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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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再び……⑥

「あの……ごめん。お願いしたいことがあるんだけど……」


「あら、女の子だったんですね」


「まあ、一応そうかな」


 背格好と声でオレが女であることに気付くと、警戒していた神官のお姉さんは明らかにホッとしたように見えた。

 やはり、不審人物だと思っていたらしい。


「一応? 普通に女の子のように見えますが……それで、お願い事はなんですか。祈願するなら、祭壇で行っておりますので、受付いたしますよ。もちろん、お布施をなさった方がご利益があると思いますが……」


 お姉さんはオレの返答に小首を傾げながらも、神殿の宣伝を忘れない。


「いや、そうじゃなくて、ここで働いている友達に会いに来たんで、取次ぎをお願いしたいんだ」


 オレは少し悪戯心を起こし、身分を隠して言ってみる。


「ああ、神殿にお知り合いがいるのですね。かまいませんよ、お名前を伺っても?」


 神殿に友人がいるとわかって、お姉さんはさらに気を許したようだ。


「ルータミナにリデルが会いに来たと伝えて欲しいんだけど」


「ルータミナ? そんな名前の、いたかしら」


 オレを礼儀も知らない年端のいかない女の子と思い、そのオレの友人だから見習いか何かと勘違いしたみたいだ。


「ちなみに家名はウェステリオって言うんだけど」


「まあ、家名があるの。ルータミナ・ウェステリオね…………ルータミナ・ウェ……え? それって、まさかルータミナ大神官様のことじゃ……」


「なんだ、知ってるんじゃないか。そのルータミナだよ」


「お、大人をからかうんじゃ、ありません!」


 お姉さんは、オレにからかわれたと思い、恥ずかしさから顔を真っ赤にして怒る。


 しまった、少し冗談が過ぎたようだ。


「神官様、ごめんなさい。悪気はなかったんだ。ただ、お姉さんが可愛かったものだから、つい悪戯心がわいてしまって……」


「それが謝っている態度ですか? それに嘘をつくなら、もっとましな嘘をつきなさい」


「いや、ルータミナと友達なのは本当のことなんだ」


 オレは、パティオから預かってきたルータミナ宛の書状をお姉さんに手渡す。

 神官のお姉さんは「まだ、そんな嘘を」と憤慨しながら、書状を受け取って開いたところで、固まった。


「そ、そんな……こんなことって」


 書状が本物であることが判り、お姉さんは今までの会話を思い返しているようだ。


「だから、本当なんだってっば。悪いけど、取り次いでもらえるかな」


「た、ただ今、すぐに!」


 お姉さんは脱兎のごとく、神殿の中へ走り去って行った。

 悪いことしちゃったなと、オレは深く反省して見送る。



 待つことしばらく、神殿の廊下をかなりの勢いで走る足音が聞こえてくる。

 神殿内を走るのは厳禁だったはずだけど、と思っているオレの前に息せき切って現れたのはウィンラット正神官だった。


 彼は北方大神殿を運営する五正会の筆頭であり、ルータミナに次ぐ地位、いや実質上の北方大神殿の統括者と言っていい。

 最初、オレに対して否定的な立場を取っていたが、オレの正体が皇女とわかると、この世の終わりを迎えたように悲観していたが、その態度を許してやってからは逆に熱烈なオレの支持者になった男だ。


「はぁはぁ……アリシア皇女殿下、再びの北方大神殿への来訪、誠に光栄に存じます!」


「し――っ! 声が大きい。ここ、大神殿の入り口だから」


「はて、むろん承知しておりますが?」


「あ――もう、わかってないんだから、とにかく中へ入ろう」


「はい、仰せのままに、皇女殿下」


 全然、わかってない。


 オレは周りを気にしながら大神殿に入る。

 幸運にも人影は見えない。

 安堵しながら、後ろにつき従うウィンラットに話しかける。


「ルータミナに会いに来たんだけど」


「はい、貴賓室でお待ちになっております」


「ありがとう。それにしても、わざわざ正神官自ら出迎えてくれなくても良かったんじゃない?」


「何を仰います。殿下をお迎えに上がるお役目を他の何人なんぴとに譲ることが出来ましょうか」


「はあ……」


 そんな大層なことだろうか。

 にしても、40過ぎたおっさんが少年のようなキラキラした目でオレを見つめてくるのは勘弁して欲しい。


「本当はルータミナ大神官が自らお出迎えするというのを必死でお止めしたのです。全く、あの方は自分のお立場がわかってらっしゃらない」


 いやいや、あなたも他人のこと言えないから。


「え~と、オレが出発したあと、何か変化あったのかな?」


 帝都と連動してバール商会がアリスリーゼで何か動きを見せているか気になって聞いてみる。


「そうですな。皇女殿下の支援を行うということでレイモンド統治官と利害の一致を見て、長年の対立が解消されたことが一番の変化でしょうか」


 そうか、オレが橋渡しになって両者が歩み寄ることが出来たなら、オレがここに来た甲斐があったものだ。


「……帝都での話は聞いた?」


 権威主義のウィンラット的には帝都での政変はどう感じたのだろう。


「そのお話はルータミナ大神官も交えて、あとでお話しましょう」


 オレの問いかけに対し、ウィンラットは少し表情を固くして、そう答えた。


体調を崩していることもあり、年末年始の更新はお休みするかもしれません。

長期休みに入るとアクセス数が増えるので、頑張りたいところですが、身体が言うことを聞きません(>_<)

皆様も風邪などにお気をつけくださいね。

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