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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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師匠と弟子の間に……⑧

(ああ、あれですか。宮殿の宝物庫にあったものですが……)


「え、大丈夫なの? あんな凄い神具を勝手に持ち出して」


(それは、もちろん大丈夫です。ちゃんと宝物管理局の許可を得ていますから。と言うより、逆に頼まれて持ち出しているのです)


「頼まれて持ち出してる?……どういうこと?」


(はい、あの神具はⅡ類神具に分類され、宝物庫でずっと厳重に保管されていたのですが、略伝や使用法等の書かれた書物が戦争か火災で、散逸あるいは焼失していたため詳細がわからず、長年謎の神具として取り扱われてきたのだそうです。しかし、宝物管理局としては、管理方法や保管場所の問題から、本当にⅡ類神具としての価値があるのか見定めたいと常々考えていたようなのです。そこで、大魔法使いである私に鑑定を依頼してきたという訳です)


 本来なら、宰相補という帝国の重鎮に神具の鑑定を依頼する宝物管理局もどうかと思うけど、この場合は適材適所と言っていいだろう。実際、ケルヴィンに丸投げして、他に仕事してなかったし……。


「じゃあ、ああして使えてるってことは解析できたってことなんだね」


 オレが気軽に言うとトルペンは憤慨した。


(そんな簡単な話ではなかったのです。何の手がかりも情報も無く解析には多くの時間と労力が必要でした)


 思念からも当時の苦労が滲み出ていた。


(Ⅱ類神具であること、対になったタペストリーから魔力の残滓が感じられたこと、元々は皇帝の寝所に置かれていたらしいこと……そのあたりから解析の糸口を見出そうとしたのですが、結果は芳しいものではありませんでした)


「ボクが弟子入りした時……執務室の壁に吊るしたまま放置されてた」


(面目ございません。あの頃はリデル様のことやいろいろなことが重なり、それどころでは無かったのです)


 ああ、ごめん。確かに、あの頃はバタバタして迷惑かけたかもしれない。


 でも、なんとなくその前から放置されていたように感じるけど、言わないでおこう。おそらく、研究者としては、解析できずに放置していたというのは認めたくない事実に違いない。


(しかしながら、そんな息詰まっていた研究が一気に進んだのも、弟子にしたノルティのおかげでした)


 ノルティが?


「えっへん、さすがボク」


 ちらりと見るとノルティは得意げに無い胸を張っていた。


「ノルティのお手柄かぁ、とても信じられないけど」


「むぅ、リデル、いじわるです」


 オレがからかうと、ノルティはオレに近づき、ポカポカ叩くような仕草を見せる。

 まるで子犬がじゃれついて来るようで、とても可愛らしかった。

 オレに対して、ちょっと変態気味なところはあるけど、こういうところがあるから憎めないんだな。


(こほん……仲睦まじく戯れる姿を見るのは心温まる光景ですが、今は時間がありません。話を続けてもよろしいですか)


 蚊帳の外のトルペンが話の先を促す。


 っていうか、心の声なのに咳払いってなんなんだよ、トルペン。そういうところが、妙に人間ぽいというかオジサンっぽいんだから。


(あれはノルティを弟子にして、しばらく経った頃でしょうか……前にも話しましたと思いますが、宮殿には魔物や魔法を防ぐ結界が張られておりまして、私も宮殿から一旦、外へ出ないと転移出来ませんでした。けれど、ユクがその結界を壊してしまったせいで、宮殿のどこからでも跳べるようになったのです)


「ああ、その話はオレも聞いてるよ。ユクのために、ノルティと結界の再構築の研究をしてくれてるんだろう」


(その通りです。思いの外、難航していますが、必ずや成し遂げるつもりです……おっと、話が逸れました。続きを話しますね。そして、ある日のこと、ノルティと一緒に研究室で文献を解析している時に、不意に急用を思い出しまして、私はその場から転移しました)


「否……師匠は研究に煮詰まると、すぐに転移で逃げ出す……いつものこと」


(いえノルティ、あの時は本当に用事を思い出したのですよ)


 恒常的に転移で現実逃避することは否定しないんだ。


(と、とにかく私が転移した後に、ノルティが重大な手がかりを発見してくれたのです)


「重大な手がかり?」


「ん、極めて重大なてがかり。息詰まった師匠は、いつものように部屋を散らかしたまま、どこかへ跳んで行ってしまったので、ボクは部屋の片付けと掃除をしてた。その時のこと……」


 へえ、ノルティも一応、弟子らしいことをしてたんだ。そういうのって、ノルティ凄く苦手だと思い込んでいた。弟子になって、少しは成長しているのかもしれない。


「魔力を感じて、ふと目を向ければ、放置されていた例のタスペトリーが怪しく光っているのを見つけた……」


 怪しく光るタペストリー……ちょっと見たくない光景だな。

 ほら、霊的な何かを連想しそうだろ。


 けど、それのどこが重大な手がかりか、さっぱりわからなかったので、黙って二人の話に耳を傾ける。


(帰宅した私はノルティから、その話を聞いて愕然としました。今まで魔法的な解析も何度も繰り返してきましたが、転移魔法と結びつける考えには至らなかったのです。早速、転移魔法を発動させてみると確かに反応するではありませんか)


「そうそう、ボクの目、間違ってなかった」


 二人とも当時のことを思い出したのか興奮気味だ。


「で、結局どういうことなんだ。素人のオレにもわかるように説明してくれ」


(はい、つまりですね。この神具は二つのタペストリーの間に転移魔法をパーマネント(恒常化)し、瞬時に行き来することを可能にする神具なのです)


「それって、この世界の根幹を揺るがす大発明なんじゃないのか」


 オレでさえ、その応用性を考えると背筋が寒くなるほどだ。


(完全に恒久化できるなら、確かにそうでしょう。ただ、残念なことに、この神具は一時的な期間しか効果を発揮できないのです。すなわち転移魔法を会得した魔法使いが転移魔法をチャージする必要があった訳です)


「それじゃ……」


(はい、転移魔法の使用者がいなければ、宝の持ち腐れと言っていいでしょう。付け加えるなら、ここ数十年、私以外に転移魔法を使う者を見たことありません)


 道理で宝物庫で埃を被っていた訳だ。


 たまたまトルペンがいるから、ものすごく有用だけど、そうでないなら何の役にも立たないガラクタ同然なのだ。

 まあ、インテリアとしての価値はあるかもしれないけど。


(元々は皇帝陛下の帝都脱出用の神具であったのでしょうが、魔法が切れて使えなくなり宝物庫に仕舞われ、いつしかその効力を知る者もいなくなった……そんなところでしょう)


「ありがとう、よくわかったよ。それで、トルペンが脱出する際、ちょうど研究室にあったんで、こうして持ち出して来てくれたって訳なんだな」


(ええ、そのとおりです。現段階で、この神具を有効活用できるのは私しか居りませんので)


 開き直って言ってるけど、宮殿外への無断持ち出しは、きっと禁止事項に違いない。法律的にはアウトだけど、オレ達にとってこれは僥倖に他ならない。


「一応、確認するけど、さっきトルペンの転移は魔法じゃなくて、竜固有の能力だって言ってたけど、その神具にチャージは可能だったの?」


(はい、理屈はわかりませんが、ちゃんとチャージできるようです。現にこうして使えていますし……)


 そうなんだ。ということは……。


「なあトルペン。オレ、思いついたことがあるんだけど……」



今回は長めとなっております。いつもの1.5倍です(当社比)w

水曜更新が諸事情で行えなくなりそうなので、多めの更新となっています。

お許しください。


いよいよ12月になり、仕事もプライベートも激忙しくなりそうです。

不定期になったら、ごめんなさい。


私も体調が下降気味ですし、左手は痛いままですが、読者の皆様も、体調にはお気をつけくださいね。

がんばって年末進行を乗り切りましょう!


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