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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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血統裁判……⑧

 すると、ガートルードは口に出すのも嫌そうに答えた。


「あの男が何者か、私もよく知りませんの。ただ、身分の卑しい傭兵稼業をしていた男と聞いています」 


 元々は傭兵。

 オレの脳裏に浮かぶ親父のイメージは傭兵として働く姿だ。

 ぐうたらでいいかげんな性格、人懐っこい庶民的な親しみやすさ、ちっとも強そうに見えないけど、その強さは実は折り紙つき。まさにオレの親父は傭兵稼業にうってつけの男と言って良かった。


 実際、親父が皇帝陛下だったと聞いたときも、正直あまりピンと来なかったのも事実だ。どうしても、あの親父と、賢帝として世に喧伝されている皇帝とのイメージが一致しなくて、ずっと違和感が拭いきれなかった。けど、皇帝が仮の姿で、傭兵が本来の姿であるなら、妙に納得がいく。


「怖れながらお尋ねしますが、お二人はいつ入れ替わったのですか? 本物のデュラント四世陛下は今何処に……」


「お父様は、すでに亡くなりました。お父様のお傍に仕えていたお母様が私を産んでからしばらくして、病を拗らせ失意の内に、お父様はこの世を去ったのです。最後まで、皇帝の座に返り咲くことを諦めてはいませんでした。ですから、私は幼い頃から、お父様の復権を目標に生きてきたのです」


 ガートルードは悔しげにオレを睨みつける。


「それなのに、私が外国に行っている隙に、あろうことかあの男の娘が皇女に収まってるなんて……怒りと悔しさに我を忘れそうでしたわ」


 そこで、脇に控えているアレクサンドラとワトスンの二人を見て、少し表情を和らげる。


「幸い、多くの協力者のおかげで、こうして偽皇女を排除し、正当な地位につくことが出来ましたわ。これも正しい者に対する天の思し召しに違いありません」


 そこでパティオの視線に気付くと苦笑いしながら、もう一つの質問に答える。


「パティオの知りたがっている入れ替わった経緯については私も詳しく存じませんの。ただ、デュラント三世が、公務に出られないお父様の替え玉として瓜二つのあの男を雇ったのが発端と聞いています」


 ガートルードが事の顛末を説明し終えると、天帝の間は沈黙に包まれる。あまりに荒唐無稽な話に、普段なら一笑に付すところだが、鑑定結果がその内容が真実であることを裏付けていて、誰も否定することができなかったのだ。


「パティオ、結果も出たことですし、そろそろ閉廷してはどうかしら」


 言葉を失っている一同を尻目に、ガートルードは『血統裁判』の終了を提案した。



「ちょっと待ってくれ。俺は納得していない」


 今まで沈黙していたクレイが、その提案に待ったをかける。


「貴方は……確かゴルドー商会の放蕩息子でしたね。責務を放り出して女にうつつを抜かしているとの噂の……」


「俺のことはどうでもいい。それより鑑定の話だ。アエル、俺が昔聞いた話だが、血の病気を患った際に大掛かりな治癒魔法を施すと血の根本が変化することがあるそうだな。それは事実か?」


「ソレハ本当。血ノ構成ガ全ク変ワル例ヲ聞イタコトアル」


「そうだろう。そして、俺の調べた記録によるとアイル皇子は10歳の時、大病に罹り大規模な魔法治癒を受けている。その際、血が変化した可能性が否めない。どう思う、アエル」


「可能性ハナイトハ、言エナイ。デモ、カナリ低イ」


「だが、可能性が無いわけじゃない……」


「本当に見苦しい悪あがきだこと」


 必死に抵抗するクレイにガートルードは冷笑を浴びせる。


「そんな、塵のような可能性に縋るなんて惨めにもほどがありますわ」


「何とでも言え。俺は諦めない」


 ……クレイ、頑張ってくれるのは嬉しいけど、もう無理しなくても……。


「まあ、良いでしょう。その屁理屈がいつまで続くかしらね……ところで、前尚書令ラーデガルト」


「ほう、私に何か御用でございますかな?」


 帝国参事会の一員で、前尚書令(行政府の前のトップ)のラーデガルドが席を立つ。


 白髪で白髭を蓄えていてふくろうめいた容貌から、オレが脳内で『梟爺さん』と名付けた人物だ。好々爺に見えるが、実績を考えると決して侮れない老人と言えた。


「貴方に一つ質問しますが、よろしくて?」


「何なりと、今もっとも皇女に近しい方」

 

「では、問います。デュラント四世は『皇帝御璽』を使用したことがありましたか?」


「ええ、もちろんですとも」


「本当ですか? よく思い出して下さい。思い込みではありませんか?」


「思い違いなどは…………む、ちょっと待ってください……いや、まさかそんなことが……」


「間違いなく一度も使っていないと思います。さて、諸君……」


 ラーデガルトの狼狽からガートルードの言ったことが事実のようだと皆が認めると、ガートルードは一同を見渡して満足そうに言った。


「デュラント四世は諸外国との関係に調和を持って臨み、内政を重視し、様々な制度改革を行い、帝国を安定させた賢帝として評価されていますが、実態は違います。国外政策をしたくともできなかったのが真実なのです」


 ガートルードは一呼吸おいて続けた。


「あの男は自身の『護りの紅玉』を持っていないがために『皇帝御璽』を使えなかった。すなわち、国事行為である『宣戦布告』も『条約締結』も行えなかっただけなのですわ」


どんどん旗色が悪くなるリデルさんでしたw

ガートルードのターンはいつまで続くのか(>_<)

さ、裁判が終わらない。

また、長くなりそう(←すでに長い)

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