皇宮へ……①
11/12あとがき追記と後半の説明不足を修正しました。
無事にブックライブ様で13話が先行発売しました。その他のサイトでも12話が発売となります。
応援ありがとうございました。
「一応、何とかなったかな」
「はい、本当にお疲れ様でした、リデル様」
ソフィアの労いの言葉に頷きながら、オレはファニラ神殿の神殿長室から撤兵の準備に忙しい各陣営を眼下に眺めていた。
例のアレイラを宰相補に推す件はさておき、ライノニアとの停戦交渉は無事に終了することができた。
それに引き続いて行われたフォルムス帝国とアルセム王国との交渉も難航したが、最終的には何とか纏まった。リシュエット全権大使は、やはり頭の切れる優秀な外交官で手強い存在だった。オレに対しては好意的と思っていたが、交渉となると話は別のようだ。
まあ、そうは言ってもフォルムス帝国はライノニアに助勢するために参戦したわけなので、ライノニアが停戦に応じれば撤兵するのは当然と言えば当然なのだけど。
停戦条件は以下の通りとなった。
〇 イーディス皇帝は退位せず在位のまま。ただ、邪教集団の暗躍を許した責を負い、ライノニアに対する賠償金請求を取りやめ、ライノニア公領も本領安堵する。また、皇宮内の邪教集団は速やかに掃討する。
フォルムス帝国に対しては『メルトリューゼ子爵領』の返還を求め、その代わりに帝国侵入に伴う賠償金は請求しない。アルセム王国に対する賠償金についても同様とする。
また、部下が引き起こしたファニラ神殿事件の責任を認め、各陣営(カイロニア・ライノニア・フォルムス・アルセム・教皇庁)への損害賠償と見舞金を払うこととする。
〇 ライノニア公国は帝国から賠償請求や領土の削減をされない代わりに、自らが参戦を促したフォルムス帝国・アルセム王国の撤兵費用を負担する。
〇 教皇庁はファニラ神殿事件の責任の一部を認め、各陣営(皇帝・カイロニア・ライノニア・フォルムス・アルセム)の見舞金を払うこととする。
勝敗がはっきりしなかった上、ファニラ神殿の悲劇があり、停戦条件としては全員が納得するものではなかったが、一応の決着を見せた。
ただ、『メルトリューゼ子爵領』については、現在フォルムス帝国が実効支配していて、停戦条件通り返還されるか不透明な部分も残っている。
しかし、曲がりなりにも停戦は実現し、混乱を極めた内戦は終結することになった。
これにより、各陣営は本国への撤兵を一斉に開始した。軍を維持するのにもお金がかかるので、一日たりとも無駄には出来なかったのだ。
ただ、ライノニア・カイロニア両公国は軍の大半を本国へと撤兵させる予定だが、一部の精鋭部隊がこの地に残留するようだ。どうやら、皇宮に巣食うゾルダート教団を駆逐するために皇宮へ向かうらしい。言わば当主の仇討ち部隊のようなものだ。
彼らは帝国軍と共に皇宮へ向かい、停戦条件の通り皇帝がゾルダート教団を掃討するかを監視し、自らも殲滅に協力することを目的としていた。
そして、オレを含めたネヴィア聖神官一行もイオステリア教導騎士団の一部を連れて同様の目的で皇宮を目指すことになっていた。
ただ、停戦条件では一応、イーディスはゾルダート教団と手切れすると明言していたが、アイル皇子の件もあるので、オレとしては多少不安に思っている。
一悶着、起こらなければいいのだけど。
◇
「ごめんね、みんな。こんな時間に急に呼び出して」
オレは密かに集まった面々に頭を下げる。
「リデル様、頭をお上げください。私でしたら、いつお呼びいただいて構いませんから」
「私もです、リデル。お気遣いは無用に願います」
「吾輩も同じデスヨ。リデルさんのためなら、何処からでも跳んで来マス」
ファニラ神殿の来賓用の談話室に夜遅く集まってもらったのは、ソフィアとヒュー、そしてトルペンだった。
「して、このように秘密裏に集まったのは何用ですカ?」
トルペンがワクワクを隠さずに尋ねてくる。
他の二人も口には出さないが、同様に興味深そうにオレを見ている。
「あのさ、停戦交渉も無事に終わって、オレの役目も一応終わったと思うんだ」
「そうですね、無事大役を果たせたと思いますよ」
ヒューが肯定するように頷く。
「だからさ、ネヴィア聖神官には悪いと思うんだけど……オレ」
わずかばかり逡巡した後、オレは意を決して切り出した。
「クレイを助けに行こうと思うんだ」
本当は停戦会議の裏で警護が手薄になった皇宮に侵入しようと思っていた。
事前に下見もしていたし、嫌だったけどイクスの力も借りることも我慢した。
あとはクレイの居場所の情報をイクスから入手するだけだったのだ。
けど、ネヴィア聖神官と出会って停戦会議に参加することになり、クレイ救出を先送りすることになってしまった。結果的にその選択は大正解だったと今では言えるけど、ずっと心には引っかかっていたのは否めない。
こうしている内にクレイが酷い目に遭っているんじゃないかとか、取り返しのつかないことになっているんじゃないかと内心焦れていたんだ。
あえて気付かないように振るまっていたけど、本当は気が気ではなかった。
だから、自分の役目を終えた今こそ、クレイを助けに行かなきゃと思っている。
それに、このままネヴィア聖神官達と一緒に皇宮へと向かうのでは遅すぎるのだ。
イーディスが皇宮に着く前にアイル皇子を倒さないと、先日ネヴィア聖神官と話したように帝国の安定は望めないだろう。
あの時は聖神官に止められて保留となっていたけど、今を逃すと千載一遇のチャンスは二度と現れないような気がしてならない。
だから、ネヴィア聖神官には悪いけど、独断専行でクレイ救出に向かうことを決めた。
でも、それはオレ一人の力だけでは、とうてい叶わないこともわかっていた。
「その……無謀な試みだと思うし、危険が伴うのもわかってる。それなのにみんなに協力をお願いするのは、凄く我儘だと思うけど…………でも、助けて欲しい」
オレは上着の裾をぎゅっと握り、みんなの顔が見られず目を伏せた。
「当たり前じゃないですか」
「頼ってくれて嬉しいですね」
「お任せアレ、ですヨ」
三人とも即座に応えてくれる。
「……ごめん、みんな」
オレは卑怯だ。
みんなが協力を惜しまないことはわかっていた。
けど、自分の我儘に巻き込むことが怖かったのだ。
だから、みんなの顔が見られなかった。
「あ……」
不意に頭の上に手の感触を感じた。
「大丈夫ですよ、リデル様」
ソフィアが優しく髪を撫でてくれる。
「みんな貴女が大好きなんです」
思わず顔を上げると三人とも柔らかい笑顔だ。
「……ありがとう」
オレ達はクレイを助けるため皇宮に向かうために動き出した。
新章です。
とうとう皇宮へ向かいます。
あれ? 終わりが近い?
ドキドキ(>_<)
×あと、いろいろあって今月のコミカライズ版13話は出ません。
〇13話発売しました。良かったです(>_<)
これも応援していただいた皆様のおかげです。ありがとうございました!
「COMIC NINO」が「COMICアンブル」というレーベルに変更になりました。
本日から「COMICアンブル編集部」様のツイッターで1話無料で配信されるので、ぜひご覧になっていただき、(出来ればでいいですが)「いいね♡」をお願いします。
でないと……(T_T)
〇たくさんの「いいね」ありがとうございました。(11/12追記)




