告白……⑧
「おかげで、私はデイルが戻って来てくれたと確信出来ましたし、アリシアちゃんが生まれた時も本当の孫ができたと実感が湧きましたもの。だから、貴女方にどんなに礼を言っても言い足りないくらいなんですの」
お祖母様は感謝の表情を浮かべながらアエル達に頭を下げる。
「レ、レリオネラ太皇太后陛下、頭をお上げください。臣下としても神殿関係者としても当然のことを行ったに過ぎません。過分なお言葉でございますが、功があるとすればそれは全てアエル様にあると存じます」
レリオネラお祖母様は、ジルコークの言葉に頷くと参加者一同に向き直って言った。
「これでおわかりいただけたかしら、私が今までお話しした告白が私だけの妄想でないことを」
なるほど、血統裁判でのアエルの裁定で本物の皇女と認めれらたガートルードとしては、今回の裁定を否定することは、自分のことも否定することになりかねない。
真っ向からお祖母様の話を拒否することは難しいだろう。
お祖母様は、少し得意げな表情で皇帝を見下ろしながら話を続ける。
「けれど、きっと貴女のことですから、それでは納得しないでしょうね。その当時のデイルが本物の皇子だったとしても、アリシアちゃんのお父様がそのデイル本人とは限らない、そう言いたいのではありませんか」
確かにその可能性は否定できない。オレが皇帝の立場でも、きっとそこを突いただろう。
「ですから、それについてもちゃんと納得していただけるよう準備をしてまいりましたの」
お祖母様が目配せすると、ジルコークの後ろに控えていたラドベルクが脇に抱えていた包みから見覚えのある長剣を取り出した。
「念のため、私自身とアリシアちゃんのお父様の剣に付着した血痕とを、つい先ほどアエル血統裁定官に鑑定していただきましたの。いかがでした、アエル血統裁定官?」
「間違イナイ、二人ハ親子。前ノ時と同ジ」
「……と、いう結論ですわね」
お祖母様は参加者一同を見渡すと是非を求める。
「これで、このアリシアちゃんが私の正真正銘の孫だと証明されたわけですが、何か異論のお有りの方はいらっしゃいますか?」
誰一人、異論を唱える者はいない。
「異論は無いようですわね」
ちらりと皇帝の様子を見るが、顔色を変えずに無言のままだ。
「アリシアちゃん……」
お祖母様がオレを呼ぶ。
手招きするので近づくと、ひしと抱きしめられた。
「……良かった。貴女をまた孫として抱きしめることが出来て……」
「オ……私も嬉しいです、お祖母様」
やっぱりオレの本当のお祖母ちゃんなんだ……そう思うと、皇女とかそういうのを別にして、純粋に嬉しかった。
ちょっと、くすぐったい気分だけど、何だか懐かしい気分になる。
オレが嫌がったせいか、親父に抱きしめてもらった記憶はあまりなかったから、この切ない感覚は顔も覚えていない母親のそれなのかもしれない。
「お祖母様……」
オレも優しい気持ちになって、そっとお祖母様を抱きしめた。
「とりあえず、おめでとうございますと言って良いのかな。数少ない皇族が増えることは帝国にとって喜ばしいことと言えるでしょうな」
早速、停戦会議において劣勢なライル公爵が追従する。
「まあ、アリシア皇帝が即位なさっている現段階で新たに皇女が増えたとしても現状は、そう変わらないと言えますが……しかし、アリシア皇帝がいる以上、デイル様のご息女をアリシアとは呼べませんし、何と呼べば良いのやら」
「いや、そんな下らぬ心配をしている場合ではないぞ、ライル公爵」
血相を変えてカイル公爵が捲し立てる。
「レリオネラ太皇太后のお話を聞く限り、デイル皇子が先に生まれたのは明白だ。そうなれば、カイロニアとしてはデイル皇子こそ第一皇位継承者であり、デュラント四世は正統な皇帝だったと言わざるを得ない」
カイル公爵が顔色を変えるのも道理だ。
カイロニアでは双子の場合、先に生まれた者が長子となり、逆にライノニアでは後に生まれた者が長子となる……その慣習の違いこそが、そもそもの双子戦争の発端だった。
それは民衆に根付いた風土や信仰の問題であり、簡単に解決できるようなものではなかったのだ。まさか、その争いがここで再燃されるとはオレも思ってもみなかった。
「しかも、先ほどの話でデイル様のご息女の方が一歳年長であることもわかった。『帝室典範』の第一条には『帝位は皇帝の血統に属する長子が、これを継承する』とある。それを遵守するなら、皇帝になるのはそちらにいらっしゃるデイル皇子のご息女こそなるべきであり、現皇帝の即位を到底認めることはできない」
え? カイロニアって、皇帝派だったよね。
そんなこと言って大丈夫なのか。
「カイル公爵、聞き捨てならん発言だぞ。本当に意味がわかって言っているのか?」
案の定、アリシア皇帝がカイル公爵を詰問する。
「無論、承知しております。けれど、帝室の一員として『帝室典範』を蔑ろには出来ません。申し訳ございませんが、貴女様の即位は無効と言うしかございません」
「き、貴様!」
「お待ちなさい、二人とも」
言い争う二人にお祖母様が待ったをかける。
「どうやら、ここにいる皆さんは何か勘違いなさってるようなので、はっきりさせたいのですけど……」
お祖母様はアリシア皇帝を冷たい眼で見据えながら言った。
「私はこの女を一度も帝室の一員とは認めておりませんわ。それこそ、皇帝を僭称する痴れ者と申しています」
「な……」
お祖母様の暴言にアリシア皇帝は怒りで言葉を失う。
「待ってくれ、レリィ。そのことなのだ。君は最初からアリシア皇帝に対し冷淡だった。私としては、君のアリシア皇帝に対する振る舞いが、ずっと疑問でならなかったのだ。何故、そんなにも頑な態度なのだ? その理由をぜひ聞かせて欲しい」
ネヴィア聖神官が、もっともな疑問をお祖母様にぶつける。
それに対し、お祖母様は一瞬戸惑う様子を見せたが、意を決したように沈痛な面持ちで口を開いた。
「それは……あの子の……アイルの最期を看取ったのが私だからです」
ご、ごめんなさい(>_<)
会議、終わりませんでしたw
でも、きっと次回で終わりますから(←たぶん)
コミカライズ版の第8話(ブックライブ様)・第7話(それ以外の電子書籍サイト様)が来週の6月11日に発売予定です。売れてるのか売れてないのか、自分ではさっぱりわからないので、ちょっと怖いです。
香椎ゆたか先生のコミカライズ版は絵も可愛くて内容もとても素敵なので、ぜひ読んでみてください。よろしくお願いします。m(__)m




