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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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師匠と弟子の間に……⑤


「え? おい、ノルティ……」


 オレが声をかける間もなく、ノルティに腕を掴まれ引きずり込まれる形でタペストリーに吸い込まれる。


「リデル!」


 クレイの焦って叫ぶ声を後ろに聞きながら、オレはノルティと一緒に向こう側に転がり込んだ。

 一瞬の浮遊感のあと、バランスを崩しながらも両足で踏ん張って転倒を防ぐ。


 良かった、どうやらしっかり地面はあるようだ。


 オレはかろうじて転ばずに済んだが、手を繋いでいたノルティは耐えられるわけなく、大きくバランスを崩して、こちらに倒れかけたので、抱きとめてやる。


「ノルティ、ここはもしかしてイスケルド城なのか?」


 これ幸いと、ひしと抱きついているノルティに尋ねる。


「そう……あのイスケルド」


 うひゃ、ノルティ。耳元で囁くなって、くすぐったいから。

 と言いつつ、ノルティの返答を聞いたオレは周囲を見回した。


 かなり広い空間だ。

 でも、確かに見覚えがある。


 ここは皇女候補生の最終試練の場で、イスケルド城の屋内闘技場跡だ。

 竜形態のトルペンと闘った場所でもある。


 ふと気がついて、振り向くとオレ達が潜り抜けてきた位置には、サウルスさんの部屋にあったものと同じタペストリーが掛けられていた。

 ノルティの言ったとおり神具に間違いないだろう。それにしても、別々の場所を繋げるなんて、とんでもない神具があったもんだ。


 …………待てよ、これがあったらアリスリーゼにだって、一瞬で行けたんじゃないか?


 前にトルペンに転移魔法があれば、アリスリーゼに簡単に行けるんじゃない? と聞いたところ、転移魔法は術者本人だけが、術者の知っている場所にしか跳べないから無理という返事をもらって、利用を断念した覚えがある。

 でもこれなら、誰でも簡単に遠距離を転移できるのでは……。


 何だか、急に脱力感に苛まれながら、オレは抱きついているノルティを地面に降ろす。

 ノルティは幼子のように降りるのを嫌がったが、オレの腕力に適うすべも無い。


「むうっ……リデル成分が全く足りてない」


 リデル成分とやらが今一よくわからなかったけど、さくっと無視して、オレは肝心なことをノルティに聞く。


「トルペンはどこにいるんだ?」


 オレの質問にノルティは目線を遠くに向けて答える。


「あそこ……」


 ノルティの目線を追うと、闘技場の中央に巨大なボールのような物が置かれているの見えた。

 近づいて目を凝らして見ると、半透明の青白い球体の中に、ここで闘った竜形態のトルペンがいるようだ。


「トルペン、大丈夫か?」


(リデル様、お帰りなさいませ。こんな状態での再会、大変心苦しく思いますが、ご無事での帰還を心より嬉しく存じます)


 いきなり、頭の中にトルペンのものとおぼしき声が響く。


「この声、トルペンのものなのか?」


(はい、そうです。完全に竜形態となっているので、言葉を発することができません。このような無作法をお許しください。ただ、聞く方は普通に聞こえますので、リデル様はそのままお話いただいて構いません)


「わかった……けど、トルペンって心の声で話すとき、普通に話せるんだな」


(申し訳ありません。口惜しいことに、思ったことを思念で送ってしまうので、いつもの会話のような美しい技巧を凝らすことができないのです)


 いやいや、普通にしゃべれるんだったら、こっちの方が絶対聞きやすいから。


 申し訳なさそうなトルペンに内心、そう思ったけど、オレはそれよりも聞きたいことを優先する。


「それでトルペン、謁見の間でいったい何が起きたんだ。ソフィアからある程度の状況は聞いているけど、詳しい情報を聞かせてくれ」


(もちろんでございます)


 トルペンは謁見の間で起こった出来事の一部始終を語ってくれた。





(……という訳で人間形態を維持できなくなった私は、ユク達を残して転移で脱出したのです。その後はノルティがリデル様に語ったとおりです)


「ありがとう、よくわかったよ。そうか……ガートルードか」


 ソフィアの報告で、イクスの妹がガートルードを名乗っていたのは聞いていたけど、トルペンの話で、やはりオレがシトリカで出会ったあの怪しい娘と同一人物であると思って間違いないだろう。

 理由はわからないが、妙にオレに対して敵対的だったのを覚えている。帝都に赴き、皇女に謁見すると、あの時にも言っていたけど、まさかこんなことを企てていたとはね。


「けど、トルペンと真っ向から闘って退けさせる相手なんて、闘って勝ったオレが言うのも何だけど、かなり人間離れしてると思うぞ」


(はい、それは間違いありません。こちらの体調が万全ではなかったとはいえ、並みの人間とは言えない実力でしょう)


 三対一だったら、オレでも苦戦は免れないだろう。それに魔法使いというのも、かなり厄介な相手と言っていい。

 魔法について対抗手段の無いクレイやヒューでは遅れを取る可能性も高い。


短めですみません。

リアルがちょっと忙しくて、時間が取れません。

11月も後半で、うかうかしていたら、あっという間に今年が終わってしまいそうな気がします。

お互い、気を引き締めて頑張りましょう!


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