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オルアレンの森

 俺が住んでいる地域で最も面積が広く、有名な森であり今回のクエストの目的でもある『オルアレンの森』にやってきた。


 種類様々な木々が生い茂り、葉が日光の遮る。


 師匠の住んでいる森や昨日行った渓流等とはまるで雰囲気が違っていて何処か不気味だ。


 俺達は獣が歩き作った道を進み、遺跡へと向かっていた。


 「ねぇ、ミスト。何か道に落ちてるよ。」


 最前線を歩いていたティナが何か発見したようで俺に報告してくる。


 目を凝らし、その物の正体を確かめてみると。


 「……あれは、モンスターか?こんな所に横たわって何してんだ?」


 「ちょっと近づいてみよっと」


 「おい馬鹿、あんまり近寄るなって」


 俺の注意を無視して何時も通り能天気な鼻歌を歌いながら近づいていくティナ。


 しかし。


 「うわわっ!?この子死んじゃってる?」


 俺も近づいて確認してみると確かにそのモンスターは死んでいた。


 モンスターの名はオルアレン狼と言ってこの森に生息している狼型のモンスターだ。


 単独で行動し、森に潜んで獲物を狩るこの森の環境下ではトップクラスの位置づけである筈の狼が死んでいる。


 しかもその死体は無残に腹が裂け、まるで何者かが捕食したような噛み傷が至る所にあった。


 「マスター、どうやら死体は一匹だけではないみたいです。」


 ゴム娘に言われ周りを見渡してみると道の外れや木の下には小動物などの死体があちらこちらに散らばっていた。


 「うげぇ……なんだこれは。しかも意識したらなんだかくせぇな」


 周りに落ちている死体はもう既に死んでから数日が経過していたのか腐臭がしてきて、ハエが集っていた。


 「なんかここ、怖い場所だね……」


 ティナが顔を少し青くしながらポツリと呟く。


 確かにあまり長居はしたくない場所ではある。


 しかしこの死体は一体なんなんだろうか。


 何か他のモンスターがあらかた食い荒らした後であろうか。


 いや、それにしても食い方が荒すぎる、普通捕食の為なら残さず食べるだろうしこんな無駄に捕食などしないだろう。


 狩りにしたって死体が回収されていない時点でその線はないし。


 というと考えは一つだ。


 これはアンデットモンスターの仕業だろう。


 アンデットモンスターとはそもそも死んだ人間やモンスターが魔力によって身体だけ動いている状態のことで思考能力は残っていない。


 しかし、どうにも空腹という生物にとっての三大欲求である一つは残っているようでこうやって生者の血肉を求めて彷徨うらしい。


 恐らくここ最近発生しているアンデットモンスターという奴がこの死体を作りあげたのは間違いないだろう。


 アンデットモンスターが発生する条件というのは主に二つある。


 一つは生物が死んだ際身体から放出される魔力が偶然残っていて、アンデットとして復活するケース。


 そしてもう一つは何者かが意図的に死体達に魔力を与え、アンデットとして復活させているケース。


 魔法使いというのは体内に秘めている魔力を炎や氷に変換させた魔法を使う職業だが、中にはそうした使い方をせず、世の中で言う禁忌や外法などと言われる類に魔力を使う輩もいる。


 そういった輩は黒魔法使いといわれ、国から危険人物扱いにされている。


 今回の謎の大量発生もしかしたらその黒魔法使いが関係しているのかもしれないな。


 だったら俺達の手におえないクエストだが。


 そうであって欲しくないと思いながらもこれがフラグに繋がっているのではないかと不安を抱えて一歩足を進めようとしていると。


 「あっ!今度はあんなところに人がいるよ」


 ティナが指を指したのは道外れの森の中だ。


 そこに立っているそれは人のシルエットに見えるが、なにか妙だ。


 ふらふらと足取りがおぼついていないし、足を引きずって歩いている様とか。


 あっこれってあれじゃね?もうフラグ回収されたんじゃね?


 「おい、ティナ余り近づくんじゃねぇぞ。なんかヤバイ気がするからな」


「ねぇねぇ、こんな所でなにしてんのー?」


 俺の考えも知らないティナが無邪気にそのシルエットに駆け寄る。


 ああもう、あの馬鹿は人の話を聞かねぇっ!


 頼む、浮浪者とか道に迷った冒険者であってくれぇ……。


 そんな俺の悲痛な思いは叶う筈がなく。


 「どうしたの?君顔色悪いよ?」


 「ぅ……うぅ……」


 「何?お腹痛いの?」


 「ぅ……うがああああああああっ!!!」


 そのシルエットが人間の跳躍力とは思えないほど高く跳んでティナに襲い掛かった。


 「ティナっ!」


 俺が急いで駆け寄ろうとしたがそれよりも先にゴム娘が一目散に走ってティナの前にでる。


 「ぐがあああああああっ!!!」


 アンデットが声にならない雄叫びをあげゴム娘目掛けて一直線。


 「はぁっ!」


 それをゴム娘が右拳で撃退、アンデットは力なく放物線を描いて吹き飛び、そのまま倒れる。


 「お前らっ!大丈夫かっ!?」


 俺も遅れて二人の下へ行く。


 「あわわっ……怖かったよぅ」


 「お前は本当に馬鹿だな。いいかこれからは知らない人の所へはほいほいついていくんじゃねぇぞ」


 「マスター」


 「それからあれだ。なんか見つけたからってすぐ駆け寄るな。お前は犬か」


 「マスター」


 「……なんだよ、今説教してるんだから後にしろ」


 いい機会だからな、この際だから耳にタコできるくらい説教してやるか。


 「……マスター、周りを見てください」


 「あっ?だから俺は忙しい…………って」


 俺はゴム娘に言われ渋々周りを見渡してみるとそこには無数のアンデット達が群れをなしており、俺達を中心に円状に囲んでいた。



 えっえぇ……。

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