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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
512/655

変転……⑤

 クレイがオレの弱点だって?


「何、言ってんだ。そんなことあるわけないだろ」


 オレが鼻で笑うとイクスは目を丸くする。


「まさか、自分じゃ気づいてない?」


 その言葉にオレは、むっとして言い返す。


「気づいてないも何も、あんな奴が弱点なんかに……」


 ちょっと待て、なんでソフィアも驚いた顔をしてるのさ。

 それじゃ、まるでイクスの言うことがホントみたいじゃないか。


「……まあ、とりあえず君の言い分はほっといてだね。ハーマリーナはクレイが君の弱点と判断した。だから、彼を捕まえれば、僕の主のところまで君を連れていけると踏んだってわけさ。何しろ、先に命令されたゾルダートの連中が不甲斐ないばかりに主様はひどく御立腹だったからね、ハーマリーナも確実な方法を選んだってことさ」


「……さっき、ハーマリーナは目的を果たして帰途に就いたって言ったよな。じゃあ、クレイは……」


「ああ、すでに彼女の虜の身だね」


 そんなの……嘘だ。そう叫び出したいのを、ぐっと堪えてオレは重ねて質問する。


「ユクは……ユクはどうなったんだ。クレイと一緒にいるのか?」


 クレイも心配だが、荒事に慣れていないユクの身の方が心配だ。


「いや、ユクはクレイ君とは別々になったよ。今頃、トルペンと一緒に、おそらくアリスリーゼに向かってると思うな……」


「アリスリーゼに……」


 イクスの話によると、ハーマリーナはトルペンがユクの居場所を不思議な力で突き止めることを知っていて、密かに逃げたトルペンの挙動を監視していたのだそうだ。そうして、トルペンが行動するのを追跡してクレイ達一行を襲撃したのだそうだ。

 トルペンに気付かれずに追跡できることからも、ハーマリーナが桁違いの術者であることは明白だ。実際、ハーマリーナから逃れるためにクレイは自らを囮にして、ユクとトルペンを脱出させるのがやっとだったらしい。


「ユクはトルペンと一緒なのか……なら、ひとまず安心か」


「クレイ様は……クレイ様はどこにいるのです!」


 オレがユクの身を案じていると、今まで沈黙していたソフィアが我慢しきれずに叫んだ。普段は奥ゆかしくて会話に割り込むことのないソフィアが切羽詰まった表情をしていた。


「ソフィアの言う通りだ。クレイは今、どうしてる?」


 オレも冷静を装って、一番聞きたかったことを尋ねる。


「たぶん、帝都に戻ってると思うよ。で、君はどうするの?」


「どうするって?」


 イクスの問いかけの意味が分からず聞き返す。


「戦争を回避するために、このままアリスリーゼに向かうのか、それとも愛しのクレイ君を助けるために帝都に戻るのか……どちらにするんだい?」


 どちらにする……簡単に答えなんて出るわけがない。


 今回の旅の目的は一族を裏切ったクレイとガートルードに狙われているユクを助けることにあった。が、それと同時に、皇帝に叛意を示し討伐の対象となったアリスリーゼを説得し、内戦が起こらないようにすることも目的の一つだった。


 クレイのことを考えなければ、ユクの安否確認と討伐軍がアリスリーゼへ到達する前にレイモンド統治官を説得するためにも、すぐさまアリスリーゼに向かうのが正しい選択なのだろう。


 けど、今のオレはすべてを投げ捨てて帝都に向かいたいのが本音だった。

 ただ、仮にも皇女という立場にいた人間としては、たった一人の友達のために多くの人間が苦しむ選択を安易に口にすることは出来なかった。


「リデル様……」


 ソフィアが心配そうにオレを見つめる。


 彼女が山奥までオレに助けを求めて来たのは、ひとえにクレイの命を救うためだったのだから、不安げの表情をするのは当然と言えた。


 ソフィアを安心させるためにも、「すぐに帝都へ戻ろう」と言ってあげたかったけど、どうしてもその一言がオレには言えない。

 代わりに口に出た言葉はソフィアの期待を裏切るものだった。


「このまま、アリスリーゼへ向かう」


「リ、リデル様!」


 ソフィアは驚愕の、イクスは「へえ……」という興味深そうな表情を見せた。

 二人の反応を気にしながら、オレはイクスに確認する。


「なあ、イクス。さっきの話だとクレイはオレをおびき出すための餌なんだよね」


「うん、そう取って間違いないよ」


「なら、オレが帝都へ戻るまで、とりあえずクレイの身は安心だ。大事な人質をむざむざ殺したりはしないだろう……だから」


 オレはソフィアを安心させるように頷いて見せてから、イクスに向かって言った。


「まず、アリスリーゼを説得し内戦を阻止する。そして、それが済んだら、すぐさま攫われたクレイの救出に帝都へ向かうつもりだ。イクス……お前の主に伝えてくれ。必ず、赴くからそれまでクレイを丁重に扱って欲しいって」


「残念だけど、それは出来ない相談だね」


 オレの頼みをイクスはにべもなく断る。


「何故だ?」


 オレが憮然な顔をすると、イクスはあっけらかんと答える。


「いやあ、だって。しばらくは帝都に戻るつもりはないから」

  

「何だって?」


「せっかく君に会えたんだし、邪魔者のクレイ君もいないんだ。しばらくの間、君にくっついて親睦を深めようと思ってさ」


 イクスの屈託のない笑顔と発言にオレは心底げんなりした。

今回は筆が進まず、難産でした(>_<)

時たま、こんなことがありますが、毎回何とかならないものかといつも思ってます。

すらすら書ける人を尊敬しますw



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― 新着の感想 ―
[良い点] キャラの名前とか分かんなくなってきた~ [一言] 昔なら猪突猛進って感じで(愛しの)クレイの元へ向かっていただろうに
[一言] 最終的にリデルはクレイとくっつくのかどうかが気になりますね この頃暑いので熱中症などにお気をつけください
[一言] 戦争が無事回避出来ると良いですねー。 難産でも書けるだけ私は凄いと思いますよ!私もここの作者さん達の影響で、書きたいと思った事がありますが結果は冒頭で行き詰まりでした(笑)
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