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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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独りになって……②

「で、これからどうすんだ?」


 奥さんと二人で、宿泊客の食べ終えた食器を片付けながら、シクルスさんが聞いてくる。


「行くとこないなら、しばらくここに居てもいいんだぞ」


 優しい言葉に、思わず流されそうになるけど、ぐっと我慢する。

 独り立ちするんだと決心したばかりなのだ。


「ありがとう、シクルスさん。でも、支度が出来たら出て行くよ。それにノルティのお父さんに用事があって会おうと思ってるんだ」


「ああ、眼鏡の嬢ちゃんのお父上か」


「うん、ちょっと聞きたいことがあってね」


 そう……昨晩、寝ながら考えたのは今後どうするかだった。

 信じられないかもしれないが、オレはこれでもオレなりに良い皇女になろうと努力してきたつもりだ。それが今回の一件で、急に目指す目標が無くなってしまい、何をしていいのか、正直途方に暮れているのが現状だ。

 皇女という立場が、ずっとオレの行動を縛っているものと考えていたけど、いざ自由になってみると意外にやりたいことは見つからないものだと思う。


 そこで、ようやく思い付いたのは、オレの親父とアデルという謎の爺ちゃんのことを調べてみようという結論だった。

 そのため、最初に話を聞いたノルティのパパであるサウルス館長にもう一度会って話を聞くつもりだ。

 何かしらの情報が得られたなら、爺ちゃんの出身地であるアルセム王国に行ってもいいとさえ考えている。先のラディクの口振りから、暗に帝都からも出て行って欲しそうに感じたからだ。


 いっそ、誰も知らない土地で一からやり直すのも悪くないと本気で考えていた。


「そうか……あんたのことなら大丈夫だとは思うが、周りには注意するんだな。治安が悪いこともそうだが、昨晩から店に怪しい初見の客がちらほら出入りしてたぞ」


 貴族の元門番だったシクルスさんは、けっこう目端の利く人物と言っていい。無愛想で客あしらいも横柄だけど、見るところはしっかり見ている。

 この店が繁盛しているのは、奥さんの器量と気っ風の良さもあるけど、シクルスさんのそうした心配りも大きいように感じる。


「もし、困ったら戻って来な」


「そうよ。良ければ、うちで働かない? 歓迎するわよ」


 奥さんも同調する。


「ええ、考えときます」


 口ではそう答えたけど、それに頼るつもりはない。

 何故なら、ここにオレが残れば、きっとこの優しい人たちに迷惑がかかるのは間違いなかったからだ。ガートルードの真意がオレを孤立させることにあるのはわかっている。

 だから、これからのオレは、好意を持った人や親しくなった人と距離を置かなければならない運命さだめとなったのだ。





 シクルスさんの店から出たその足で、オレはノルティパパのいる帝国図書館へ向った。ただし、聞くことだけ聞いて、すぐに立ち去るつもりだった。

 何しろ、状況が状況だ。

 なるべく、相手に迷惑をかけないようにするために、接触は最低限にする必要があった。


 帝国図書館に着き、ラルフさんに取り次ぎを頼むと、今回はあっさり面会が叶う。

 また、例のごとく研究に没頭していて会えない可能性も心配していたけど、この間の脅しが効いたのか、すぐに会うことが出来た。


 けれど、期待とは裏腹に先日の話以上の情報は得ることが出来なかった。さすがに子供の時の記憶なんて誰しも曖昧なものだしね。

 オレだって、小さい頃のことはよく覚えていないもの。



「そうだ。もしかしたら、ソルベ爺さんなら何か知っているかもしれんな」


 諦めて帰ろうとすると、サウルス館長が不意に思い出したように呟いた。


「ソルベ爺さん?」


「うむ、この界隈で長年、酒場をやっていた爺さんでね。もう引退はしているが、存命のはずだ。あの人なら、何か知っているかもしれん。現役の頃は情報通だったし、まさにこの辺りについての生き字引のような人物だからな」


 お、少しは期待できる情報だ。


「ありがとう、サウルス館長。恩に着るよ。とりあえず、そのソルベさんって人を尋ねてみるよ」


「ふむ、そうすると良い…………とにかく、わしとしては、聞くこと聞いたら、一刻も早く立ち去って欲しいだけで……」 


「ん?何か言った?」


「いや、ラルフ君を道案内に付けようかと言ったのだ」


「え、ホント? それ助かるよ」


「そうかね……ラルフ君、ラルフ君はいるかね!」


「はい、先生!」


 まるで、どこかで聞き耳を立てていたようなタイミングで、助手のラルフが扉を開けて、すっと入ってくる。


「わわっ、驚いた。君、ずいぶん早いな」


「いえ、大事なお客様がお越しになっているのです。細心の注意を払うのは当然です」


 目をキラキラさせながら、助手君は答える。

 この人、オレのこと女神様か何かと勘違いしている節があって、ちょっと近くに寄りたくない人物なのだ。

 けど、目的のために我慢、我慢。


「ラルフ君、この娘さんを『ほろ酔い亭』まで案内してやってくれまいか」 


「『ほろ酔い亭』ですか?」


「ああ、そうだ。急ぎの用件らしい」


「ラルフさん、忙しい時にごめん。お願いしてもいいかな?」


「喜んで!」


 オレのお願いにラルフは即答で了承する。


 やっぱり、心配だ、この人。

お盆休みに、他県に住む後輩と久しぶりに会う約束をしていて、今から楽しみにしています。

本作も律儀に読んでくれていて、感想を書いてくれたこともあったそうです(あとで気付きました)

絵もすごく上手なので、リデルとか描いてくれないかなぁ……と密かに思ってますw

もっと自分も絵が上手くなりたいと思う作者でした(>_<)

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