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戦闘員303

 いつもとは違う朝。悪の秘密組織のある孤島の一室で、俺は目を覚ました。天井にあるスピーカーからサイレンが鳴る中、戦闘員たちが続々と起床する。

 B級戦闘員までは同じ部屋でザコ寝らしい。俺は初の戦闘でA級に昇格したが、まだ部屋が用意されてないとのこと。1週間ほどB級戦闘員たちと同じ部屋で寝泊りすることになった。

 B級でもA級でも構わないけど、やっぱ個室は欲しいな……。


 早朝のトレーニングは軽いジョギングだった。

 それが終わると朝食。

 規則正しい生活は嫌いじゃないが、かったるい気もする。


「おまえが弥栄泰平か?」

 食堂へ行くと、胸元の大きく開いた赤いレオタード、下の方もなかなかきわどいハイレグ。扇情的な衣服を着た美女が俺に声をかけてきた。二十台半ばくらいに見える。手に鞭を持っていて見た目はとっても怖そう。大きな胸の膨らみまた魅惑的でとっても目立つ。


「あ~、あなた様は確か……面接の時も見ました。レーボインボイン将軍」

「レイバルンだ……上司の名前は覚えておけ」


 見目麗しい美女の眉間にしわが寄る。思い切り失礼な呼び方をしたのに鞭が飛んでこないあたり、この方も意外とお優しいのかもしれない。そしてやっぱりおっぱい大きい。


「失礼しました。レイッパイプルンプルン将軍」

「本当にしばくぞ」

「一発ぐらいならご褒美であります」

「希望ならさっさとケツを出せ」


 言いながらなんだか嫌そうな顔をする美女将軍。


「そういう趣味の戦闘員もいるからな……最初は気持ち悪かったがもう慣れた」


 見た目は怖いがSな性格というわけではないようだ。


「いやぁ、将軍があまりにもお美しいもので……急に声をかけられるとやはり男としては緊張してしまうであります」

「調子のいいやつだ……よかろう。おまえの活躍は聞いた。霧になって逃げるミストライダーを挑発して上手く隙を突いたそうだな」

「まあ咄嗟の思い付きですよ」

「復讐の動機も共感できるところがある。私の作戦に参加する時は尽力しろ、可愛がってやる」

「ははっ、ありがたき幸せぇであります。それにしても本当に扇情的なコスチュームですねぇ」

「戦意高揚の為らしい。最初は恥ずかしかったがもう慣れた」

「誰の趣味で?」

「ゲズ将軍だ……」

「意外とエロいんですねぇ……」


 女将軍は胸元から一枚のカードを取り出すと俺に渡す。

 『303』と番号が書いてある。


「そのIDカードは組織内の施設に入る際のキーになっている。A級戦闘員ならすべてのトレーニングルームと一部の怪人ブロックに入れる。基本的に戦闘員は番号で呼ぶ」

「これが俺のナンバーですね」

「戦闘員303(サンマルサン)、それがおまえのクズラーでのコードネームだ」

「はっ、覚えやすくていい数字であります」


 食後の休憩を挟んだ後はまた他の戦闘員たちと一緒にトレーニング。腕立てやら腹筋やら匍匐やらベンチプレスやらルームランナーやら。施設にはいろいろな訓練器具が用意されていた。しかし意外と訓練は自由らしく、1時間ほど教官の指導に従った後は、好き勝手に器具を使って鍛錬に励む。緩いフィットネスクラブ状態だ。

 本当に悪の組織なのかってぐらい緩いな……。


「戦闘員303(サンマルサン)、ゲズ将軍がお呼びだ」


 バーベルを持ち上げている最中に、教官から声をかけられた。



――――



「次の作戦は、港でマグロ漁船を襲う」


 呼ばれて司令室に行くと、A級の戦闘員と教官たちが集まっていた。

 ゲズ将軍がホワイトボードに地図を書きながら作戦を説明する。


「なぜマグロを……?」

「次の怪人を作るのに、良質の魚の脂が大量に必要なのだ」


 よくわからんが作戦ならしょうがない。

 ヒーローへの復讐が果たせればそれでいい。


「指揮はレイバルンがとる。怪人はザリガニ男を使う」


 海なのにザリガニかよ。


「出てくるヒーローは……マジカル・ユーファだろうな。あやつは大の寿司好きらしい。マグロが大量に奪われるとなれば黙っていないだろう」

「マジカル・ユーファ……あの、それって、噂の魔法少女?」

「表向きはそうなってるな」

「表向き、と言いますと?」

「調査によると、変身前のユーファは男子中学生……いわゆる男の娘だ」

「がーんだな、夢をくじかれた」


 俺がそう言うと、何人かの戦闘員が同意するように頷いた。

 ひとりは小さな声で「アリだ」と呟いた。


「みな知っていると思うが、マジカル・ユーファはグリズリー・ティーガと行動を共にしている事が多い。情報部によるとティーガは現在、故郷の山へ帰省中だ……今回は現れないだろう」


 ティーガとは灰色熊のヒーローだ。何かヤバイ薬でも飲んだのか知能が人間並みかそれ以上に高く、日本語だけでなく多数の国の言語に通じている超マルチリンガルな熊。ユーファと仲が良いらしく、一緒に戦っている映像をテレビで何度も見た。


「ユーファは自在に空を飛べる上にマージナルバリアを持ってるのが厄介だが、戦力的にはリーマンマスクやミストライダーほどの脅威ではない。無理にユーファを相手にするな。マグロさえ手に入ればそれで作戦は成功だ……以上、諸君らの健闘に期待する……」

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