第五話 困惑
新キャラの紹介
宣隆:伊達晴宗の長男
彦太郎:伊達輝宗の別名
阿南:二階堂盛義の正室
宣隆は母親の実家である岩城家の養子になります。
伊達晴宗に嫁に出す条件として彼女の子を岩城家に養子にすることを約束させたそうです。
二階堂から人質がきた。
中立から私の勢力に入ってきたので裏切りを訝しがられることを回避する為に送ったか。
身の潔白を表明するにはいい手だが連れてきた嫡男を見るとどうも違う目的があるような気がする。
人質の身だというのに悲壮感も覚悟をも感じ取れない。
むしろ、この状況を楽しんでいるようだ。
廃嫡に利用されたか……
「宣隆よ、二階堂から来た人質をどう見る?」
「態度、表情を見る限り胆力があるかと。 しかし、あの者は本当に人質なのでしょうか」
「ふむ、確かに人質を感じさせぬ振る舞いに一部除いて周りの者も彼奴を人質としての対応をしとらんな」
行盛は伊達家に着てから悲壮感は一度も表情に出していなかった。
父親の二階堂照行の妻が伊達稙宗の娘であるから行盛は親戚の家に遊びに来たぐらいの気持ちでいたのだ。
二階堂照行が伊達晴宗と争えば人質である行盛は殺されるだろうが天文の乱が終結するまでは争わないのを確信していたからである。
行盛の中で天文の乱が終結したら早々に嫁を貰って元服して須賀川城に帰る予定。
その後は弟が代わりに人質になるだろうから行盛が人質でいる期間は短い。
その為、その短い期間でさえ二階堂照行が伊達晴宗が仲違いしない算段がついていれば身の安全は大丈夫だろうと考えていた。
「実に自然な振る舞いで生活しています。 それが人質という視点で見るととてつもなく不自然」
「然り。 廃摘に利用されたと思ったが彼奴の能力は酷いという訳ではない。 どういうことだろうか」
監視させている者から幾つか報告を見て判断したがうつけではない。
目的をもって行動している節が見える。
しかし、当家に害を為そうという訳ではないらしい。
悪巧みをしている様子は見受けられない。
「阿南も彦太郎も懐いている様子。 あやつが来てから二人の話題であやつが出てこない日はありません」
「それは誠か」
宣隆は阿南や彦太郎に対して少し距離を置いていた。
戦国時代、親兄弟が殺しあう時代である。
愛情があるが気を許しすぎてはならない現状の為、距離を置くしかなかった。
しかし、行盛は平成の世を生きた感覚も持つ為そういった気持ちは割り切れないでいた。
故の親戚の家に遊びに来た感覚なのである。
その為、阿南も彦太郎も親戚の子をあやしていたら懐かれたといった具合だ。
史実で嫁となる阿南には優しく接し、彦太郎には姉に優しくするように誘導し姉弟仲を良好にしていた。
阿南や彦太郎が泣けば涙を拭ってやり、転べば手を差し伸べる。
目線を同じ高さにして優しく話しかけたり、遊びには快く参加する。
怒られた時は庇ったり、一緒に謝まったりしてくれる行盛は二人の中で頼りがいのある同年代の子供である。
兄である宣隆は中々遊んではくれないし、悪いことをしてしまった時は大人と一緒になって叱るので怖い存在であった為、余計に行盛が好きになっていく。
「私も何度かあやつと話してみましたが、人当たりのよい人柄だと感じました」
「そうか。 しかし、心根は違うかもしれん。 一度試してみるか」
「それはよきお考えかと」
今回は短めです。