新しい出会いはいかがですか?②
「いや……まあ、その……ちょっとした遊び心で……」
オレとしては、いたずらを見つけられた子どもの気分だったが、クレイは馬鹿にしたように鼻で笑った。
「全く、お前ときたら眼を離したとたん、このありさまか?」
「や、でもオレだけが悪いんじゃないぞ、あいつだって……って、何だその服は?」
オレはクレイの抱えている服を見て、我が目を疑った。
白やらピンクのふわふわした可愛いドレスや黒を基調としたシックなものまで何着もの服があったのだ。
「これか?むろん、お前のだ。ここにあるもの以外もサイズ直しを依頼してあるから、明日にはできる」
「おい、クレイ」
「ん、何だ?」
「お前、馬鹿だろ?」
「な、何を言う! 言っちゃなんだが、オレは見た目より学があるんだぞ」
それ、見た目が馬鹿っぽいって言ってるも同じだから。
「お前の買った服、着る気なくなったから」
「何いぃ!」
眼をむいて驚くクレイに冷たく言った。
「それとオレ、絶対にスカートはかない」
「ま、待て。それだけは考え直してくれ……」
涙目でクレイが懇願する。
「え、だって動きにくいし、恥ずかしいもん」
「リデル……スカートはな」
「……なんだよ」
「男のロマンなんだ」
クレイが真顔で断言する。
「馬鹿やろ……」
「確かに一理ありますね」
ええ~っ!
クレイを殴ろうとしたオレは、突然会話に参加されて意表をつかれた。
「お、あんたもそう思うか」
「スカートは淑女の身だしなみの基本でしょう」
にこにこしながら騎士様は爽やかに言った。
ヒュー、お前もか……見損なったぞ。
これだから、男ってヤツは…………あ、オレも男か。
「と、とにかく返してこい。この服」
「嫌だ、俺が買った服だ。リデルが着るまでずっと持ち運ぶ!」
駄々っ子か、お前は……。
「殿方がせっかくプレゼントして下さるのです。頂いて損になることはないでしょう?」
ヒュー、意外に現実的だな。
「そうさ、いいこと言うね。で、あんた誰?」
「これは申し遅れました。私はヒュー・ルーウィックと申す者。見ての通り、見聞を深めるために諸国を巡っております。して、貴殿は?」
「俺はクレイ、傭兵稼業をしている」
「クレイ殿?」
「クレイでいい」
「では、私もヒューで構いません」
「わかった。ところでヒュー、お昼時だが一緒に飯でもどうだ?」
「それは願ってもない申し出です。承ります」
おいおい、オレを無視して話を進めるなよ。
こいつら、意外に気が合うのかも……。
「ところで、先ほどから気になっていたのですが、お二人の関係は? 大変仲が良いようなので、もしや言い交わした仲なのかと」
ち、ちが……。
「その通りだ!」
ごすっ。
これはクレイを殴った音だ。
「違うから、絶対違うから!古い付き合いなだけ……」
「深い付き合いだよな」
ごすっ、どすっ!
クレイが殴り飛ばされる。
「そこで死んでろ」
「リデル……意見するつもりはありませんが、大の男の頭をそうぽんぽん殴るものではありませんよ」
「とにかくこいつとは、ただの友人だから。誤解しないように」
「はいはい、わかりました。そういうことにしておきます」
くすくす笑いながらヒューは頷いた。
う~っ、絶対誤解してる。
って言うか、何でオレ赤くなってんだ?