君を見ていた
初の二次創作。
田中友仁葉さんの友葉学園シリーズのヒロイン視点です
榎田 可憐。
私は好きな人がいる。
それが同じクラスの鏡 裕くん。
彼は周りからは空気の様に扱われていた。
でもを私は知っているから……彼の優しさを。
彼の優しさは普段から見せているものでもあった。
みんなが気がつかないだけ。
人の掃除を代わったりある日は迷子の女の子を家まで送っていたり。
でも私が好きになったきっかけはそれだけではない。
言葉にして説明できるものではない。
みんなして裕くんの描いた絵を私だって言うんだから。
話も聞いてくれなし。
大体私は美術1だもん。
描けるものなら私もあんな絵描いてみたいよ…。
挙句先生まで私ってことで納得するんだから。
「裕くん」
昼食の時間、私は思い切って裕くんに話しかけた。
ドキドキして名前ですら噛みそうになる。
「ねえねえ一緒にお昼食べない? 裕くんいつも一人だからさ」
「……えっと、榎田さん?」
「うん!」
名前覚えててくれたんだ。
全然目立たないのにやっぱり優しいな。
ここまで優しいとわざと目立たないようにしてるのかな。
「……僕、裕です」
ゆ……た……?
私の中の思考回路がショートし、頭が真っ白になる。
絶対ウザいと思われた……どうしよう。
「ねえねえ、榎田さんお弁当食べよう?」
友だちに呼ばれ、止まっていた思考が雪崩のように一気に帰ってくる。
それを整理しながら私は必死に声をかけた。
「え! ……ゆ、裕くんも」
「ううん。邪魔しちゃ悪いし、僕は弁当じゃないから」
邪魔とかじゃなく一緒に食べたいんだけどな……。
名前の間違いのせいで強く出ることもできず、「そうなんだ」とだけ言いお弁当を食べに戻った。
お弁当を食べながらも後悔の念が募っていった。
楽しくご飯を食べる場でさえ私は雰囲気を壊してしまった。
放課後になり、裕くんは一人で教室に残っていた。
みんなは気にすることもなく、教室を後にする。
「榎田さん帰ろー!」
「え、えっと、ごめんね。今日はちょっと用事があるの」
「そっか……まあ仕方ないね。うん、じゃあバイバイ」
「バイバイ」
折角のチャンスだもん……ちゃんと謝らなきゃ。
裕くんは人がいなくなると掃除を始めた。
もしかして、そのために残ってたのかな。
私は箒を手にして言った。
「……て、手伝うよ」
目を見開き裕くんはこっちを見た。
やっぱり、迷惑だよね……。
でも諦めないから!
「……そっか、ありがとう」
邪魔だと言われなくてよかったと心の中で思った。
それから私たちはお互い声をかけることもなく黙々と掃除をした。
大体の掃除を済ませ、私は勇気を出して裕くんの方を向いた。
「……えっと、裕くん」
「……榎田さん。苗字忘れてるなら遠慮せずに言っても怒らないよ?」
忘れるわけないけど、やっぱり私みたいなのに名前で呼ばれるなんて嫌なのかな。
不安を抱え聞いた。
「ち、違うよう! ……苗字の方がいい?」
「……出来れば」
「……えっ?」
やっぱり……嫌なんだ。
そのとき、次は苗字で呼ぶことを決意した。
下を向き、涙が溢れるのを必死に抑えた。
「……榎田さんみたいな綺麗な人に下の名前で呼ばれるのは、少し恥ずかしいかな」
「そ、そんなことないよ! それから綺麗なんて恥ずかしいこと言わないでよ……」
「え? 榎田さん人気者だし言われ慣れてるでしょ。頭いいし、優しいし、それに大人っぽくて綺麗だし」
思いもよらない言葉に動揺した。
私が綺麗なら世の中みんな綺麗だよぉ。
お世辞言われたって嬉しくなんかないんだからっ。
「も、もうっ! お、おこ、怒るよおおっ!?」
「ええ〜」
気の抜けた返事に思わず顔が緩んだ。
*****
「終わったぁっ!」
「そうだね。お疲れ様」
合計30分くらいの丁寧な掃除を終え、思わず叫んでしまった。
普段しない動きに腰が痛くなり軽く叩きながら尋ねた。
「……えっと、裕く……鏡くんは帰らないの?」
「……うん、すぐにはね。いつも少し本読んでる」
「……そうなんだ」
私は……どうしようかな。
今、この教室には二人しかいない。
この他人の目の無い空間が、彼がいる空間にもう少しいたいと思い私も椅子に座った。
裕くんは私のことなんか気にもかけずブックマークをはずし、本を読み始めてしまった。
そんな姿を私はじっと見る。
どのくらい時間が経っただろうか。
視線に気づき裕くんが顔をあげ私を見た。
「……榎田さん? どうしたの」
「あ、あのさ鏡くん……鏡くんは……大丈夫なの?」
「なにが?」
「え、えっと……その……鏡くんって……なんていうか」
みんなから……見られなくて平気なのかな。
いるのにいないみたいなこの状況。
「ネクラ?」
「あっ、ち、違うよう……なんていうか、浮いているっていうか……」
「……別にハブられてるわけじゃないよ? 確かにボッチにみえるかもしれないけど、それは本が好きだと仕方ないことだろうし」
「……そうなんだ」
いいって言うなら……いいのかな。
みんなにも裕くんの良さ知ってもらいたいけどなぁ。
あっ、でもそうしたらみんな裕くんのこと好きになっちゃう。
それは困るっ!
「あ、あのね……鏡くん」
「うん?」
「か、鏡くんって……彼女いるの?」
自分の口から言ったとは思えないくらいすんなりと、でも意識なんてしてなくて溢れたような言葉だった。
聞きたいけど聞くつもりなんてなかったそんな言葉。
私の頬が紅く染まる。
「……」
「あ、あー……うん」
「いるのっ!? 名前は?」
「え? ……あー、うんと、高嶺……さん」
「高嶺……? そんな子いたっけ? 何組?」
やっぱりいるんだ……。
でも高嶺さんなんて聞いたことないからこのクラスじゃないな……。
どんな子なんだろう。
きっと裕くんに似合う可愛い女の子……。
想像していたことながらも視界がぼやけ始める。
泣いちゃ……だめ。
「……ごめん、それ恋愛ゲームの話。本当はいないよ」
「え? ……あ、なーんだ。ハハハ……」
ゲームか……。
よかったと胸を撫で下ろす。
「じゃ、じゃあ今は鏡くん彼女いないんだよね」
「……そういうことストレートに言われるのはキツいかな」
「あっ、ご、ごめん。そういうつもりじゃなかったんだけど……」
ただ、確認したかっただけなんだ。
いつか君の隣に私が寄り添うことができる可能性はあるのかと。
気持ち……気づかれてないよね。
だって裕くんを見てればわかる。
裕くんには好きな人がいる…。
今だってきっと私と話ながらその人のことを考えてる……。
******
本を読み終わった裕くんが顔をあげた。
どこか違う世界にいる気がする。
「読み終わったの?」
「なっ!? え、榎田さん! まだ帰ってなかったの!?」
「うん」
やっぱり私なんか見えてないよね。
裕くんは驚きバンッと本を床に落とした。
「「あっ」」
拾おうとした裕くんの手と私の手が微かに触れた。
条件反射か裕くんは素早く手を戻した。
触れた部分が……熱い。
裕くんは黙ったままだった。
この嬉しい気持ちを抑えながら、私は本を拾い渡した。
ありがとうと言って受け取った裕くんは下を向いた。
そしてぽつりと言った。
「……凄いね……委員の仕事なのに僕をここまで待つなんて」
「えっ!? い、委員? 違うよう!」
「え? 何が?」
「あ、いや……な、なんでもない」
その言葉は驚きだった。
裕くんが私を委員だから待っていたと思っていたなんて。
でもそれは故意に言ったのではないのかすぐに聞き返されてしまった。
******
「ね、ねえ! 鏡くん、私と帰る方向一緒だよね! 一緒に帰ろう?」
「あ、うん」
やった。一緒に帰れる。
私の家は逆だけど大丈夫だよね。
校舎を出て帰り道。
「……鏡くん」
「うん?」
「鏡くんって……好きな人いるの?」
あーまたやっちゃった。
いるに決まってるのに。
難しい顔してる……聞いきゃいけなかったよね。
「まあいるかな」
「なぁっ!?」
予想してたことだったけど、やっぱりショックだった。
「ど、どうしたのっ!? 変な声出して!」
「えっ! へ、変じゃないよ!? わ、わた、私、変じゃないよね!」
動揺を隠せず、言葉も詰まってしまう。
挙句の果てに何を言ってるのかわからない。
あたふたと胸ポケットを探り、ハンカチを探した。
ハンカチを持ってるだけで心が落ち着く。
だが、ハンカチが胸ポケットに入ってるわけもなくスカートのポケットから見つけることができた。
ピンク色の水玉のハンカチぎゅっと握った。
「落としたよ」
「えっ? あ、ありがとう……」
胸ポケットを探ったときに生徒手帳を落としてしまったらしい。
受け取るときに、微かに手が触れ合う。
2回目……
「ひあああああああっ!!?」
「ど、どうしたの!?」
「て、手が触れたぁ……」
恥ずかしい……きっと汗ばんでいただろう。
好きな人の隣を歩くなんて緊張するよぉ……。
「……ごめんね。今度から手袋はめることにするよ」
「え……。ああああっ!? そ、そんなんじゃないよ!? わ、私、びっくりしちゃっただけで……」
「ううん、仕方ないよ」
「そ、そんなんじゃないんだよぉ……」
少し気分を落としたような表情の裕くん。
誤解させてしまって私も半泣き状態になる。
「……そ、そうだ。待たせてしまったお詫びにジュース奢るよ」
気遣ってくれたのか裕くんはそう言って自販機に向かって行った。
少し……落ち着かなきゃ。
って、そうじゃない。
ジュースなんてもらえないよ!
私が好きで待ってたのに。
「そ、そんなのもらえないって」
「……だよね。僕みたいなプランクトンが榎田さんに飲み物あげるなんて衛生的に悪いもんね」
「も、貰うよ! っていうか是非欲しいかな!?」
そういうことじゃないってば!
裕くん自分を過小評価しすぎだってば!
******
翌日、私は夜から気になっていたことを聞くため裕くんの元へと向かった。
目の前に行き、重い口を開いた。
「……え、えっと鏡くんて好きなタイプどんなのかな」
「急にどうして?」
「そ、そのさ……な、なんでもいいじゃん!?」
「そうだなぁ……まず、ポニーテールかな。あとは優しくて背が高くて……うん、榎田さんみたいな人じゃないかな」
「い、いやあああああああっ!?」
私みたいな!?
真顔で言うなんてお世辞うまいな…。
「ご、ごめん……僕みたいな汚れた口が過ぎたことを」
「ち、違うよう!? ……わ、私こそごめんね」
「ううん、気を使うことないよ」
「……」
「……」
うぅ……また沈黙だよぉ……。
裕くんのタイプ……私みたいのなら少しはチャンスあるのかな?
でも自惚れたらダメだよね……。
「榎田さんはどんな人が好きなの?」
「そ、そう! ……えっと……その……」
そんな……聞き返されるなんて思ってもみなかった。
裕くんだなんて言えないし……どう答えよう……。
「……鏡くん、みたいな人かな」
みたいなって言うより裕くんなんだけど。
言う勇気はないよぉ。
「そっか……」
「……え、えっと。うん」
「榎田さんってダメ男好きなんだ?」
「そ、そんな卑下しないでよ!」
まったくこの子は!
裕くんの優しさも強さ知ってるもん!
「ご、ごめんね。榎田さんのこと馬鹿にしたわけじゃなくて……」
「うーっ! もういいっ!」
これ以上喋ってると好きだって言ってしまいそう。
そう思い、私は裕くんから離れ友達の元へ行く。
「……あいつ榎田さんに何言ったんだ?」
「ひでぇなあいつ、あの榎田さんをイライラさせるなんて」
「うるさいっ!!」
「「す、すいません!」」
気持ちなんか知らないのにうるさいのよ!
黙ってなさい!
******
昼休み
私は裕くんとご飯を食べようと思い、朝のことを謝った。
普段一緒に食べていた友達に誘われたが断る。
迫力に押されてかさらっと引いてくれた。
「えっと……」
「鏡くん! お弁当食べよう! 私の分けるから!」
「ええええっ!? も、もらえないよ!?」
「ほら! 口開けて! たべて! 食べなさい!」
「あがががが」
断る裕くんに強引に食べさせる。
「ほら、口閉じて! 噛んで! 味わって! 呑み込んで! 感想!」
「勿体無いです」
勿体無いと言う言葉に勢いで胸ぐらをつかんでしまった。
きっとひどい顔だろう。
「か〜が〜み〜く〜ん〜!!!!」
「だってその僕なんかが榎田さんのお弁当という高貴なものを食べるなんて割りに合わないですし本当に申し訳ない気持ちしか湧かなくて味も意識できなくてというかなんというか本当ごめんなさい僕みたいな虫けらが榎田さんみたいなマドンナと話してごめんなさい」
「もう……なんでそう卑下するのよぉ……」
裕くんの……ばか……。
それが声に出ることはなく視界が暗くなり、重力に逆らえなくなる。
「え、榎田さん大丈夫!?」
裕くんの声……。
「だ、誰か保健室に連れて行かないと……」
「榎田さん大丈夫!?」
「今、行くからね」
******
目が覚めたのは誰もいない保健室だった。
運良く、先生もいなかったのでそのまま教室に向かう。
きっと……いる。
「……おー、今日もよく描けたかな」
階段を駆け上がり教室に入ろうとしたときそんな声が聞こえた。
少し待とうかとも思ったが、そんなことできず――
「か、鏡くん……」
「うわっ!? ……え、榎田さん……」
予想通り、目を大きく広げ私を見る裕くんがいる。
でも、私にも予想外のことがあった。
裕くんの描いた女の子が私と似ていること……。
「前描いたのも鏡くんの絵だよね」
「ご、ごめん。すぐ消すよ」
「待って消さないで!?」
「え……あ……」
自惚れでもいい。
この女の子を私だと思おう。
ずっと、残しておきたい。
そう思い、私の机の横にかかっているかばんから携帯を取り出し黒板に向ける。
静かな教室にカシャッという機械音が響く。
「……鏡くん、なんで言わなかったの?」
目を逸らす裕くんに私は言葉を止めらない。
止められない。
「……鏡くんがこのこと言えば、あっという間に友達できたのに」
「……」
何も言わない裕くんが何を考えているかはわからない。
でも、わかることだってある。
「……鏡くん、本当は優しいのに。この前も迷子の女の子助けてたでしょ?」
「うぇっ!? 見られてたの?」
「……うん、ごめんね」
つけてたなんて……最低。
苦笑しながらも涙を堪えるのに必死だった。
「私ね、最初鏡くんのことが心配だったの。……クラスからも浮いた存在で、友達を作らずに一人で本読んでて……だから、鏡くんのこと観察してたの。どうしたら溶け込めるようになるかなって」
「……」
「余計なお世話かもしれないけど、私は純粋に心配だったの。 それでその日、尾行させてもらって鏡くんが絵を描いてるのを見たの。私びっくりしちゃった。私の友達は皆得意なこと好きなことの話をするんだけど、鏡くんの才能はそんなレベルじゃないもん」
「そんなこと……」
否定なんてさせない。
卑下しすぎだから。
「そんなことあるよ。それにその日の帰り道も女の子助けてて……優しくて、物静かで、本当は人恋しいんじゃないかなって」
「……それは」
「私は、鏡くんのことが好きだよ。先に行っておくけど、クラス委員としてのライクじゃなくてラブだからね」
あぁー!
言っちゃったじゃん何言ってるんだろ……私。
「……は、ははは。冗談はやめてよ。誰が僕みたいな奴と……ましてや学園のマドンナの榎田さんがだなんて」
「……鏡くん……裕くんはどうしてそんなに自分を下に見るの?」
「それは……僕は榎田さんみたいに誰からも好かれるような人間じゃないから」
「ダメだよ!」
堪えていた涙が流れ、私は裕くんを押し倒した。
足に床の冷たさが滲む。
でも、冷たさなんて私が裕くんを想う気持ちに比べたらどうってことはない。
「うわっ!? え、榎田さんっ!?」
「なんで! なんで気づかないの!? 私は裕くんが好きなのに! どうしてこの気持ちを……なんで!」
一粒、また一粒と裕くんの制服に流れ落ちる涙。
「……なんでそんなに自分を卑下するの?」
「……」
「……どうして、そんなに優しいのよ……」
優しさをもっと出してよ。
もっと私を見てよ。
「うわぁぁぁぁん……」
「僕は……僕は……」
どうしようもなく、泣き続けた私が泣き終わった頃には夕日が沈み月が外を照らしていた。
裕くんはその長い時間、私を待っていてくれたのだ。
泣き終わったのを確認した裕くんは私のかばんを持って教室を出た。
「送る」
「大丈夫だよ……ごめんね、鏡くん。長い間待たせちゃって」
「…………」
「……えっと、今日のことは忘れて? 私も鏡くんのこと、もう気にしないことにするから……出来るか分からないけどね。ハハハ……」
ダメだよ。
好きなんだ。
裕くんに迷惑なんてかけられない。
裕くんからかばんを奪い取り家の方向に歩き出す。
でも、その次の一歩が出なかった。
それは裕くんが……私の腕を掴んでいたから。
「!?……鏡……くん?」
「……ごめん、ちょっと寄り道したいところがあるんだ」
******
私は裕くんに連れられ学校のそばのマンションに来た。
「? ここ、鏡くんの家じゃないよね」
「うん、いいから。屋上だよ」
裕くんはそう言いながらエレベーターで屋上まで行く。
…………
……
「ほらここだよ」
「……!?」
そこから見えるのは私たちの住む町の夜景だった。
家や街灯が自分を象徴する。
その先には海もあり、船の明かりすらも反射している。
「一応覚えていてよかったよ。花火とか妄想とかに便利だからね」
「……綺麗」
とても……綺麗。
「……榎田さん!」
「……?」
「こういうのは男の方から言いたいものなんだよ……。……僕なんかでいいなら……付き合ってください」
「っ!?」
え……。
冗談かな?
可哀想になったからかな?
色んな気持ちが交錯しながらも私は意外と冷静だと思った。
だって、言葉をすぐに見つけられたから。
「こちらこそお願いします」
断る理由なんてない。
今日一番の笑顔を浮かべる。
「……それから、また自分を卑下しないでよね」
「あっ……ごめん」
謝る裕くんすらも可愛いと思い私はクスリと笑った。
こんな綺麗な場所だし……。
俯き、もじもじしながら裕くんに……
「ごめんの代わりにさ……ほら、こんなロマンチックな場所だし……」
「……?」
「……んもう! 鈍ちん!!」
夜景をバックに私は裕くんの頬にキスをした。
真っ赤に染まる裕くんに伝えよう。
愛しい彼の名前を呼んで――
「裕くん、大好き」