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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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謁見の間にて……④


 ヒューとヴァンダインは間合いを取って謁見の間の中央に立った。まるで本当の闘技大会のようだ。

 あの二人、これが帝国の運命を決める戦いの一端であること忘れてないよね。

 これだから戦闘狂は……。


 えっ、人のことを言えないって?

 そ、そんなこと無いから……エクシィと戦えて嬉しいなんて、ほんのちょっぴりしか思ってないんだからね。


 それにしても、とオレは向かい合った二人を見つめる。


 共に重鎧を着込んだ卓越した剣士。

 その存在感とこれから始まるであろう熱戦に不謹慎だが、ワクワクしてしまう。

 言わば、現実の武闘大会ではあり得ない誰もが夢見た好カードだ。曲がりなりにも武で頂点を志す者としては期待するのは当然だろう。


「ヴァンダイン殿、貴方からもその鎧からも禍々しい邪気を感じます。おそらく魔的な力が宿っていそうですね。なので、あらかじめ宣言しておきます」


 ヒューは少し不本意そうな表情で続ける。


「私は、対人戦においては自分の技量だけで、ここまで戦ってきました。それが剣士としての私の矜持と考えていますので……ただ、魔獣や魔人など人外の相手に対しては自分の我が儘を捨て、持てる力の全て出し切って戦うと決めています。ですので、貴方とは全力で戦いたいと思っています」


「ふむ、自分の技量以外の力とな?」


 ヴァンダインが興味深そうに尋ねる。


「はい、師から譲り受けた白銀の騎士の象徴たるこの鎧『無比の鎧』の真の力を御覧に入れましょう」


「ナルホド、あれが『無比の鎧』デシタカ」


 隣にいるトルペンが食い入るようにヒューの鎧を見つめる。


「知ってるの、トルペン?」


「もちろんデス。デュラント四世……リデルの父上が盟友のユーリスに贈ったという逸話は、とても有名ですからネ。『無比の騎士』ユーリスの由来ともなっていマス。ただ、本人はその二つ名を嫌って『無比の鎧』を身に着けなかったそうデスガ」


「師から譲り受けたって言ってるから、本物に間違いないか……それって凄いものなの?」


「はい、Ⅱ類神具ですカラネ」


「え?! Ⅱ類神具?」


 神具とはアネストリア大陸に現存する魔法具アーティファクトの総称だ。

 多くの神具は現在の技術で再現不能で、まさに神が残した遺物と考えられている。そのほとんどが、先祖からの継承か迷宮などでの発掘により手にすると言う。


 ランクは能力や希少性からⅠ類からⅤ類までに分けられる。

 特に最高位のⅠ類神具は皇帝継承神具と呼ばれ、帝位継承者しか使えないレアものだ。

 有名なのは誰でも知っている『皇帝御璽』だろう。


 Ⅱ類以下は公的に管理され、次のように決められて各家や役職に世襲されている。

  

 Ⅱ類 皇族~公爵・大神殿・上将軍・聖神官・尚書令

 Ⅲ類 侯爵~伯爵・拠点神殿・将軍・大神官・内政官

 Ⅳ類 子爵~男爵・各神殿

 Ⅴ類 準男爵~名誉市民


 もちろん、そういう名誉ある神具以外に金銭で取引されている神具もあり、オレが思っている以上に市場に出回っているらしい。

 とにかく迷宮で神具を見つければ一財産になると傭兵時代のオレも聞いたことがあったほどだ。


 ちなみに、トルペンが使った『縮元回廊』はⅡ類神具、拠点神殿にあった『神位具現鏡』はⅢ類神具の区分となる。


「Ⅱ類神具の鎧……」


「ヒューさんも本気モードのようデスネ。もしかして、意外と早く決着するカモ」


 本当にそうだろうか?

 ヒューが矜持を捨ててまで神具を使うってことは人間扱いしないってことに他ならない。


 戦いの行く末を不安をもって見守る。




「なるほど、申し出は理解した。我もすでに人の身にあらず。魔の物と言って差し支えあるまい。存分にその力とやら、駆使して戦うがよかろう」


「ご了承、痛み入ります。されば、尋常に……」


「応、参られよ」


 ヒューは、いつものように右手にブロードソード、左手に盾を構える。対するヴァンダインは両手剣を正眼に構えた。


 互いに重装甲なので剣での斬撃はあまり有効ではない。打突の方が効果が高いだろう。実際、戦場でもウォーハンマーやメイスと言った打突武器の方が重鎧に対して向いている。


 オーリエのお父さんであるグビル団長の愛用しているハルバードはまさにそのような武器だ。斧槍とも称され、槍の穂先に斧頭とその反対側に突起ピックが取り付けられている。このピックや鉤爪で引っかけて重鎧を転倒させ、動けなくなったところを止めを刺すという戦法をグビル団長は得意としていたのだ。

 扱うのは難しい武器だが、グビル団長はその使い手として名を馳せている。


 けど、ヒューと戦ったら、その戦法が通用しないことをオレは知っていた。何故なら、ヒューの鎧は軽くて硬いのだ。

 ヒューから聞いた話では、硬いことで知られているステュクス銀(魔鉱石の一種)より硬度があり、錆びない素材で出来ているらしい。それなのに、軽くて動きやすい仕様で長時間装備していても苦にならないそうだ。更に復元機能も搭載されており、ルマでイクスに凹まされた際も、わずか一晩で元通りになったという謎性能だ。さすがはⅡ類神具。

 つまり、ヒューは重装甲でも軽戦士並みの動きが出来るということに他ならない。


 う~ん、これで自分だけの技量だけで戦ってきたと言うのはちょっと厳しい気もするけど、もっとチートなオレが言える筋合いではない。

 まあ、ヒューの話では使いこなすにも技量と精神力がいるらしく、初めて装着した者はピクリとも動けないそうだ。何でも鎧との調和率がなんだと訳の分からないこと言ってたけど。


「では、参ります。※※※※……」


 突進するヒューがオレの知らない言葉で何か唱えると鎧全体が青白く輝き始める。


 そのとたん、ヒューのスピードがクンッと速くなった。

 まるで地上を跳ぶ流星のようだ。


 そのままの速度でヴァンダインに襲い掛かる。

 

 それに対しヴァンダインはゆっくりとした動作で両手剣を最上段に持ち上げた。

 ……と、その刹那ヴァンダインの剣は稲妻のような速さで振り下ろされる。


 まさにヒューの動きを読んで振り下ろされた剛剣であったが、寸前にヒューは回避した。


「な、なんだと……」


 オレは我が目を疑った。


 ヴァンダインの振り下ろした剣はヒューがいたであろう位置の床を粉砕していた。しかも、床石を削りながら剣を返し、その隙を突いたヒューの剣を受け止めている。


 ヒューの速度も大概だけど、ヴァンダインの剛力も人間離れにも程がある。

 オレが言うのも何だけど、めちゃくちゃ過ぎるだろ。


 これ、謁見の間が最後まで持たないんじゃないのか?


いよいよ、ヒューVSヴァンダイン戦が始まりました。

両者ともめちゃくちゃです、ホント。

果たして、どちらが勝つのか(>_<)


この後、トルペンとハーマリーナ……。

謁見の間ちゃんの耐久力がw

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― 新着の感想 ―
[良い点] リデル君、自分の実力は自分で身につけてないんで後ろめたかったの巻。チートの自覚があったんですね、だからこそ男に戻るオチが有力視されてる(僕の中だけで)訳です。 [気になる点] >謁見の間ち…
[一言] まだ実力を隠していたとは…… 謁見の間[■■■■■■■■■□]
[気になる点] ムヒの鎧・・・よく出るから、最近。
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