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第二話 プレゼン

二階堂照行:盛義の父

伊達稙宗:伊達晴宗の父

伊達晴宗:伊達輝宗の父

伊達輝宗:伊達政宗の父

伊達政宗:この物語では登場しません

 まず、何から手をつけるべきか。

 家督を継いだ後に行動するにしても、一人では進められない。

 家中で味方を増やす必要があるな。

 家臣に何を始めさせるにしても、やることを理解する必要があるから勉強は必須である。


 そうすると教材が必須。

 定番の活版印刷を用意しないといけない。

 初めは協力家臣とその文官達の分あれば十分だろう。

 伝える内容の有用さが認められれば、さらに刷ればいい。

 その為には中身のある内容にしなければ……


 新規開拓事業、釈迦堂川治水事業、大型街道事業、特産品事業、そしてそれらを実行する為に必要となる文官が足りないので教育する企画。

 これらを実験と称して、家臣を集めよう。

 これらの事業を実行させる為、どうすればできるか考えさせよう。

 目的と手法、スケジュール大まかな話をして夢を持たせよう。

 それらが実行が可能か何度も話し合いさせ、内政に意識を向けさせるか。


 前準備を怠らなければ、家中を一つにまとめられるかもしれない。

 だが、恙無く進行できなければ跡取りしての資質に疑問を持たれる可能性もある。


 他にもやりたいことは多い。

 エビフライを親しみがもてる環境にする為に領地開発は必須だ。

 少なくとも食堂で民がエビフライを食べられる状況にはしたい。

 だが、今のまま強引に作ったとしても家臣の心が離れてしまっては意味がない。

 都や堺のように流通をよくし、領地が発展する中で完成させればきっと大丈夫だろう。

 エビフライまでの道は長く険しい。

 その為にまず、父を説得しなければ!






 「父上、これをみてくだされ!」

 「これは、なんぞ」


 計画書の束を二階堂照行の前に差し出す。


 「二階堂家を繁栄させるべく、私の考えを形にしてみました」


 わりとよくできたと自負できる計画書である。

 うまく興味を持ってもらえれば、父上の代から開始できる。

 そうでなくても、こういうことをやりたいと知らせておけば家督継いだ後、計画を進めやすい。

 しかし、問題がある。

 自惚れるつもりはないがこの時代、跡取りが優秀すぎると不和を起こす原因になり廃嫡される可能性に繋がる。

 平成ならば自身より賢い子は歓迎されるが、この乱世では子が親を脅かす存在になるのだ。


 「ワシのやり方への非難か?」

 「違いまする。 私が政をするならコレをやりたく思いまする。 が、如何せん私はまだ父上の様な政をしたことがなく相談にまいった次第」


 ヨイショするが、これはこれで家臣と団結し父を隠居に追い込むと思われるかもしれない。


 「うむ、よく出来ておる。 しかし、これだけの量を終わらせるには時間が足らなすぎるな」

 「私もそう思いまする。 ですが、できあがれば二階堂家に大きな利点がございます」


 俺じゃなくて二階堂家ですよ。

 父上にも利益ありますよ。

 というスタンスで父上の代で計画を実行させようという魂胆。





 そんなやり取りを続けていたら、唐突に父上が別の話題をふる。


 「行盛よ。 お主は今回の騒動はどう思う?」

 「長引けば足利家の介入による講和で終わるでしょう。 そして、蘆名家と最上家、相馬家辺りが独立するのでは?」


 天文の乱について、ざっくりだが結果を知っていた。

 1542年から1548年の間、伊達家の父子間の内紛に伴って発生した一連の争乱である。


 当時伊達家は南奥羽のいくつかの諸大名を従属させていたため、騒動は大きくなる。

 従属している諸大名や家臣達は父親である伊達稙宗につくか、子供の伊達晴宗につくかで別れ東北を舞台に大きな争乱を起こした。

 その結果、いくつかの諸大名は従属を解除し領土を拡大する結果になる。


 「どちらについても問題が残りますでしょう。 蘆名盛氏と田村隆顕の不仲は決定的。 騒動は終わっても両名の間では争いが絶えぬでしょう」

 「そうなれば、両家の間にある二階堂はどちらにつくか迫られる」

 「ええ、どちらも最前線になり厳しい戦いになるでしょう。 父上の代ならまだしも私の代ではきっと消耗しきっていると想定できます」


 行盛は乾いた笑いで答える。


 きっと父上の中では中通りにいる二本松家と白河家を攻め立てる予定だったのだろう。

 しかし、私が出した計画書の中にはこの2家と停戦協定を結ぶ旨が記されている。


 「今回の騒動で伊達家の家督は伊達晴宗に移るでしょう。 現在、二階堂家は中立を保ってます。 蘆名家と田村家のいざこざで伊達家を頼るなら今のうちに晴宗側につくのがいいでしょう」

 「うむ、だが蘆名家も晴宗側に所属しているぞ。 いかがする?」


 蘆名家と田村家は天文の乱の最初は稙宗側であったか、不和を起こし蘆名家は晴宗側についたのである。


 「きっと、蘆名家は二階堂家に私に姫を送るでしょう。 そして、伊達家は蘆名家との婚姻により影響力が大きくなるのをよしとしない。 晴宗の姫を私に送り、蘆名の姫は送り返させ蘆名家と不仲にさせるでしょう」

 「婚姻で勢力を拡大しようとは、親が親なら子も子だな……」


 伊達稙宗は婚姻外交で勢力を大きくしていった面がある。

 そして、父上も伊達家から嫁を貰っている。


 「蘆名家から姫が来なければ、伊達家から姫が送られることはきっとないでしょう。 ですから蘆名家の予測される動きを伊達家に伝え先に嫁を貰うべきでしょう」

 「先に両家の動きを予測している姿勢を見せれば警戒するかもしれないが、そのままではいいようにされるか」

 「もし婚姻が成り立たなければ最上家と同盟を結び伊達家と共に北から蘆名家を牽制で田村家よりも隣接している伊達家に警戒させるのも手かと」


 しかし、その場合はまだ産まれていない義姫と伊達輝宗との接点になってしまうので気をつけないといけない。


 「うむ、わかった。 よき話し合いであった。 行盛よ、今後も励めよ!」


 父上はどういう答えをだすのか。

 きっと、計画書についてもその時にまた話があるのだろう。

足利義輝が天文の乱に介入したのが1548年3月で義姫の誕生も同年だった為、最上との婚姻の進言を変更

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