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巨乳を求める俺の青春

序章


「……寝坊した」


AM:09:15

俺は、高校生活二年目の始まりに盛大に遅刻した。



俺は桐牙幸也きりがこうや

親が有名作家なだけの、平凡な高校生だ

不自由な生活はしていなくて、勉強も運動も人並みにでき、友人にも恵まれている。

そんな俺にも、一つだけ悩みがあった。

それは_____



「幸也ぁ!おっそい!!今何時だと思ってんの!?」

「……10時」


こいつは和宮華那わみやかな

幼稚園の時からの幼馴染で、長い付き合いだ

顔も上の上ぐらいで、学校の間ではモテている……らしい

なんでこいつがモテるのだろうか

顔はいいけど、こいつ…


「普通に答えんな!なんで始業式の日に遅刻すんのよ!」

「あ〜……夜中までえろ本さが「やっぱ言わんでいい!!」


貧乳じゃん



そう、俺こと桐牙幸也は大の巨乳好きだ

昨日の夜も巨乳もののエロ本を探していて、寝坊した

俺の通うここ、日桜第一高等学校は小学から高校までのエスカレーター校なのだが、俺は高校からの編入生だ

中学の時は別の学校に通っていたのだが、後輩同輩先輩、どこにも巨乳がいなかった

俺は日桜校のような巨大校ならば巨乳がいるだろうと考え、転校してきたのだが…


「巨乳がいないからって遅くまでえろ本探してるなんて馬鹿じゃないの!? 貧乳の何が悪いのよ!!」


お分かりの通り、この学校にも巨乳はいなかった

一年かけて女子生徒一人一人を見て回ったが、誰一人、cカップ以上の子は存在しなかった

最後の一人を見た時のあの絶望感は忘れることは出来ないだろう


「女は巨乳であってこそだろうが!巨乳はなぁ!夢がいっぱい詰まってんだよ!お前こそ巨乳馬鹿にすんなよ!」

「はぁ!?今時は貧乳に需要があるって知らないの?ある層にとっては貧乳こそが正義なのよ!」

「そうよ!!貧乳こそ正義!貧乳こそ女の誇り!!」

「げ」


俺と華那の言い争いしに、唐突に横槍が入る

……あいつは、苦手だ


「結!そうだよね、貧乳悪くないよね!」

「あたりまえじゃん!巨乳好きは滅びればいいのよ」


麻川結あさがわゆい

それがあいつの名前だ

例に違わず貧乳なのだが、それを誇りに思っていて、巨乳好きの俺を天敵だと宣う華那の親友だ


「滅びればいいって、そんなのこの地球上の男のほとんどが消えてしまうなぁ?女は男がいないと駄目になるくせに、よくそんなことが言えるなぁ〜あ?」

「はぁ?女は別に男がいなくても駄目になりませんけど??そんなに巨乳が好きなら自分の胸にパッドでも入れて揉んでたらいいんじゃない?」

「何言ってんだ、女の胸がでかいからこそいいんじゃねぇか!」


今度は麻川との言い争いがヒートアップしてきた時、それを止めるかのように予令が鳴り響く


「……ふん、決着は次の時ね。教室に変えろ、華那」

「あ、うん。幸也!ちゃんと授業受けるのよ!」

「わーってるよ…たくっ…」


二人が教室を出るのと入れ替わりで、クラスメイト達が続々と入ってくる

なるほど、何人かは見覚えがあるがほとんどが初対面の人間だ

始業式にもHRにも出てない俺はそれが誰か分からないが、巨乳がいないと分かっているから特別興味もわかない


「おっ、幸也来てたのか。あれか、重役出勤ってやつ?」

「ただの寝坊だよ……」


後ろに貼られていた紙に書いてあった席に座ると、前に見慣れたイケメンが席についた


「良と同じクラスか…これで遅刻のときのノートには困らねぇな」

「いや遅刻すんなよ!?」


このイケメン野郎は俺の大の親友、笠崎良かさざきりょう

一年のとき同じクラスで、ひょんなことから俺が良の秘密を知ってしまい、それから仲良くしている

勿論俺は非道な奴じゃないから良の秘密を言い触らしたりはしないし、それをネタにからかったりしたりもしない

その秘密さえ除けば、良は人当たりがいい、いいやつだ


「あ、そういえばさ、転校生が来るらしいぜ?」

「転校生ぇ?うちのクラスにか?てか、らしいぜってまだ来てないのかよ」

「そうそう、家の事情で今から来るらしいけど、留学生らしい」

「……まじか」


留学生という言葉に少しときめくが、要は外国人がうちの学校に来るだけじゃないか

マンガじゃあるまいし、素敵な出会いとかもないだろう


本令が鳴り、ガラララと扉が開き教師が入ってくる


「全員揃ってるか〜?お、桐牙来てんじゃねぇか。良かったなぁ」

「なんだ、また館川先生かよ…。で、何が良かったって?」


館川先生は去年も俺がいるクラスの担任だった

悪い先生だが、テンションが上がったときの絡み方がとにかくうざい


「おう、みんなが待ちに待った転校生だぞぉ。シルヴィーさん、どうぞ」


館川先生が扉の外へ声をかける

クラスの奴らは興味津々に目を向ける

どうせ、碌な奴じゃない


カツ、カツと歩く音が響き、転校生が姿を現……


「結婚しましょう!!」

「ふぇっ!?」


転校生の姿が現れると同時に俺の目に止まったのは、胸

Dカップはあるだろうふくよかに膨らんだそこは制服のブレザーを押し上げ、大きく主張している

次に髪。金色に輝くそれはさらさらと透き通っていて絡まることなんて知らないかのように窓から入る風に靡いている

そして顔。瞳は綺麗な藍色をしていて、くりくりと大きい。唇はぷっくりしていて慎ましい。鼻も高くて素晴らしい形をしている。

そう、パーフェクト

彼女こそ俺の理想、俺の夢見た女性!!


「お名前は?好きなものは?素敵な胸をしていますね、あぁ、失念していた、俺はまだ結婚できないんだった、あと二年ほど入籍は待ってもらえますか?素敵な胸ですね」

「え、あ、あの」

「おー予想通りの反応だ。とりあえず桐牙、落ち着け」

「これが落ち着けるか!あぁ、素晴らしい、こんな素晴らしい女性がこの世に存在していたなんて!」


椅子を蹴っ飛ばして彼女に近づく

あぁ、香りも素敵だ……ビューティフル……

近くで見ると睫毛長い…お人形さんじゃないか

肌きめ細かいなぁ…


「幸也!そこっまで!」

「あぁ、良、止めてくれるな、これは運命の出会いなんだ!彼女こそ俺の理想なんだっ!!」

「見りゃ分かる!でも彼女困ってるじゃないか!」

「……あ」


はっと我に帰る

気づけば俺は彼女の手を握り、顔を限界まで近づけていた

手を握られた彼女はオロオロと目に明らかな困惑を移していた


「ご、ごめん!」


ぱっと手を離すと彼女はさっと俺から距離をとった

うっ…傷つく…


「笠崎、そのまま桐牙席に連れてけ」

「わーってますよ。大人しく連行されろ!」


名残惜しく彼女を見つめていると、良に首根っこを掴まれてズルズルと席へと戻された

でもやっぱり彼女は美しい


「あー…桐牙のせいで変に時間を取ったが、みんなお待ちかねの転校生だ。シルヴィーさん、自己紹介お願いします」

「は、はい。カミーユ・シルヴィーと言います。イギリスに住んでいましたが、父が日本人なので日本語は普通に話せます。父が日本に転勤して来たので、私も一年の間、日本に龍学することになりました。あの、よろしくお願いします……」


尻すぼみになりながらも自己紹介を終えると彼女は顔を赤くして下を向いてしまった

うん、可愛い

俺の周りには気の強い女が多いから彼女のような子は新鮮だ

ますますいい


「カミーユと呼んでもいいか」

「幸也黙れ」

「えっと、いい、ですよ…?」


睨むなよ、良

俺はなんとしても彼女を落とさなければならないんだ!

それにほら、俺のおかげで他の奴らも彼女に声をかけれてるじゃないか

お前もちらちら彼女のこと見てんの丸見えだからな

それにしても声も可愛いな

どこの有名声優にも負けてない、寧ろ勝ってる


「ということで、カミーユ・シルヴィーさんだ。お前ら、仲良くしろよ。席はそうだなぁ…空いてるのは桐牙の後ろだけか。シルヴィーさん、席はさっきの変態の後ろでいいかな」

「は、はい」


き、た〜〜〜〜〜!!!!

ほらみろ!やっぱりこれは運命じゃないか!

あ、あ、近づいてきた、俺の方見た、目逸らさないで、俺のこと見て


「……俺、超能力者とかじゃねぇけど今お前がすっげぇ気持ち悪いこと考えてるのだけは分かるわ…」

「気持ち悪いゆーな、素敵なお胸だ」

「マジで今鳥肌たった」



なんとでも言えばいい

これが俺の初恋、俺の運命、俺の人生!

なんとしてでも、俺は彼女を手に入れるんだ!


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