停戦……⑧
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「リデルさん、お久しぶりでござマス。お元気でしたカ?」
来客用の応接室で待っていたのは青いローブを纏った懐かしい顔だった。
いや、仮面を被っているから顔は見えなかったけど。
「トルペン、どうしてここに?」
再会を喜ぶ気持ちもあったが、それよりも「何故?」という想いが強い。
「トルペン『先生』ですヨ」
ぬぬ、相変わらず面倒くさい。
「トルペン『先生』は何でここにいるんだ? アリスリーゼにいたんじゃないのか? それにユクやノルティはどうしてる?」
「おう、質問ばかりですネ。デモ、良いでしょう、吾輩は『先生』ですから、質問に答えますヨ」
「……そうしてくれると助かるよ」
このウザさが懐かしく思えなくもないけど、疲れることには変わらない。
「吾輩たちは今、北方大神殿にお世話になっているのデス。そこでユクもノルティも楽しく暮らしてますヨ。ここに来たのは、神殿長のルータミナさんの御遣いのためデス。まさか、ここでリデルさんに会えるとは思いませんでしたガ……」
「そうか、ユクもノルティも元気なんだな」
アリスリーゼに逃げ込んだことまではイクスに聞いて知っていたが、その後の消息については知らなかったので、それを聞いてオレは、ほっとした。
二人の逃亡に関しては、オレの責任と言っても過言ではなかったからだ。
「リデルさんも元気そうで何よりデス。帰ったら二人にも伝えておきますネ。二人ともリデルさんの安否をずっと気にしてましたし、会いたがっていましたカラ」
「うん、オレも二人に会いたいよ」
心からそう言うとトルペンは、仮面の下に見えている口元を綻ばせながら答える。
「まあ、近々会えると思いますヨ。ネヴィア聖神官が吾輩たちを庇護してくれるようなので、帝都に戻ってきても神殿内にいる限り身柄の安全は間違いないでしょうカラ」
「えっ、ネヴィア聖神官と知り合いなの?」
「ええ、これでも元宰相補でしたからネ。何度かお会いしてますヨ」
そうか、宰相補なら教皇領の高位神官と昵懇でも不思議はないか。
けど、それにしてもネヴィア聖神官はオレだけでなくユクたちも守ってくれるつもりらしい。もちろん、オレが友人の娘だからという理由以外に、教皇の代理者としての思惑もあるのだろうけど、その厚意にはいつか恩返ししなきゃと思う。
とにかく、教皇が後ろ盾になってくれるのなら、大神殿はこちらの味方と考えても差し支えないだろう。まあ、北方大神殿と中央大神殿は元からオレ寄りだったから、あまり変わったような意識は感じないけど、イオラート教の全ての神殿から支援を受けられると考えれば、アリシア皇帝も迂闊にオレたちに対して手出しできなくなるに違いない。
人間離れしたオレはともかく、ユクやノルティの安全が保障されるのは有難かった。
「ん? 今、元宰相補って言った?」
「はい、言いましたヨ。聞いてくだサイ、リデルさん。吾輩、ついに『ただの大魔法使い』となったのですヨ」
ただの大魔法使いって……突っ込みどころ満載だけど、どうやらやっと宰相補を辞することができたみたいだ。
そう言えば、新皇帝が即位して新宰相が決まるまで宰相補を辞められない決まりだったっけ。アリシア皇帝が即位してケルヴィンが新宰相に任じられたので、ようやくお役御免となったらしい。
ちなみに、兵衛府の長つまり武官トップの上将軍にはアーキス将軍が、行政府の長の尚書令には前尚書令ラーデガルトが返り咲き、大神殿の長の聖神官にはご存じの通りパティオが内定中という状況だ。聖神官が任じられれば、長い間空位だった帝国四官がようやく揃うことになる。
そうなれば、帝国の新体制が確立されることになった筈だが、内戦で頓挫しているのが現状だ。
「いやあ、これでやっと長年の研究に没頭できると言うものですヨ」と嘯くトルペンにオレは疑念の目を向ける。
トルペン、あんたが真面目に宰相補の仕事をしていたとは全然、思えないんだけど。
副官のシリアトールさんが涙目になってる姿しか思い浮かばないぞ。
「それはそうと、神殿の御遣いって何なんだ? オレが手伝えることなら手伝うけど。ちょうど今、『待ち』の状態だから」
「ありがとデス。でもルータミナさんから口止めされてるので、話せないのデス。けど、そう難しいことでないので、心配いりまセン」
ふと気になって聞いてみたオレは、残念そうに答えるトルペンに違和感を覚える。
あれ、そう言えば……。
「トルペン、あんた身体が戻ってるのか?」
手を伸ばしてトルペンに触れると幻でなく実体がある。
オレがアリスリーゼから帰還した時はまだ、ちびトルペンのままだった筈だけど、現在のトルペンの姿は元の大人サイズのトルペンだった。
「はい、ようやく本体の修復が終わり、元の状態に戻りましたヨ。これで、従前のように戦えマス」
「マジか。そいつは助かる」
トルペンの復活……それはここ最近のオレにとって最大級の幸運であり、クレイ救出における強力な戦力を得たことになる。
奴なら転移魔法で皇宮に入り放題だし、そもそもトルペン単体の戦闘力も侮れない。
何しろ、万全のトルペンを倒すのには大勢の軍隊が必要だからな。伝説級の竜に突っ込んでいける度胸のある騎士なんてそうはいないだろうし、一般兵にとっては災害並みの恐怖を感じると思う。たぶん、今の内戦の優劣をひっくり返すことだって出来得るぐらいの戦力だと思う。
「実はクレイが拉致されて人質になっているんだ。あいつを助けるのに、あんたの力を貸して欲しい」
「もちろんですトモ。吾輩が帝都から脱出できたのはクレイさんの連絡があったからですし、合流した時も彼のおかげでユクを助けることもできましタ。クレイさんを助けるためなら、こちらの方から協力をお願いしたいぐらいデス」
トルペンは珍しく勢い込んで続ける。
「そもそもリデルさんにはユクの件で、お世話になってますし、主様からもヨロシク頼むと言われてますから、リデルさんの頼みを断る選択なんて始めからありまセン」
「……ありがとう、トルペン……『先生』」
トルペンの言葉にちょっと感動する。
「礼には及びまセン。ただ、神殿の御遣いが済んでからになってしまいますが、それでも大丈夫ですカ?」
「ああ、それで構わない。どうせ、救出劇はもう少し先になりそうなんだ」
オレは現状と今後の予定についてトルペンに簡単に説明した。
今回は少し長めです。
久しぶりに登場に懐かしく感じてしまいましたヨw
あとはノルティが出てくると作者的には嬉しいのですが……。
何だかんだ言っても、あの子弟コンビはお気に入りなのでw
年末に液タブを買おうと画策してます(>_<)
買ったら報告しますね♪
あと、次回は新章となります。




