第四話 甘い覚悟
とある忍者を家臣にする予定です。
外交による武力衝突回避を考えていくうちに、一つの決意を決めた。
ハイリスク、ハイリターンだが父上に進言し実行してもらうしかない。
「父上、お忙しいなかすみません」
「かまわん」
まだ天文の乱は終結していない。
忙しいのはわかりきっているが、収まる前に一手打つ必要があると考えた。
「父上は伊達晴宗側につきましたが、もう一手打ってみてはどうでしょうか。 私に考えがございます」
「なんだ。 言ってみろ!」
実行されても成功する確立は低いだろう。
また、これを言ったことで父上の機嫌を損ねる可能性が高いだろう。
「この騒動が治まる前に私を人質として送り込んで裏切らない意思表示しましょう」
「行盛よ。 御主、何を申しているかわかっておるのか」
「今まで中立を保っていました。 もしかしたら情勢を見て風見鶏がついて来た程度に思われている可能性もあります。 その連中と同列にならない為に一歩抜きん出る必要がありますし、裏切らない表明にもなります」
人質になったら家臣の勉強会とかもできない。
しかし、父上は私の案は実行されない様なので家督を継ぐまで実行できない。
勉強会だけだとしても早くても元服してからになる。
時間を短縮する為にも伊達家中で直接俺を知ってもらい伊達家から嫁を貰う算段である。
嫁を貰う為に元服をし人質は弟と交換。
伊達家に人質になっていれば、蘆名家から嫁を寄こすこともないだろう。
運がよければ天文の乱を終結しに来た足利家と知己を得られるかもしれない。
「確かに行盛の懸念はわかるが……」
「別に伊達家に従属をする訳ではございません。 蘆名家から二階堂家からのちょっかいを減らす為の策と考えれば一考の余地はあるかと」
父上は難しい顔をし、考え込む。
「私も武家に産まれた身。 二階堂家の為になるなら私は人質になりましょう」
最後に策無しで人質に行くわけではないとしたり顔で父上を説得した。
「うむ…・・・」
話し合いはここで終了した。
数日後の評定で、父上はこれから起こりうる可能性を顧みて俺を人質にすることを家臣達に伝えた。
家臣達の中には反対をするものがいたが、俺から伝えた案だということを聞いて渋々納得したようだ。
それでも納得しなかった者は俺に直接話しを聞きに着ていたが、ちょっくら嫁貰ってすぐ戻ってくると爽やかな笑顔で答えたらドン引きされた。
心配してくれるのはありがたいが、個人的には楽しみにしている。
人質としての立場は悪いだろうがうまくいけば徳川家康の幼少期のような環境になるかもしれない。
織田家に人質の時は織田信長に連れまわされていたので比較的に行動に制限は他に比べれば少なかったのだろう。
また今川家に人質になっていた時は太原雪斎から多くのことを学び、生活はわりと豪勢だといわれている。
伊達家は今、分裂し戦時だがすぐに天文の乱が終わる。
落ち着けばまた大きい伊達家に戻る。
うまく立ち回れればそういった事を享受することができるはずだ。
楽観的な考えだが、伊達家での人質生活の時間はどれも無駄にはできない貴重な時間になるだろう。
伊達輝宗と仲良くなり、それとなく最上家以外の嫁を取らせようと画策できるかもしれない。
片倉喜多と仲良くなり、保守的な思想に染められるかもしれない。
少なくも伊達輝宗と仲良くなっておけばお互いの代に進んで争うようなこともないだろう。
そして、伊達家との関係が磐石だと周辺諸国に見せ付ければ、無闇に攻める輩はいないと思いたい。
ふと、蘆名家と田村家が浮かんだ。
心配だ。
やはり、なにかしらの策を打つしかないのかな。
蘆名盛興は伊達家から嫁を貰おうとし失敗するが二階堂家を攻めた際は伊達家との和睦に伊達晴宗から四女を娶る。
田村清顕は蘆名家等に対抗する為に伊達政宗に嫁がせるから油断ならない。
婚姻の為に二階堂家はこの両家の被害を被るわけだ。
蘆名家も田村家も滅亡するかどっかに行ってくれないかと切に願う。
その為にどうしたらよいだろうか。
蘆名家は俺の息子が跡取りになる程だから従属する前に一族を排除するのが楽そうだが手段はどうする。
蘆名盛興は領内で二度、造酒禁止される程の酒豪家で死因は酒毒の可能性があったそうだ。
造酒禁止時期に酒を贈らせよう。
俺だけではなく同盟した国にも同じ様に酒を送る策を手伝ってもらうか。
蘆名盛興は息子が産まれていないから、酒毒になれば家中が荒れるだろう。
しかし、田村家はどうするべきか。
跡取りが一人しかいないとないから蘆名家のような一点狙いはできない。
蘆名家と対立し戦えるだけの戦力はあるので戦で滅亡させるのは難しい。
狙うなら兵糧攻めや情報操作辺りか。
道を封鎖したり商人を近寄らせないとかも一手かもしれない。
何をするにも忍者が欲しい内容だ。
東北に有名な忍者は誰かいるだろうか。
百地三太夫とか服部半蔵、風魔小太郎あたりの有名どころは知っているが他は……
忍者といえば伊賀、甲賀、風魔、軒猿、蜂屋、戸隠という単語はぱっと思いつく。
割と地理的に近いのは軒猿や戸隠かな。
忍者の採用も考えておかねば。