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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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別離……⑧

「リデルさんは、騎士になるにはどうすれば良いか知っていますか?」


「え……だれか貴族に叙勲されれば、なれるんじゃないのか」


 確か、オレが騎士になりそこなった時はカイロニア公の口添えだった筈だ。


「間違いではありませんが、それでは正答とは言えませんね。試験なら落第です」


 む……何げに上から目線で癪に障る。

 たぶん、オレより年上みたいだから文句は言えないけど、生意気な弟属性が見え隠れする気が……。


「降参です、教えてください」

 

 こういうタイプは下手に出ると調子に乗って何でも話してくれるから楽チンだ。


「やれやれ、他人を頼らないで、少しは考える努力をするべきだと思いますよ」


 と、口では面倒そうに言うけど、顔が綻んでいる。

 割とわかりやすい性格だ。


「まあ、どうしてもと言うのなら、教えないわけにはいきませんが……」


「どうしても……お願いします」


「仕方が無いですね」


 説明したく、うずうずしているのがわかる。

 やっぱり、チョロい奴だ。



「わが国では騎士になるには、概ね3つの方法があります」


 へえ、そんなにあるんだ。


「一つ目はリデルさんの言ったとおり、貴族によって騎士に取立てられる方法です。一般的には、貴族の騎士の従騎士を何年か勤め上げ、主君(貴族)の推薦を受け、その家の騎士となるのです。もちろん、正式に認められるには帝国儀典省叙勲管理局に申請し、認可を得なければなりませんが……。これがいわゆる『諸侯騎士』や『地方騎士』と呼ばれるものです」


「そうなんだ、後の二つは?」


「二つ目は帝国騎士団に所属して騎士を目指す方法ですね。騎士団の入団試験に合格し、騎士見習いとして何年か働き、その実績により騎士団長から推薦を受け、晴れて騎士に叙勲される……そういう流れです。『帝国騎士』や『騎士団騎士』と呼ばれており、『諸侯騎士』よりステータスが高いです。本当は身分の差など無いのですが、待遇面や格式でそう思われているようですね」


 つまり、エリート意識が強いわけだ。


「もっとも、下位や中位ならまだしも、上位貴族の騎士であれば『帝国騎士』よりずっと格上に扱われますけどね。なので、『諸侯騎士』と侮ると痛い目に遭うことがありますので、『諸侯騎士』は家名に注意する必要があるわけです」


 騎士も、なかなか序列とか面倒そうだな。

 

「そして、三つ目の方法が……」


「『天隷の騎士』なんだな?」


 オレが食い気味に言うと、ラディクは『焦りなさんな』という表情でゆっくり続ける。


「ええ、そうです。『天隷の騎士』とは、皇帝や皇族から直接叙勲を受けた者や帝国に特別な恩恵をもたらした人物が従騎士等を経ないで、いきなり騎士となった者のことを言います」


 ラディクはオレの表情を窺いながら言葉を繋ぐ。


「実力を問わず、また従う主君を持たないため『名誉騎士』とか『自由騎士』とも呼ばれていますね。ちなみに『天隷の騎士』は、最初に儀典省を介さないで直接叙勲を行った皇帝ステファン二世が『天(皇帝)のみに隷属する騎士』と称したことに由来しているそうです。また……」


 ラディクはヒューの方に視線を投げかけながら説明を続ける。


「ごく稀な事例として、『天隷の騎士』の従騎士があるじの推薦を受け『天隷の騎士』となることもあるようです」


「じゃあ、もしかして……」


「ええ、『天隷の騎士』として誉れ高い『ユーリス・ルブラン』殿の従騎士から叙勲された稀有な例が、そこにおられる『天隷の騎士ヒュー・ルーウィック』様という訳です。しかも、彼は10歳よりユーリス殿に師事し、そのたぐいまれな剣の才能で、わずか13歳で叙勲されたという伝説の騎士様ですからね」


 オレが驚きのあまりヒューを見つめると、困ったような表情を見せる。


「ヒュー、あんた三十路だったのか!」


「ち、違います。まだ28歳です」


 たいして違わないじゃないか。


 童顔に騙されてた。

 確かに、見た目に比べて落ち着いた雰囲気をしてると思ってたけど。


「ラディク殿、大袈裟に言わないでください。私より早く騎士に叙勲された者も数多く存在するのですから。それに、ラディク殿は騎士になるもう一つの方法を失念しています。四つ目として神殿に所属し神殿騎士になる方法があるでしょう。これなら、12歳で騎士となった事例を耳にしていますよ」


「そ、それは騎士団に入る方法の亜種に過ぎません。それに、その年齢の騎士叙勲は高位神官の師弟や皇族に限られます。貴方のそれとは意味合いが違いますよ」


 ヒューの指摘にラディクは焦ったように反論した。


「いえいえ、私の叙勲はたまたまですし、ラディク殿が言うようなだいそれたものではありません……」


「ううん、すごいよ、ヒュー。前からヒューのことすごい人だと思ってたけど、改めてヒューのすごさを実感したよ」


 すごい――ばかりで、ごめん。語彙力が無くて……。それしか浮かばなかったんだ。


「そんなことより、ルーウィック様。召喚状に応じるつもりなのですか?」


「正式な書状です。応じるより他ありません」


「ですが、召喚理由を考えますと、リデルさんとの関係性に齟齬が生じる可能性が高いと存じますが」


「誠意を持って話し合うしか、道はなさそうですね」


 え? まさか、ヒューまでオレから離れてしまうのか? 

一週間ぶりのご無沙汰です。

その後も順調ですが、疲れやすく、夜になるとすぐ寝てしまいます。

しばらくは週一更新が続きそうです。

すみませんが、よろしくお願いします。

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