第5話:進む道
「本当にここはどこなんだろう」
僕は海の中を進みながら、考えていた。
あの後、海に飛び込んだ僕は当然のように溺れた。
そこで、これが夢ではなく現実に起きたことなのだということを思い知った。
だから僕はこのまま死ぬんじゃないかって感じてしまった。
僕は祈った。(まだ死にたくない・・・。)と
そしたら、不思議なことに海が割れた。
正確には海の中に別の空間ができたといった方が正確かもしれない。
その空間は僕の半径100メートル程度を囲むように出来上がった。
だから僕が100メートルくらい進むごとに
後ろの方から水が大量に落ちた時の音が響く。
おそらく、なくなった空間に水が戻る音なのだろうと僕は考える。
これで安心して海の中を進むことが出来る。
そして今僕のいる位置はさっきまでいた砂浜から結構沖の方まで来ていた。
もう既に振り返っても、砂浜が見えることはなくなっていた。
この海はどこまで続くのだろう。
そんなことを漠然と感じながら僕は歩き続けた。
「はぁはぁ。本当に何なのよ!!ここは!!」
私は先ほどから走っていた。
この一面に広がる雲の中、空の上を走る私。
どう考えてもおかしな状況にただ一人
行動せずにはいられなかった。
だから走ることにした。
走ってさえいれば、このずっと同じ景色も変わるかもしれない。
もしかしたら私以外の人間とも出会えるかもしれない。
そんな甘い期待を抱いていた。
だけど現実はそんなにも甘くはなかったようで、走っても走っても同じ景色。
その上、人の姿も確認ができない。
さすがに嫌気がさしてきたため、
今はこうして空の上に寝転がって大声をあげている。
というか、なんで私はこんな場所にいるのか分からなかった。
思い返してみれば、この場所にいる原因になったであろう校門をなぜくぐったのか。
それすらわからなくなっていた。
何か大事なことを忘れている。
そんな漠然としたものを感じるが何か思い出せない。
「ま、どうせどうでもいい些細なことよね?
はぁ、それにしてもここからどうすればいいのよ・・・」