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おにぎりころりんはフラグ

 俺達はデガールの街から数キロ程離れた場所にあるメシシッピという渓流に来た。

 

 無限ゼンマイは水気の多いところを好み生息しているからだ。


 今日も天候は晴れで、渓流から流れる水の音や木々が風に揺れてさざめく音が心地良い。


 まるでピクニックに来た気分だ。


 「うーん、気持ちいいねぇ。ピクニックに来たみたいっ!」


 隣で機嫌が良いティナが腕を空に伸ばし、背伸びをしながら呟く。


 いかんな感想が被った。


 そんなんじゃあ駄目だ俺はもっと意識高く持たないと、例えを訂正しよう。


 まるで、えっと、うーん、そうだっ!ハイキングっ!ハイキングに来た気分。


 あれ?それじゃあ意味変わんなくね?


 

 そのまま俺達は水が流れる音が大きくなる方向へ進んでいく。


 すると木々が段々と多くなっていき、日光が差し込む面積も減ってくる。


 気がつけば辺り一帯は完全に森になっていった。


 そのまま暫く歩き進めたところで。


 「マスター、少し休憩にしませんか?」


 俺とティナの少し後ろを歩いていたゴム娘が提案してくる。


 確かにデガールの街からここまで歩きっぱなしだったからな、休憩も大事だろう。


 「そうだな、座るには丁度いい切り株があるし、ここらで休憩にしようか」


 俺達の近くに用意されていたかのように切り倒された切り株が丁度三つあった。


 「わーいっ!お昼ご飯だねっ!」


 切り株に腰掛け、各々が休憩に入る。


 ゴム娘は切り株に座って佇んでいる、木の隙間から降り注ぐ日差しが丁度彼女を照らし、まるで天使がこの地上に舞い降りた風景を絵に描き留めたような芸術性を感じた。


 本当、ゴム娘は美人だよな。


 まぁ黙っていればの話だが。


 なんでこう、口が悪いんだろうか、毒属性じゃああるまいし。


 なのに彼女の毒舌は強力だ、世の中女の子に罵倒されたい頭のおかしい性癖を持った輩がいると聞いたが俺は至って普通なのだ。


 どれだけ彼女に泣かされたことか。


 でも彼女がなまじ美人過ぎるだけあって強くは言えねぇし。

 

 ああ、俺の才能を恨みたい。


 えっ?偶々だってっ?そんな事は気にすんな。


 一方ティナはというと、出発する前に買っておいた昼飯のおにぎりを大きな口に美味しそうに運んでいる。


 そんな美味そうに食べているとこっちまでお腹が空きそうだ。


 何だかこの森の風景も相まってかなんだかのどかで平和な気分になるな。


 緑は人の心を落ち着かせる効果があるというがその通りのようだ。


 そういえば師匠の家も森にあるが師匠もこのような平穏な環境に憧れて建てたのだろうか。


 俺もこんな所に住んでみたいなぁ。


 そりゃ街から遠くなるので色々不便な所はあるだろうが、人の声の変わりに聞こえる小鳥の囀りと水の流れる音など聴いて過ごすのは楽しそうだ。


 まるで、自然のオーケストラだな、あ、俺今上手い事いった。


 それにしても森はいいな。


 今のところ危ないモンスターなんて見かけないし。


 周りを見渡してもあるのは木、木、木……。


 「あっ?」


 俺は木を見渡しているとある不自然な事に気がついた。


 木の幹に大きな傷跡があるのだ。


 それはまるで獣の爪で引っかかれたような傷。


 大きさからして犬だとかそんなスケールではなくもっと大きい、人間より大きい生物だろう。


 ……何だか嫌な予感がしてきた。


 もしもだ、この傷は縄張りのマーキングだったとしたら。


 今座っているこの切り株は人間ではなく、その生物によって切り倒された物だとしたら。


 まずいぞ、このパターンは、完全にフラグだ。


 「お前ら、もう行くぞ。ここは危ない気がする」


 俺の本能的な危険信号が何か察知し早いところここから去ることを進めている。


 「ちょっと待って、後一個で食べ終わるから」


 俺の気なんか知らないティナが最後のおにぎりを口に運ぼうとしている。


 「早く食べろよ……これ以上ここにいると絶対に危ねぇからな」


 「わかってるって。いっただきまーすっ!あーんっ」


 最後のおにぎりに唇がつきそうになったその時だった。


 「あっ、ああっ!」


 突如、強烈な突風が吹き、ティナの小さい手からおにぎりが零れ落ちる。


 そしておにぎりはころころと転がり続けていく。


 「待ってっ!待ってよっ!」


 転がるおにぎりを追いかけていくティナ。


 全く、何やってんだ、このアホの娘は。


 そのままティナはおにぎりと一緒に茂みの置くに消えてしまった。


 「マスター、どうしましょうか」


 「取りあえず追いかけるぞ。ここら一帯は多分危ないからな。単独じゃあ危険だ」


 「わかりました」


 俺とゴム娘はティナが消えていった茂みの後を追おうとした。


 その時だった。


 

 「きゃあああああっ!!!!」


 茂みの向こうから聞こえたのは珍しい鳥の鳴き声ではなく、ティナの悲鳴だった。


 「ティナっ!」


 俺達は急いで茂みに入る。


 そうすると直ぐに道は開けていき、視界に入ってくる風景は大きな川と滝だ。


 そして中央に立っているのが。


 「ひ、ひぃ……」


 尻餅をついて怯えているティナ。


 ティナの目の前に立ちふさがっているのは全長二メートルは越えているであろう巨大な熊だ。



 はい、フラグ回収されましたー。

 

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