてる10歳の弟と扇で口元を隠してはいるが目の座っている母だけだった。

第二王子の言葉でブランジェはハッと目を覚ました。(正確に言えば目覚めたのは母親からの怒気によるものだが。)

国王の登場を家族と待っていた彼女は、覚醒により開けた視界に入った豪華な男物の靴に、まず趣味が悪いと思った。赤地に金糸銀糸の刺繍のされた服も趣味が合わないと思った。

徐々に上がっていく視界に入ってきたこれまた派手な出で立ちの男を目にして、誰だと考えを巡らしながら、母親からの怒気に目の前に現れた一団と浴びせられた言葉を真剣に考えてみた。

「なんだ?文句でもあるのか?」

明らかな嘲笑を浮かべる第二王子。

令嬢ブランジェは、漸く届いた声に彼の正体を思い至った。と同時に若干寝起きだが、抗議のために立ち上がろうとした弟を制することは忘れなかった。

「承知致しました。」



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