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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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独りになって……⑥

「あら、君もそうだったの?」


「え……あ、うん。一応、そうだけど」


 オレの素顔はオーデイルさんにしか見えなかったらしく、娘さんにはフードを被った根暗な少年と映っているようだ。


「そうなの。ちょっと待ってて」


 そう言うと娘さんはカウンターの奥に消えると、しばらくして小皿を持って戻ってくる。

 どうやら果物の盛り合わせのようだ。 


「これは?」


「食後のデザート。誕生日のサービスよ」


「あ、ありがとう」


 娘さんの気遣いには感謝するけど、オレを可哀想な目で見るのは止めて欲しい。

 どうも、誕生日に誰にも祝ってもらえない寂しい人だと思われてるみたいだ。


 いや、確かにそれは事実なんだけれど。

 決して友達がいない訳ではなく、事情があって独りでいるだけなんで……。

 まあ、そんな言い訳を言えるはずもなく、オレは大人しくいただくことにした。


 デザートを食しながら、ふと前回の誕生日はクレイと二人で祝ったことを思い出す。ちょうど護衛の報酬が入ったばかりで、少し奮発して小洒落たレストランでお祝いしたんだっけ。

 祝杯を挙げ、祝いの言葉を述べた後、クレイはオレに何気ない調子で尋ねてきたんだ。


『17歳になったが、何かしたいことがあるのか?』と。


 オレは即答した。


『俺は聖石を探して世界最強の男になるんだ』って。


 クレイは冗談だと思ったらしく笑い転げたけど、オレは本気だった。

 当時のオレは、自分の才能や身体的成長に絶望し、年齢が上がることに喜びより焦りの気持ちが強かったのだ。

 それを覆すには聖石しかないと本気で信じ込んでいた。

 今、振り返れば、ただの思い込みだとわかるけど、当時のオレにそう気が付ける余裕など無かった。


 そう、1年前の今日、17歳になったあの日にオレは、今の状況に繋がる聖石を探す旅に出ることを決意したんだ。


『まあ、いろいろあったが、お前はこの1年頑張ったと思うぞ』


 ふと、クレイのそんな台詞が聞こえたような気がした。


 とたんに、寂しさが胸にこみ上げてくる。

 今までいつだって、クレイが横に居てくれた。離れ離れになるなんて思ったことは一度も無かった。毎年ずっと、オレの誕生日を祝ってくれるものと信じていた。


 なのに……。


 思わず、涙を堪える仕草を見せると、娘さんがそっと頭を撫でてくれた。


「大丈夫よ。勇気さえ出せば、君にも友達の一人や二人すぐ出来るから」


 ぼっちのせいで泣きそうになったんじやない――そう言いたかったけど、娘さんの優しい表情と言葉に思わず目頭が熱くなり、フードに隠れて大粒の涙を(こぼ)す。


 見当違いの慰めだけど、冷え切ったオレの心がわずかに温まった気がした。



 食事が済むとオレはオーデイルさんと娘さんにお礼を言って、脱兎のごとく店を後にする。

 とても良くしてくれたのに申し訳ないけど、涙が引いて正気に戻ったら恥ずかしさが先に立ったのだ。

 初めて会った女性に頭をよしよし撫でてもらうなんて羞恥以外の何ものでもないから。

 しかも、心地良くて癒されたのだから始末に負えない。


 まったく最近のオレはどうかしている。


 どうも独りになってから精神が不安定過ぎるように思う。せっかく自分を見つめ直し、心を強くする良い機会だというのに。

 まあ、オレって他人から何も考えてないように言われるけど、実際はけっこう思い悩む性質だから。

 そういうところにクレイは敏感で、よくフォローしてくれたっけ……いかん、いかん、また後ろ向きな考えをしてしまった。


 オレは頭を振って袋小路に陥りがちな思考を追い払い、ソルベ爺さん紹介の学者さんの家へと急いだ。

 教えられた住所はオーデイルさんの店から、そう遠く離れてはいなかったけど、裏通りを奥に入った、日も届かない人通りもまばらな治安の悪い場所にあった。

 オレは用心のためにフードをしっかり被り、不測の襲撃に備えて周囲を警戒しながら進むことにする。



 ようやく目的の場所に到着し、さてどうやって紹介された学者さんと接触しようかと考え込んだ矢先に、目の前で事件が起こった。


「だ、誰か助けてくれ!」


 そう、一人の男が複数の怪しい男達に襲われていたのだ。


 え? 何で怪しいってわかるかって。


 フードを被って顔を隠しているオレが言うのもなんだけど、襲っている連中は全身黒尽くめの風体でご丁寧にも舞踏会で使うような仮面まで付けていたんだ。


 そんな見るからに怪しい格好、逆によくするよねと思ったぐらいだよ。

 とにかく、襲われている人を助けなきゃ。


「おい、あんた達。何してるんだ! 暴漢か?」


 オレが走りながら声をかけると、囲みの中の男が必死に叫ぶ。


「お、襲われてるんだ。助けてくれ!」


 が、叫んだ後オレの姿を認めると絶望した顔になる。


「ま、まだ子供じゃないか」


 まあ、遠目に見ればフードを被った小柄な少年だからなぁ。

 襲撃者達も一瞬、緊張した素振りを見せたが、オレの姿を認識すると助けを求めた男とは反対に余裕を見せる。

 そして、問答無用でオレに切りかかってきた。

 目撃者を一人も残さないとは、どうみても悪人だろう。


 うん、これは成敗しちゃっても良いよね。


 ちょうど、頭の中がもやもやして、いろいろ鬱屈が溜まっていたから、身体を動かしたいと思ってたところなんだ、悪く思うなよ。


またぞろ、厄介ごとの気配が……。

リデルの巻き込まれ体質は健在のようです。


あと、リデル君もとうとう18歳になってしまいまいしたw

1年を描くのにいったい何年かかったことやら(>_<)


ちなみに、どうでも良い話ですが、リデルの誕生日と作者の誕生日は同じ日だったりしますw(もう過ぎちゃいましたけど)

誕生日プレゼント……レビユー欲しいなあ(←嘘です、調子にのってごめんなさい汗)



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