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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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再び……⑦

「お帰りなさいませ、アリシア皇女殿下様。再び、お目にかかれて嬉しく存じます」


 久しぶりに会ったルータミナ大神官は満面の笑みでオレを迎えてくれた。


「ルータミナも元気そうで何よりだね」


「はい、皆のおかげで大神官という大役をつつが無く勤めることができ感謝の念に堪えません」


 隣にいるウィンラットがピクリと顔を強張らせる。


 普通の人が言ったら、北方大神殿の実権を五正会に牛耳られている現状に対する皮肉と取られるに違いないが、ルータミナはおそらく本心で言っていると思われた。

 一見、天然に見えるが、どうして肝が据わっていて、なかなかに侮れない。心根が優しく謙虚な性格だが、いざという時には一歩も引かない豪胆さと他者を圧倒する峻烈さを持ち合わせているようにオレには思えた。

 外見は、まるきり違うが、やはりあの勇猛なウェステリィオ海軍司令長官の娘だ。今も、オレの突然の来訪を危惧するどころか、素直に再会できて喜んでいるだけに見える。

 半分は本心だろうが、残りの半分はどうだろう。


「ルータミナ、帝都の状況は聞いた?」


「ええ、パティオ大神官から伺っております。ご心労いかばかりかと存じます」


「それなら、いいけど。でも、その……ホントにいいの? オレのこと、今までと同じ扱いで。オレが本物の皇女かどうかわからないんだよ」


「そこのところが、よくわからないのですが、向こうが力ずくで皇女を名乗っているのでしょう? 貴女様が偽者である証拠があるわけでもありませんし、向こうが本物である確証も見ていません」


「でも……」


「それに私たちは貴女様の人となりをよく存じ上げておりますが、新しく皇女を名乗る人物については存じ上げません。であるならば、私たち北方大神殿は、ことがはっきりするまでは、今までどおり貴女様を皇女殿下として敬っていく所存でございます」


 横で、しきりに頷くウィンラットを見て、それが北方大神殿の総意とわかって、自然と目頭が熱くなる。応援してくれる彼女達のためにも、必ず真実を明らかにしなければならないと強く感じた。

 そのためには、どうしてもアエルの手助けがいる。


「ありがとう、ルータミナ。オレ、頑張るよ。でも、そのためには、どうしてもアエルの協力が必要なんだ。彼女に会わせてくれないか?」


「それは、もちろんですとも。すでに旅支度を進めているはずです」


「そうなんだ。けど、アエルにはオレの口から、もう一度しっかりお願いしたいと思ってるんだ」


「では、こちらにお呼びしましょう」


「いや、オレが出向いた方が早い。どこにいるか教えてくれる?」


 ルータミナはオレの性急さに口元を綻ばせた。




 次の予定の決まっている公務の忙しいルータミナと、一緒に来ると言って聞かないウィンラットを理由をつけて残し、オレは指示された部屋に向った。

 広い神殿の中、迷いつつもようやくアエル達がいるという部屋の前にたどり着くと、ちょうど扉が開き、アエル達が出てくるところに出くわす。

 向こうも支度を済ませてオレに会いに行こうとしたところのようだ。


「リデル、オカエリ。マタ、会エテ、嬉シイ」


「アエル、久しぶりだね。オレも嬉しいよ」


 例の擬装用の帽子を被り、いつものようにシックな黒のドレスを着たアエルは、中央大神殿なら間違いなく場違いな格好で悪目立ちしたところだろうが、妙な出で立ちの者が多い北方大神殿ここでは、あまり目立たずに済んでいた。

 こうしてみると、アエルが逗留する場所として北方大神殿は最適だったかもしれない。けど、これから赴く中央大神殿では逆に浮きまくる存在になることは間違いないだろう。

 それを強要すると思うと、申し訳なさと心苦しさを禁じえなかった。


「ご無沙汰しております、アリシア皇女殿下様」


 アエルに影のように付き従う、中央大神殿の元正神官で現在はアエルの執事を勤めるジルコークが深々と頭を下げる。


「ご無沙汰です、ジルコークさん。あの……ここでは目立ちますので、一旦部屋に戻りませんか」


「おお、申し訳ございません。これは考えが足りませんでした。では、こちらに……」


 ジルコークが先に立ってオレをはアエル達の部屋へと案内する。

 部屋に入ったオレは、改めて再会を祝したあと、これまでの経緯とオレの置かれている状況について簡単に説明を行った。


「……現状は今、話したとおりだ。宮殿は占拠され、ユク達は人質に取られている。はっきり言って極めて厳しい状況と言っていい……だから」


 オレはアエルに向き直ると、頭を下げてお願いする。


「アエル、君に帝都まで来て欲しいんだ。オレは偽皇女と『血統裁判』を開こうと思っている。それには『血統裁定官』である君の助けが必要なんだ」


 オレは頭を下げたまま、アエルの反応を待つ。


 すると、アエルが傍らに寄って来て、そっとオレの肩を抱いて言った。


「アエル……協力スル。一緒ニ、帝都行ク」


「アエル……」


 オレが顔を上げると、例の目玉がオレを覗き込んでいる。


「ありがとう、とても嬉しいよ」


 オレが礼を口にすると、それに答える目玉の光が少し優しくなったような気がした。


年末年始だけでなく、家庭の事情で更新をしばらくお休みさせていただきます。

なるべく早く復帰したいと思っていますが、厳しい状況です。

申し訳ありません。

それでは皆様方も良いお年を。

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