表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
453/655

別離……⑤

「虫がいい?」


 クレイが訝しげにラディクに問う。


「ええ、そうですよ。面倒なしきたりやしがらみから逃げ出して自由を謳歌しているというのに、その上で一族の特権や協力を受けたままでいようなどと、虫の良すぎる甘えた話とは思いませんか?」


「いや……確かにそうとも言えるが、俺は別に皆に強制したわけじゃない……その、昔なじみとしての好意を受けただけで……」


 歯切れの悪いクレイにラディクはせせら笑う。


「本気でそう思っているのですか……だとしたら、兄上はこの魔性の女の虜になって心底頭がおかしくなってしまわれたのでしょう」


「ラディク! リデル様に対して無礼だぞ」


「無礼……ですか」


 ラディクは、オレとクレイを見比べてから嘆息する。


「兄上、そもそも貴方は大きな勘違いをしています」


「勘違いだと?」


「ええ、そうです。兄上はハーグリーヴス家から出奔し、自由の身となったと信じ込んでいたようですが、決してそうではありません。いかに破天荒な人間であっても当家の跡取りである兄上を一族が見捨てることなど有り得ないことです」


「だが、俺は己の才覚で傭兵業を切り拓き、さらに一族に背いてリデルの傍らにいたんだ。それは俺の意思だし、一族として普通なら許されることじゃないだろう?」


「もちろんですとも……ですが、それが勘違いなのですよ。そもそも、リデルさんと関わりあうことは一族の意向に反していた訳ではありません。兄上も身に染みてわかっていると思いますが、我々一族は誰の支配にも屈しないことを誇りとしてきました。唯一の例外は……」


「……皇帝陛下だけだ」


「仰せの通りです。皇帝、引いてはその家族のみに我々一族は忠誠を貫いてきました。一族を興した初代から今日に至るまで、そしてこれからも変わることの無い我々一族の存在理由レーゾンデートルです」


 ラディクはオレに視線を向けると残念そうに言った。


「クレイ兄さん……この娘がもし、本当の皇女殿下であったなら、兄さんの行動はこれまで通り、一族のそれとして認められていたことでしょう。けれど、それが間違いであることが判明しました」


 ラディクは一旦、言葉を切りクレイを見つめると言った。


「ですから、もう終わりなのです……」


 もう終わり……ラディクの台詞がオレの頭の中でぐるぐると駆け巡り何も考えられなかった。ただ、ぼんやりとクレイ達兄弟を眺めることしか、オレにはできなかった。


「言いたいことは、それだけか?」


 あ、クレイの声が低くなってる。

 相当、怒ってる証拠だ。


 オレが虚ろな状態から急速に意識を取り戻して二人を見つめていると、クレイは低い声のまま、ラディクを煽るように言った。


「そのめいに俺が従わないと言ったら?」


 ラディクは予想していたのか驚きもせず答える。


「それは兄上の自由です。ただ、その場合は……文字通り『一族からの追放』となります」


 『一族からの追放』が、彼らにとって何を意味するのか、オレにはよくわからない。けど、ソフィアが驚愕のあまり口を押さえ、シンシアが蒼白になって目を見開いているのを見ると、とても重大なことだということはわかった。


「クレイ様……まさかそのようなことは……」


 ソフィアの悲痛な問いかけにもクレイは動じる気配を見せない。


「本気のようですね」


 ラディクは、ため息をつくと残念そうに言った。


「恋は盲目と言いますが……兄上の場合は、恋に溺れて周りが見えなくなった、まさに末期状態ですね。僕が次期当主の座を狙っているなら、その選択は渡りに船なのですが、あいにくと、これ以上の責任は負いたくないんで……」


 弟君は野心家かと思ったら、そうでもないようだ。当主を押し付けられるのをクレイ同様、回避したいらしい。


「ですから、忠告します……いいですか、『一族からの追放』されたら、一族を敵に回すのと同義なのですよ?」


「百も承知だ」


 クレイが断言すると、ラディクは表情を険しくする。


「いいや、わかっていません。兄上、ソフィアやシンシア、その他の者達の顔をご覧なさい」


 ソフィアもシンシアも泣きそうな顔をしており、クレイの部下達も沈痛な面持ちだ。


「今まで兄上を支えてきた者達が敵になるのですよ。彼らの気持ちを考えないのですか?」


「俺は……」


「わかった、クレイとは手を切る」


 クレイが言葉を発する前にオレは宣言した。


 何を口走ろうとしたかオレには予想がついたからだ。

 けど、それをこの場で言わせてはならなかった、絶対にだ。


 もうこれ以上、オレのせいでみんなが傷つくのは見たくなかった。


「……リデル?」


 クレイが呆然とした表情でオレを見る。


「クレイ、ありがとう。気持ちは嬉しいよ。けど、オレの意見も聞いてくれ。お前に一方的に決められてもオレが困る」


「いや、しかし……」


「いいんだ。オレは何とかなる。それより身内同士が争うのはよくないと思う……というわけでクレイの弟さん、オレはクレイと……」


 『別れるよ』とはっきり言いたかったけど、何かがこみ上げてきて最後まで口にできなかった。

凹んでます。盛大に凹んでます(>_<)

前回、大変厳しい感想をいただき、さらにリアルでもいろいろあり、心が折れかけてます。

ごもっともの意見でしたし、人気の無いのも自覚してましたので、前向きにいけると思ってましたが、意外と堪えています。豆腐メンタルなんでw

まあ、自己満足な作品ですが、読者の皆様にもそれなりに楽しんでもらえてると思っていたのですが……。

す、すみません……愚痴ってしまって。


来週、月曜から再入院です。来週の更新はお休みするかもしれません。

それどころか、しばらくお休みしたらごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=687025585&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ