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ドキドキ、真っ暗闇っ!

 俺達は遺跡の入り口へと足を運び、中を見てみる。


 中に広がるのは闇ばかり、それ以外にはなにもない。

 

 「こうも暗いと進めないな」


 何か灯りになるものはないか。


 そう、例えば炎とかあったら最適なんだが。


 どこかに炎魔法使いは居ないものだろうか。


 そうだっ!ウチのパーティにはとっておきの魔法使いがいるじゃあないか。


 「おい、ティナ。ちょっと魔法で灯りを灯してくれないか?」


 俺はその辺に落ちている少し太めの木の枝を手にとってティナに渡す。


 ところがティナは渋い顔をして。


 「うーん、あたしこういう繊細な事は苦手なんだよねぇ。こうもっとシュバーンっ!って燃やすのは得意なんだけど……」


 そうだった、ウチの炎魔法使いは魔力の制御が出来ないポンコツだった。


 「ゴム娘、どうにかならないか?」


 「……私に言われてもなんとも言えませんが」


 「まぁ、そうなるわな」


 これは勇気を持って突入するしかなさそうだ。


 「よし、こうなったら仕方ねぇ。暗くて危ないが入るぞ」


 俺達はゴム娘を先頭に縦に並んで遺跡に進入することにした。


 遺跡内は外の光が入らず、暗い。


 しかも湿気が多くてじめじめしており、身体から嫌な汗がじわっと染み出る。


 「……なんか気味悪いところだね。じめじめしてるし。これじゃあ魔法が使えないよ」


 「お前が魔法使ったら俺達全員丸焦げになるからな」


 こんな狭い所で先程の炎魔法を使われたら逃げ場などない。


 もし直撃を免れても一酸化中毒でお陀仏だ。


 「いいかティナ。この中で絶対に魔法を使うなよ。絶対だからな…………って痛っ!」


 後ろのティナに話しているところで前を歩いていたゴム娘にぶつかる。


 流石ゴーレムだけあって俺の整った鼻が石壁にぶつかったような衝撃が走る。


 ……本当に鼻は整っているんだぞ?その辺の団子鼻と一緒にするなよ?


 「マスター、静かに。今なにか声が聞こえたような」


 「声?」


 俺もゴム娘に習って耳を済ませてみるが何も聞こえない。


 「気のせいじゃないのか?」


 「いえ、確かに聞こえたような気がしたのですが……例えるなら寝起きのマスターのようなガラガラな声が」


 「おい、何が言いたい。はっきり言え。……まぁ用心して進んで行こうぜ」


 ここはリーダーらしい声をメンバーにかけて一歩一歩奥へと進む。


 しかし、俺の内心はそうではない。


 さっきから何故かしらドキドキが収まらないのだ。


 これは決してトイレがしたいとかそんな感じではなく緊張というかなんというか。


 考えてみて欲しい、こんな真っ暗闇の中で俺は美少女二人にサンドイッチにされているのだ。


 まぁ一人は毒舌家でもう一人はロリッ娘なのだが。


 こんな状況普通の男なら多少どきどきするシチュエーションなのではないだろうか。


 心理的錯覚の一つとして吊り橋効果というやつがある。


 それは男女が不安定な吊り橋を渡る最中、スリルや恐怖の時に生じるドキドキが恋愛感情だと錯覚する現象だ。


 今、正にそうなんじゃないか。


 そして、この暗闇の中だ、例えば俺の手があらぬ方向へ行き偶然にお尻なんかに触れてもなんにもおかしなことではない筈。


 いや、でも大事な仲間にセクハラはよくないな、うん駄目だ。


 勝てよ、俺の倫理観だとか正義感だとかそんな輩っ!


 しかし、人間は駄目だと言われた事をやりたくなる生き物な訳で。


 俺の意思とは反して右手がゴム娘へと向かっていく。


 ああ、駄目だ、駄目なんだよそんなことはっ!


 そうと頭では理解しても右手は制御出来ず、ぐんぐんと伸びていく。


 ああっ!やばいっ!


 「どうしましたマスター。先程から鼻息が……」


 むにゅっ。


 「ひゃんっ!」


 俺の手が何か柔らかい物に当たり、ゴム娘が普段からは想像出来ない可愛らしい声をあげた。


 あっやっべ。


 「……マスター、そんなに死に急ぎたいならここを墓場にしてさしあげてもいいんですよ」


 「ごめんっ!ごめんってっ!これは不可抗力でっ!」


 「随分都合のいい不可抗力ですね。では私も不可抗力というやつでマスターの首をへし折ってもいいですか?」


 「怖いこというなよっ!本当に申し訳ないっ!ごめんってっ!」


 やべぇよ、俺マスターなのに殺されるかもしんね。


 「二人ともさっきから何お話してるの?」


 「ティナさん、気をつけてください。このど変態マスターは仲間であろうと誰これ構わずセクハラをするクソ野郎で」


 「ああっ!ティナ気にすんなっ!なんでもないからさっ!ほらゴム娘先に進もうぜっ!」


 俺はゴム娘から発せられる暗闇でもはっきりと分かる殺気をビンビンに感じながらもゴム娘を押して先へと進んだ。


 ほんと、セクハラとか痴漢は駄目だぞっ☆



 俺が殺されかけてから幾分が経過し大分奥地へと進んだような気がする。


 気がするというのは周りが暗闇なので方角が分からないからだ。


 しかし、ここまで外にいたようなアンデットモンスターにも襲われていないし順調といえるだろう。


 「…………」


 だけれど俺達を覆う空気は最悪だ。


 先程のセクハラ紛い事件からゴム娘が一向に話さなくなった。


 ティナも普段は鼻歌なんか歌って陽気なのに黙り込んでいる。


 怖ぇ……この沈黙が怖ぇよ。


 後でどんな酷い目に遭わされる事やら。


 「な、なぁゴム娘さん。さっきはですね、ええっと」


 「マスター、黙ってください」


 俺が先程の事柄に対して弁解しようと思ったところでゴム娘が遮った。


 こりゃ相当怒ってらっしゃるのか?


 「今、また声が聞こえました」


 「あっ?声?」


 そういえば入り口付近でも言っていたな、寝起きの俺のような声だとか。


 もう一度耳を澄まして俺も声とやらを聞いてみることにする。


 すると。



 「……生の業を全うし、土深くで横たわっている屍よ。我の呼び声に応えよ」


 これは詠唱か?それも聞いたことがない詠唱だ。


 これってもしかして黒魔法の……。


 「今再び我の生き血で目覚めよっ。リサシテイションっ!」


 声の主が詠唱を終えると紫色の発光が遺跡内を包み込む。


 「ぅ………うがぁ……」


 発光を終え、再び辺りが闇に戻った後聞こえてきたのは先程聞いたアンデットの呻き声だ。


 そして。


 「ふひひ……召喚成功。貴方の名前はオースティン、これでまた友達が出来た……ふひっふひひ」


 アンデットの呻き声と共に聞こえてくるのは不気味な女の声だ。


 何を言ってるんだ?友達?それに何故かこの笑い声何か身に覚えがあるというか……。


 「おいっ!そこにいる奴っ!」


 俺は暗闇に潜むそいつに対して声をかけて見る。


 「ふひっ!人間の声が……まさかオースティン君喋れるのか?」


 「お前だよお前っ!そこにいるさっき呪文を唱えていたお前だよっ!」


 「ふひっ?私?私の事?」


 ああもうっ!暗いから埒があかねぇっ!


 「も、もしかしてそこに人間がいるのか?」


 俺が埒があかずイライラしていると声の主からそう尋ねてきた。


 「そうだ、悪いが暗くてよく見えない。明かりかなにかあるか?」


 「そ。そういうことなら」


 何処からかマッチが擦れる音が聞こえ、前方に薄っすらだが灯りが灯った。


 そして灯りと共に映し出された声の主の正体は。


 「ほ、本当に人間だぁ……ひぃいいっ!!」


 俺達を見て酷く怯える女だった。


ゴム娘は性感帯はありませんが触覚があるので反応しちゃったってことで。

痴漢は犯罪だしセクハラもモラルに反するから皆はしちゃ駄目だぞっ☆

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