オッパイ忍者
ギュラゴ鎮圧作戦の前日、俺はゲズ将軍から許可をもらって地下牢へと入った。
背後には見張りのA級戦闘員が2名いる。
「ひさしぶりだな、リーマンマスク」
「おまえは……あの時の……」
S級に昇格した俺は、そろそろ本気でハイランダー・レオを倒すための策を考えたかった。やつは強い上に、最近は出動を自粛しているせいか情報が少ない。
俺はひとまずリーマンマスクから可能な限りの情報を聞き出すことにした。こいつは十年以上戦っているベテランヒーロー。協会の実態やレオについても詳しそうだ。
ミストライダー、マジカル・ユーファ、グリズリー・ティーガは怪人へと改造する為のラボへ連れて行かれ、もう地下牢にはいなかった。
「先日、S級戦闘員に昇格してリッパーって名前になった」
「どうやら、相手が悪かったようだな……引退を考えていた矢先、最悪な敵にぶつかっちまったわけだ」
「俺より強いやつだっているかもしれないぜ。世界は広いじゃないか」
「おまえは……レオやドーラと同じだろう?」
リーマンマスクは怯えるような目で俺を見ていた。
「同じ? なぜそう思う」
「ドーラがロシア出身なのは知ってるか?」
「ああ……」
「ドーラは七歳の時に、ロシアの山中でガイアメタルに触れてヒーローに覚醒したらしい。レオはドーラの元で修業し、二十歳の時にロシアへと渡ってガイアメタルの洗礼を受けた」
「ガイアメタル?」
「俺にはわかる……おまえのパワーの源はドーラやレオと同じだ。いったいどこでガイアメタルに触れた?」
「知らないな。ガイアメタルなんて言葉を聞いたのも初めてだ。しかしまあ、ちょうどレオのことを聞きたかったんだ。ありがとよ、リーマンマスク」
「…………」
「レオのパワーはそのガイアメタルで覚醒して得たものなんだな。それってどういうものなんだ?」
「詳しい事はわからん。不定形な石のような物体らしいが」
「へえ……」
やはりこいつはヒーロー歴が長いだけに詳しい。話してみて正解だった。
未だ地下牢に閉じ込められているのも、クズラーにとって有力な情報を引き出す為だろう。リーマンマスクの身体をよく見ると、ところどころ拷問を受けたような傷があった。
「その調子でどんどん話してくれると助かるな。戦うのは得意だが、痛めつけるのは苦手なんでね」
「俺はやつと親しかったわけじゃないから深くは知らん。協会でもドーラとレオは秘密が多い。知っているのはガイアメタルによってヒーローに覚醒したこと、超常的な気功術を使うぐらいだ」
「気功術ね……」
「レオの必殺技は巨大な気功の光を放つメガレオ波だ。テレビで見たことがあるだろう」
「見たさ……テレビじゃなく、実物でな」
「……?」
「ドーラも同じ技を使うのか?」
「ドーラの必殺技は更に強力だ。気功を圧縮した弾丸を発射するドーラ砲……自衛隊の戦車でも止められなかった大怪獣ギュラゴを、ドーラ砲で退けたことがある」
「すごいな……まあドーラは相手にするつもりはない。俺の目的はレオだけだ」
「レオを倒すのが目的なのか?」
「おまえには関係ない。レオは今どうしている?」
「さあな……やつは戦闘で一般人に被害を出し過ぎた。特に三年前の惨劇はヒーローの評判を著しく下げた。今もヒーロー協会から出動自粛を要請されている筈だ」
「…………」
「しかし六人のテンヒーローズを失った今、協会はレオを動かすしかない」
だろうな……となると俺がレオと戦う日は近そうだ。
その前にギュラゴを何とかしなきゃならんが。
「他にレオのことを詳しそうなやつはいるか? といってもミストライダーとユーファとティーガは、もう地下牢にはいないけどな」
「ミストをどうするつもりだ?」
「俺が答える必要はない。質問に答えるのはおまえだ」
「ぐっ……」
「…………」
「ツムカリは情報収集も仕事のうちだ。何か知ってるかもな」
「わかった……。じゃあな、リーマンマスク、生きていたらまた会おう」
リーマンマスクの牢から離れてツムカリを探す。
途中で、先日倒したバクハツダーの五人を見つけたが、特に用はないのでスルーした。あいつらは二流ヒーローで元はタレントだ、ヒーロー協会の内部にもあまり詳しくないだろう。
ほどなくして、妙に露出の高い忍者装束、色っぽい網タイツをはいた女がいる牢を見つけた。近付くなり俺をキッと睨んでくる。
「くっ……殺せ……」
「おまえがツムカリだな」
「私は、悪の組織には屈しないわ!」
いきなり敵意むき出しで俺は呆れかえってしまう。
もう少し駆け引きってもんがあるだろうに。
「また触手責めにされたいのか……」
「あ、あの時は油断したのよ! 別に気持ち良くなど……ッ!」
「気持ち良かったのかよ」
確かにテレビで見た時、イカの触手で感じてイキまくってるようだった。
「うぅ、うるさいッ! 忍者を甘く見ないでッ! このくらいの牢獄、すぐに脱出してやるんだからッ!」
脱出できるならとっくにしてるだろ……どう見ても強がりだ。
近くで見るとその巨乳は圧倒的な存在感だった。レイバルン将軍よりも大きい。今にも上着から飛び出してしまいそうなほど張りのある膨らみ。
顔つきは凛として美しく、腰回りも引きしまっていて色っぽい。
しかし扱いにくそうな女だ、あまり俺の好みじゃないな……。
「なに、ジロジロ見てるのよ……」
「どこを見ようが俺の勝手だ。おとなしく戦闘員の性処理でも買って出ればいいんじゃねえの。その方が生き残れるだろう」
「外道どもめ……!」
「悪の組織だからな……。さて、巨乳忍者、ひどい目にあいたくなかったら俺の質問に答えろ。ハイランダー・レオは今、どこで何をしている?」
「レオは……表向きはヒーロー活動を自粛してるけど、世界中を飛び回っていたみたいよ」
「どういうことだ?」
「彼とドーラがヒーローに覚醒する要因となったガイアメタル……それは世界中に散らばっているの。何故、いつから、それらが世界に存在するのか、一切が謎……」
「…………」
「わかっているのは、ガイアメタルの洗礼を受けた者は多いなる力を得る、善人も悪人も関係なく……。レオは邪悪な者がガイアメタルに近付かないように、手を打っていたんじゃないかって、私は見てるけど」
「それで……?」
「続きが聞きたい?」
ツムカリは胸を揺らして色っぽく腰をくねらせ、片目を瞬かせた。
「内緒の情報、いろいろ知ってるわよ……教えてあげてもいいけどぉ……誰かに聞かれたらまずいでしょ? こっそり、ね……」
「ん……?」
「だから、もっと近くにきて……他にもイイコト、してあげるからッ……うふふっ♪」
自慢の爆乳をぷるんぷるん揺らし、
妖しく微笑みかける女忍者。
なに考えてんだこいつ……誘ってるのか……?
「ねえ、強くてかっこいい戦闘員さん……はやくぅ♪」
クノイチの房中術でも使って俺を落とす気なのか。
傍ではA級戦闘員が見張っているし、
監視カメラもあちこちに配置してあるってのに。
めんどくせえから、ちょっと脅してやろう――。
「おい、オッパイ忍者……状況を理解してんのか?」
俺は牢の鍵を開けると中へと入った。
するとツムカリは即座に飛び上がり、俺の横を通り抜ける。
「ひっかかったわね! 馬鹿な男ッ!」
風のように素早く牢獄から脱け出し、コンクリの床を駆けていく。
ツムカリの姿はあっという間に見えなくなった。
やられた……あんな一瞬の隙を突いて走り抜けるとは。
さすが忍者、足は速いようだ。
扉を開けたのは迂闊過ぎたと、俺は反省する。
しかしこの程度で脱走できるほど、甘い作りの地下牢では無い。
地上への出口までには、何重もの仕掛けが施されている。
戦闘員は冷静に、無線で連絡をとっていた。
――――
「いやぁぁ……やめてぇぇぇ~~ッ!!」
数分後――ツムカリは待ち伏せていたイカ怪人の罠にハマり、
むちむちの肉体を隅々まで触手でいじくり回された。
「んくうぅぅぅッ! は、離してっ、らめぇぇぇ……ッ」
「アホか……そう簡単に出られるわけないだろ」
「あひぃぃっ! きも、ひ、いッ……きゃううぅぅんッ♪♪」
「それにしても、ほんとに触手に弱いな」
「おっほおおぉぉぉぉ~~んっ!♪♪」
あっさり堕ちたツムカリは再び牢獄へと連れ戻されていった。
もっと情報を聞き出したかったが、
失神寸前で話せる状態ではなかったのであきらめた……。