第4話 幼馴染と親友
玲菜と連絡を取れなくなってから、一月が経とうとしていた。
玲菜は大学で知り合った数少ない友人の一人で、
行動を共にすることが最も多かった。
元々、コミュニケーション能力の乏しい私にとって
玲菜は太陽のような存在で、いつの頃か彼女に同姓なのに惹かれていった。
だけど玲菜には想い人がいることも知っている。
だから私はこのまま友達という関係性から抜け出そうとは思わない。
ずっと彼女と仲良くできれば、それだけで良かった。幸せを感じられた。
それなのに、玲菜は突然私たちの前から消えてしまった。
それも驚くべきことに誰も彼女の存在を覚えていない。
覚えているのはただ一人、私だけだった。
どうして、こんなことになってしまったのか分からない。
私は彼女と最後に話した時の会話を必死に思い出して、やっとここまでたどり着いた。
本当は思い出すのも嫌だった。
だって彼女と話した最後の会話は幼馴染を探しに行くというものだったから。
あんなにも焦っている玲菜を見たのは初めてのことだったと共に気付いてしまった。
その探しに行った幼馴染が玲菜の想い人なんだって。
追いかけても実ることはない。そんなことは当の昔にわかっていた。
だけど、もしもこのまま誰もが玲菜のことを忘れてしまったなら、
私にもチャンスはある。
だって彼女の想い人も彼女のことを忘れていることを意味するのだから・・・
そんな最低な想いを抱えたまま、彼女が訪れたであろう大学の校門にたどり着いた。
もう既に時間は夕方を回ったところだということもあり、
大多数の生徒は家に帰るため、はたまた部活に行くためか、校門をくぐっていた。
しかし、私はそんな彼らとは逆方向、大学方向へ向かい歩き出した。
そして、校門をくぐった瞬間、私の視界を白い光が覆った。
(なに、ここ?)
さっきまで私の目の前には大学の校舎が見えていたはずだった。
それなのに、今の私の目に映っている光景の中に校舎はなく、
辺りにいた人の姿も消えている。
その代わりというわけではないが、大きな山が目の前に現れていた。
その山はなんというか、目を惹きつけるものがあった。
私はこの山の頂上には何かすごいものが広がっているに違いない。
そんな漠然とした感情を胸に山を登る決意を固め、歩を進めた。