セルゲイ短編
千字エッセイ 閃光
2000年代に韓流歌手のBoAが日本で売れましたが、僕は平成が終わろうとしている今でも彼女の曲を聴いてます。今でもというと終わった人みたいで失礼ですけど、最近日本で見かけないなと思ったらどうもアメリカで活動していたようで、日本のCMに出ていたのも十年以上前なので、周りに名前を聞いても「誰?」って返ってきたりします。
なので簡単にBoAのことを説明します。彼女は12歳の時に韓国屈指のレコード会社にスカウトされて、二年間、ダンスと外国語をみっちり仕込まれます。そして2000年に韓国デビュー。その一年後には日本進出を果たしていて、破竹の勢いで売れていきます。
昔、車で出かけると「VALENTI」とか「No.1」がラジオからよく流れてました。かくいう僕も、「VALENTI」みたいな有名曲から入ったクチなのですが、いまだに聴くのは「B.I.O」です。これはCMとのタイアップソングでもないし、アニメのオープニングやアルバムの表題歌でもないのですが、僕はこの曲が妙に好きで一日一回は聴いています。
これを発表した当時、BoAは十七歳。若さゆえの前のめりというか、太く短くな精神が曲に表れています。歌手活動全振りの青春を送って、貪欲に外国まで出てきた彼女だからこそ、曲からパワーというか一種の狂気みたいなものが伝わってきます。
話はちょっと変わりますが、美味いラーメン屋の店長がおおよそ無愛想なのは美味いラーメンを作ることばっかり考えてるからだと勝手に思っています。
ラーメン屋の店長だろうとアイドルの追っかけだろうと、歌手だろうと作家だろうと、人生を捨てるレベルで何かに集中している人は視野が狭くなるのでどうしようもないと思うんですけど、一方でそういうところが魅力的だったりします。
とあるマンガ家が掲載誌の巻末コメントに、「三十代もあとわずか。マンガ以外何もないイビツな人生だが、もうとりかえしがつかないのでこのままGO!」とおっしゃられてましたが、こういう閃光みたいな人生ってすごくかっこいいと思います。