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第2話 後輩と幼なじみ①

「はぁ。まったく正吾の奴、どこに消えたのよ。」

私は幼馴染の正吾を探すため、そのためだけに彼の通う学園に来ていた。

彼のお母さんから電話を受けたのは3日前の事。

突然の電話に驚いた私だったが、

彼の母親からの話はそれをはるかに超えるものだった。

正吾とは、幼馴染というか腐れ縁とでもいった方が妥当かもしれない。

小学校の時からなぜかいつも同じクラスで、高校も同じ高校、

同じクラスでここまでくるともう運命を感じてしまうほどにいつも近くにいた

小学校まではお互いのことを「正吾君、玲菜ちゃん」と呼び合っていたのだが、

中学に上がる直前にあの年代特有のからかいを受けてしまって以降、

私は彼から距離を取り、呼ぶことも少なくなった。

まあ、とはいえ、正吾の方はこっちの気持ちなんて

お構いなしに話しかけてきて、正直うざかった。

だから私は高校卒業と同時に親の反対を押し切り、都内の大学へと進学した。

ここまで来れば、正吾と一緒の大学には行かなくて済む。これで解放される。


そう。大学に入学してから1月は思っていた。

だけど、想いっていうのは離れてしまってから気づくのかもしれない。

今までどんなことがあっても、近くには正吾がいて、それが普通だった。

だけど東京には当然、正吾はいなくて、最初のころは解放感で

いっぱいだった心も徐々に寂しさで覆いつくされて、

一月が経った頃にようやく気付いた。


私は正吾のことを好きだったんだって・・・。


私がひどい態度をとっても笑いながら話しかけてくれた。

何よりいつも近くにいてくれた。

ほんと、私って馬鹿だなぁ。



自分から捨てた後にこんな気持ちに気付くだなんて。

我ながらすごく恥ずかしい事だったけど、そんなことを思っていた。

それから3か月間は寂しさに耐えた。

だけど、私の中の正吾に対する想いは

日に日に募っていき、5月に爆発してしまった。

私は彼から解放されるそう思っていたことから、

上京と同時に携帯を買い替えて、メールアドレスも変えていた。

だから、彼からのメールも来なかったし、

私自身あの想いに気付いて以降はメールをする気にはなれなかった。

メールなんてしたら、うっかり自分の想いを吐露してしまいそうで怖かった。

だけど、そんなことは正吾は知る由もなく、

彼からしたら友達と連絡を取りたいくらいのことだったと思う。

彼は私の母親から新しいメールアドレスを

手に入れたようで、連絡をしてきたのだ。

あの時ほど、心臓が飛び出るんじゃないかって思ったことはなかった。


メールの文面は至極簡単なもので、

「玲菜ちゃん、久しぶり!そっちの大学はどうかな?

僕はまあまあ楽しいよ~!!またお話聞かせてね~。

あ、ちなみにこのアドレスはお母さんから教えてもらったんだ~。

迷惑だったら、ごめん」というものだった。


想いに気付くまでの私なら、無視するか、ひどい物言いで遠ざけていたと思う。

だけど、あの時の私は何をとち狂ったのか、本当におかしかった。

久しぶりの正吾からのメール。と興奮してしまった結果

、私は「好き」と一言だけど自分の全てを込めたメールを送ってしまったのだ。


今、思い出しても恥ずかしい・・・。

幸い、正吾は鈍感だったので、それが恋愛的な好きとは認識されることはなく、

友達の好きと認識されたようで、その次の返信が

「僕も玲菜ちゃんのことが好きだよ~。

というか好きじゃなかったらこんなにも長く友達でいられないでしょ~」

って返ってきた。

一瞬だけ、僕も好きだよって見えた時には

本当に想いをぶちまけそうになった。


でも直後のメールで冷静になれた。

そして、それから私と正吾はメル友になった。


本当に毎日毎日が楽しくてしょうがなかった。

授業中もお風呂中もずっと形態を手放すことはなく、

彼からメールが来たらすぐに返した。


でもそんな幸せだった日常はいともたやすく崩れ去ってしまった。

去年の夏のことだった。

またいつものようにメールをしていたのだが、

ここ2,3か月橘さんという名前の人が良く話に出てきていた。

そしてこの時も出てきた。

「今日も橘さんがね。すごかったんだよ!!

あの人、本当に何でもできるんだなぁって思い知らされたんだぁ。

料理、すっごく美味しかったよ~」



まさかとは思った。私は確認したくてたまらなかった。

だから、もう直球で聞くことにした。「正吾はその人が好きなの?」って。

てっきり否定してくれると思っていた。

そんなことないよ~。って返ってくるかと思った。


だけど、返って来たのは

「うん!!好き。あの人と一緒になれて今、すごく嬉しいんだ」と。

その日、私は柄にもなく泣いてしまった。

伝えるタイミングは何度もあった。

だけど彼を遠ざけたのは自分だという負い目から踏み出すことが出来なかった。

後悔してもしきれなかった。

私はこれまで生きてきて初めて失恋の痛みを味わった。

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