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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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血統裁判……⑦

 憮然として声の方を見ると、ガートルードが可笑しさを堪え切れないように笑い続けていた。


「何が可笑しい?」


 思わず怒りの混じった声でオレはガートルードを睨みつけた。

 オレの視線に気付いたガートルードはゆっくり笑いを収めると、見下したような態度で答える。


「これが笑わずにはいられませんわ。裁判を望んだ貴女の方が負けてしまうなんて。しかも、それを認めることが出来ずに悪あがきをするなど……見苦しいにもほどがありますわ」


 ガートルードの言葉は、鋭いやいばのようにオレの心を切り裂いた。


 確かに彼女の言うとおりだ。

 オレが、わざわざアリスリーゼからアエルを呼び寄せて『血統裁判』をお願いしたにも関わらず、意に沿わぬ結果が出たからと言って、アエルの出した鑑定結果を認められないでいるのは、恥ずべき行為と言えた。

 アエルはいつだって公平だ。だから、結果を素直に受け入れるべきだとオレも思う。

 けど、どうにも腑に落ちない点があり、オレはアエルに再度確認する。


「アエル、デュラント四世の娘がガートルードだと言う君の鑑定結果を素直に受け入れるよ。けど、前の鑑定結果も変わらないというのは、それと矛盾してないか?」


 オレは事前に鑑定したことがバレても構わないつもりで、不合理な点を追及した。


「何モ、問題ハナイ。言ッタコトハ全部、正シイ」


「でも、それだと……」


 オレの不服そうな表情に対し、アエルは不思議そうな顔をする。 


「何故、悩ム? 剣ニ付着シタ血ノ持チ主トりでるハ親子、紅玉ノ血ノ持チ主トガートルードハ親子。タダ、ソレダケ」


 ただ、それだけだって?


 アエルの言い方だと、剣の血の主つまり親父と、護りの紅玉の血の主は別人って聞こえるのだけど。でも、あの『護りの紅玉』は親父が皇位継承者として『刻血の儀』の折に作った物の筈だ。別人の物である訳がない。


「あら、アエル裁定官の言ってることに間違いないですわよ」


 意味が分からず、オレがまたもや混乱していると、不意にガトルードが口を挟んだ。


「間違いないって? あんたにはアエルの言っていることの意味が分かるのか?」


「分かりますわ、もちろん」


 ガートルードは当たり前と言う顔をしながら、吐き捨てるように言った。


「貴女の薄汚い父親が、私の父を亡き者にし、皇帝に成り済ましていたってことですわ」



 


「ごめん、ガートルード。今、何て言ったんだ? 悪いけど、もう一度言ってくれないか」


 ガートルードの発言が信じられず、オレは怒りより先に疑念が生まれ、恐る恐る聞き返す。  


「貴女、頭は悪いと思っていましたけど、耳も悪いようですわね」


 小馬鹿にした表情を見せながら、ガートルードは先ほどの台詞を繰り返す。


「貴女の卑怯で下劣な父親が、私のお父様から皇帝の座を奪い取ったと言いましたのよ」


 どうやら、ガートルードの主張は、オレだけでなく親父も偽皇帝だったと言いたいらしい。


 ガートルードの発言に、天帝の間は蜂の巣を叩いたような大騒ぎになった。皆、ガートルードの言った言葉が信じられないようだ。


「あの聡明で武略に秀でたデュラント四世が偽者だと?」


「ありえん。そんな馬鹿なことが……」


「偽物の才覚ではなかったぞ」


「しかし、裁定官の鑑定結果はどうなる」


 帝国参事会の面々も半信半疑で、結論が見出せない状況のようだった。なので、中立の立場のパティオが、皆を代表してガートルードに更なる説明を求めた。


「ガートルード様、しばしお待ちを……。貴女様のお話はにわかには信じらない内容です。ぜひ、詳しい説明をお願いしたいのですが……」


「いいでしょう。確かに、頭の悪い連中が真実を理解するには、順を追って説明する必要があるようですね」


 ガートルードは台座の前に立ち、オレを含めた参加者一同に向き直ると、これまでの経緯を話し始める。この場の主導権は完全にガートルードのものとなり、『血統裁判』は思ってもいない方向に進んでいった。




「私のお父様、アイル・アルブレヒト・イオ・デュラントはデュラント三世の長子として生を受けました。しかし、赤子の時より病弱で、成人を待たずして命尽きるのではないかと皆、噂していたそうです。幸い、病気がちではありましたが、無事に成長を続け、七歳となり『刻血の儀』を迎えることもできました。さきほど、アエル裁定官が『皇帝は病気だったのか』と質問されましたが、まさに真実を言い当てていたと言って良いでしょう」


 静まり返った場の雰囲気を見渡してから、ガートルードは続ける。


「すなわち、『刻血の儀』を行ったのは私のお父様のアイル皇子だった訳ですから、鑑定の結果が親娘と出るのは、至極当然の結果でしょう」


「ガ、ガートルード様。鑑定結果の出た理由はわかりました。では、本物のアイル皇子……デュラント四世はどうなったのですか。それとデュラント四世を名乗っていたお方は……リデル様のお父上は、いったいどこの誰なのですか?」


 パティオが声を震わせながら、この場にいる全員が聞きたい質問をガートルードにぶつける。


徐々に明かされていくリデルパパの過去。

『血統裁判』もいよいよ終盤です。

はたして、リデルの進退はどうなるのか……。


作者のモチベのために、ぜひ感想を(>_<)

できれば、誰かレビューを(切実)

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