第7話 たどり着いた道
「あ!!あともうちょっとで着きそうね」
この山を登り始めて、どれほどの時間が経ったのかは分からない。
なんせこの場所は時間の概念がないから。
太陽はいくら時間が経とうが、同じ位置に存在するし、天候が変化することもない
最初は戸惑いを隠せない私だったものの、
今の私にはこの山を登りきるという確固たる目標があったため、どんどん歩を進めた。
その結果、山頂がもう視界の端に移る場所まで来ていた。
本来であれば、高度が上がるにつれて、寒くなったり気分が悪くもなるものらしいが、
この場所にはそもそもそんな概念はないようで、全然しんどさを感じなかった。
「ふぅ~、やっと到着したわ」
そして、ついに私は山頂に到達した。
しかし、次の瞬間私の目の前にあった光景は信じられないものだった。
普通であれば、山頂からは雲や逆側の山道が見えるはず
しかし、私の目の前にあったのは青い海
それはまるで、山が存在するはずの空間に
いきなり海が出現したような異様な光景だった。
そして、目を凝らすと、更におかしなものが目に移り込んできた。
それはまるで海の中に道ができたかのようにそこだけ水が存在しない空間。
そしてその奥にはなんと人の姿が・・・。
「お~い!」
どこからか人の声が聞こえてくる。
そんなわけがないのに聞こえてくる声に私はついつい期待してしまう。
「きっと幻聴ね。なんだか今まで思わなかったけど、寂しいのかもしれないなぁ。こんなところに一人で・・・」
ついつい感傷的になってしまう。だけどそんなのは私じゃない。
私は幻聴を振り切って、前へと進もうとした。
しかし・・・。
「「お~い!!!」」
また聞こえてきた。それもさっきよりも大きな音で。
だけど辺りを見回しても誰も存在しない。いったいどこからこの声が聞こえてくるのか分からない声、すごく不気味だった。
「「「し~た~だ~!!」」」」
これは幻聴よ。そう考えて走り出そうとした私の耳に届いたのは、さっきとは違う言葉だった。
私はまさかと思いながら、視線を下に向けた。
すると、そこには草原が広がっていたのだが、それだけではない。
なんと私以外の人間が手を振りながら叫んでいたのだ。
「あ!ひ、人!?」