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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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血塗られたファニラ神殿……⑥

「エクシィ! 貴様、何ということを……まさか主様を裏切るつもりではないでしょうね? あれほど主様にお世話になっておきながら、その主様との契約を反故にするなど恩知らずも甚だしいことです」


 エクシィに殺されたザークボルド導師の亡骸を見つめ、フェルナトウは唸るように声を上げる。


「恩知らずって言われてもねぇ。あんた達と契約したのは兄貴で、あたしは関係ないし」


「何ですと!?」


「まあ、面白そうだから付き合ってやってたけど、命令されるのはちょっと違うかな」


「し、しかし、イーディスの命令には従っているではありませんか!」


「命令? ……違うよ。イーディスのは『お願い』さ。けど、誰だって親友のお願いなら聞いてあげるのが普通だろ?」


 さも当然のように答えるエクシィにフェルナトウは面食らう。


「イーディス……この娘は、いったい何を言っているのですか?」


「その者の言う通りだ。私と彼女(エクシィ)の間に主従関係はない。彼女は私にとって……」


 イーディスは、そっけない口調で……けれど、ほんの少し温かみのある声で言った。


「……唯一無二の同盟者だ」


「そゆこと」


 エクシィはニコリと笑って見せる。

 屈託のない笑顔で、決してイクスでは見せない表情だった。


「全く理解不能です」


 フェルナトウは、おぞましいものでも見たように(かぶり)を振って、イーディスに向き直った。


「イーディス、もう後戻りはできませんよ。貴女、本気で主様に歯向かうつもりですか?」


「歯向かうも何も最初に手を出したのお前たちの方であろう。それに私はお父様に逆らうつもりなど毛頭ない。私はお父様のために奸臣を取り除こうとしているだけだ」


 フェルナトウの最後通牒に対し、イーディスは極めて冷静な声で言い返した。


「イーディス、あの御方はこのような愚挙を決してお赦しにはならないでしょう。後で後悔しても知りませんよ」


「その心配は無用だ。主の真意に気付かぬお前たちの愚かしい行動をお伝えすれば、必ずやお褒めの言葉を授かろう」


「ふん、世迷言も大概になさい」


「それよりどうなのだ、フェルナトウ。少数精鋭を気取った自信過剰のせいで、一つ手駒を失っただけで形勢が圧倒的に不利になったのではないか?」


 ザークボルド導師を瞬殺し、次の指示をわくわくした目で待つエクシィを横目で見ながらイーディスは意地の悪い質問を投げかける。


「それこそ大きなお世話と言うものです。ロアヌダイン師、ヴァイログ師! 遊びは程々にして目の前の雑魚を早く駆逐なさい」


余裕ぶってはいたが、口調が早口になっていたのは焦りのせいか。


「そして、お前たちの相手はこれで十分です」


 そう言うとフェルナトウは、懐から何か取り出すと床にばら撒いた。





「白い棒?」


 オレの目に、それは燭台に乗せる蝋燭ほどの大きさの棒状の物体に見えた。硬い素材で出来ているのか甲高い金属音を立てて会議場の床に散らばる。

 しかし次の瞬間、その白い棒状のものは瞬く間に長さや形状を変え、オレが見覚えのある姿に変化した。


 それはファニラ神殿に向かうオレたちを霧に乗じて襲ってきた棒人間にそっくりな姿をしていた。大きさにばらつきがあるのは個性なのか、今度は全部で5体ほどいる。


 ただ、戦ったオレの実感としては、彼ら(?)はそれほどの脅威ではない。

 おそらくオレと同等(イクスを基準に考えて)と思われるエクシィの敵ではないだろう。


 けれど、確実に彼女(エクシィ)の足止めをすることはできるし、近衛騎士では到底勝てない相手と言えた。


「エクシィ! 勝手に突っ込んで行かないで、近衛騎士の援護を……」


「ええ~っ、そんなの面倒くさいよ」


「貴女なら造作もないでしょ」


「ちぇっ、しょうがないなぁ……」


 口ではぶつぶつ言いながらもエクシィはイーディスの言い付けを素直に守るようだ。


「あとは……そこの貴女! そちらは自分で何とかなさい」


 エクシィに指示を出したイーディスはオレにも容赦なく指示を飛ばす。


 え~っ、オレはあんたの部下でも親友でもないんだけど……。


 心の中で文句を言うと、いきなりギロリと睨みつけられた。

 バ、バレてらっしゃる?


「り、了解……皇帝様。こっちはオレが何とかするよ」


 手に持ったテリオネシスの剣をオレは握り直す。


 とにかく、フェルナトウの奴をイーディスとエクシィが受け持ってくれている間に、クレオーネ導師とやらをオレが何とか倒さなければならないってことだ。


 そのためには、まず相手を見つけなくちゃいけない。

 フェルナトウが結界を張っているようなので、この場にいるの間違いないはずだ。

 それに死人を操るのにも身近にいる必要がある。


 では、いったいどこに潜んでいるのか?


 オレは死人の相手をしながら、考えを巡らす。

 なるべく一太刀で相手が無力化するように機械的に繰り返し、意識を集中させた。

 実際、そうでもしなければやっていられなかったのだ。

 操られている死人の大半は神殿騎士で、ほとんど面識のあった人間ばかりだった。


 人物を認識してしまったら、きっと剣が振えなくなるに決まっている。

 だから、クレオーネ師の居場所を見つけることだけに意識を向けざるを得なかった。


 とにかく、怪異が始まってから今までの状況を思い返そう。

 確か、フェルナトウの殺戮宣言の直後に最初の犠牲者が出たんだ。

 護衛の神殿騎士が毒蜘蛛に噛まれて……。


 ん、待てよ。


 何か違和感を覚える。

 今の光景を思い浮かべると、頭の片隅に何かが引っかかった。


 何だろう、この腑に落ちない感覚……。


 あの神殿騎士、扉の近くを警護していたんだよな。

 けど、あの時点で結界が張られ、外へは逃げられない状態だった。


 あれ、もしかして?


 オレはハッと気が付くと、お祖母様やネヴィア聖神官のいる場所へ神速の速さで踵を返した。


世の中はオリンピックのようですね。

テレビをほとんど見ないので、盛大に乗り遅れていますw

さらに夏バテからの絶不調で、ひたすら寝ています。

連休には初イラストを描こうと思っていたのですが……(←たぶん、思ってただけ)

貯まった夏アニメも見てないし、何だかぼーつとしている間に連休が終わりそうです(>_<)




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― 新着の感想 ―
[一言] リデルだって素手で捥げるけど、素早く捥ぐのは技量とかで無理そう。腕力特化って感じだし(失礼)
[気になる点] うちはボチボチテレビ見ますけどオリンピックなんてやってます?(全然見かけない) [一言] こっちの人員に紛れてるのかな?
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