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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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拡がる波紋……③

「急ぐ理由ですか?」


 アリシアの真剣な表情にオーリエも少しは考えを巡らしてみるが、思いつくことはなかった。

 どちらかと言えば、アレイラの主張していることの方が彼女が属していたグレゴリ傭兵団の考えに近い。


 (ただ……この人の言うことは無視できない)


 オーリエは新しい皇女の得体の知れなさを薄々感じていた。


 情勢は目まぐるしく変わる――リデルが皇女として帝国を変えていくと思った矢先にこうして別の人間が皇女に取って代わることもあるのだ。先を見通すのはとても難しいことと言える。

 何か私たちの知らない理由でアリシアが焦っていても、何ら不思議ではなかった。


「皇女殿下、降参です。何が貴女をそんなに急がせているのか、教えていただけますか?」


 隣では、今度ばかりはアレイラも同意見のようで、何も言わずに頷いている。


「本当はこんなところで明らかにすべき事柄ではないのだけど、オーリエにはもう一つお願いしたいことがあるので教えて差し上げるわ。アレイラは……そうね、貴女はついでかしら」


 その言い様にアレイラの顔色が変わるがアリシア皇女は薄く笑った。


「冗談よ。でも、感情を素直に出し過ぎるのは交渉の場では愚の骨頂ね、気を付けた方がいいわよ」


 アリシア皇女は、そう言うと改めてオーリエに向き直った。


「しばらく前から、帝国の絶妙なバランスが崩れ始めているのを知っているかしら」


「それはリデ……いえ、アリシア皇女が帰還されたからですか?」


 リデルと言いかけて、慌てて皇女と言い換える。


「そうではないの。そのずっと前から密かに進行していたのよ」


 オーリエの言い間違いを気にするでなくアリシアは続ける。


「それにオーリエ。貴女、傭兵団にいたのだから気づいてると思うけど、最近カイロニア・ライノニア間で大きな戦闘が起こっていないと思わない?」


「そ、それも皇女殿下がお戻りになり、内戦終結の兆しが見えたからで……」


「いいえ、違うわ。これについても、皇女が帰還する前から、その傾向は顕著だった……どうしてだと思う?」


 傭兵団長を親に持つオーリエには心当たりがあった。


「……お金が無いからですか?」


 財政が年々厳しくなり、団を維持していくのが大変であることをオーリエは目の当たりにしていたのだ。オーリエ自身が帝国軍に入隊しようとしたのも、何もデイブレイクの傍に居たいという乙女心ではなく(多少はあるが)、傭兵団の将来を考えて帝国軍との繋がりを強めたいという思惑もあってのことだった。


「半分正解ね。実際はお金だけでなく人材も物資も……まとめれば国力が不足し経戦能力が無くなった。つまり、戦争なんかやってる場合じゃないほど、帝国の国力が落ちているのよ。でも相手には負けたくない。貴女ならどうする、オーリエ?」 



「どうする? って言われても……」


 戦う力がないのに相手に勝ちたい、そんな都合の良い方法があるわけ……。


「相手方のトップを暗殺するというのが簡単では、ありませんの?」


 横合いからアレイラが名誉挽回とばかりに口を挟む。


「そんなこと、内戦が始まった当初から考えつくことね。ただ、その対応は両者とも万端で付け入る隙など見当たらないわ」


 貴女には聞いてないから、という素振りをアレイラに見せながらアリシアはオーリエをじっと見つめた。


(う~ん、帝国が疲弊して戦えないなら、どうすればいい?)オーリエは頭を悩ませる。


 もし、自分の経営する傭兵団がそういう状況に陥ったら、私ならどうするだろう。たぶん、一時の恥を捨て他の傭兵団の力を借りるに違いない。

 それを国家に置き換えたなら……え、ってことは。


「まさか、他国の力を借りるなんてことは……」


「そのまさかよ」


 半信半疑のオーリエに対し、アリシアは確信に満ちた目で吐き捨てるように言った。


「今まで、どんなに窮しようと他国の介入を許さなかった帝国に初めて他国を招き入れようとする国賊がいたのよ」


 オーリエはアリシアの発言を俄かには信じられなかった。


 というのも、内戦の最中にあっても、他国の侵入があれば休戦し協力して事に当たるのが、この国の伝統だった。それほど、他国が帝国を支配することに強い抵抗を示し、一致団結する精神的土壌が帝国にはあったのだ。


 なので、そうした手段を選択するという発想自体がオーリエの頭には存在していなかった。


「それで……そのとんでもないことを企ているのは、どちらの陣営なのでしょうか?」


 オーリエは胸の鼓動が早くなるのを感じながら、恐る恐る聞いた。


「それはこの場では、さすがに明かせないわ。ただ、確度の高い情報をいくつも押さえているから、事実であることは間違いないわね」


「そうですか……そうですよね」


 聞けなくて残念な気持ちが半分、知らずに済んで良かったと思う気持ちが半分、オーリエの気持ちは複雑だった。

 

「とにかく、そんなわけで帝国の軍事バランスは、今にも崩れようとしていたってわけ。このまま、手をこまねいていれば、皇帝即位どころか現在の皇女の立場さえ危ういことになりかねないわ。だから……」


 アリシア皇女は、今度はオーリエだけでなくアレイラの方にも目を向け、断言した。


「今しかないのよ……皇帝を目指せるのは」

急に暖かくなったり寒くなったり、忙しい気候ですね。

その割には体調不良にならないのが不思議です。

3月4月は皆さんもそうだと思いますが、リアルが多忙を極めるため、更新が間に合わない日があるかもしれません。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] それ自分のことだったりしないのかねぇ(゜ω゜) 手洗いうがい(場合によっては顔も)してインフルエンザや風邪、新型コロナウイルスにお気をつけください。
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