師匠と弟子の間に……②
「あんた、女の子だったんだ」
「一応、そうみたい」
「何がそうみたいよ。あんたぐらい美人だったら、あたしの人生楽勝だったのに……」
アリィは大きなため息をつく。
「それにノルティの友達ってことは、そんな身なりをしていても、いいとこのお嬢さんなんでしょ?」
「まあ、そこそこにね」
やさぐれ感をあらわにしたアリィの反応にオレは不思議になって問いかける。
「さっきから、ノルティが絡んだ話になると、何だか機嫌悪くなるけど、何かあったの?」
「そりゃ機嫌も悪くなるわよ。この間、あの娘が転がり込んでくるまで、ここはあたしの家だと思い込んでいたんだから。帝都に持ち家があるんで、そこそこの資産家だと信じてたのに、まさか単なる管理人だなんて、笑うしかないじゃない」
そうか、サウルス館長が忘れるぐらい帰っていないんだから、アリィさんが勘違いするのも当然だ。
ノルティだって小さい頃は何度か帰ったかもしれないけど、その時子供だったアリィさんが詳しい事情を知る由もないことだろう。
おそらく、今回の緊急避難的な一時帰宅がなければ、今でも誤解していたに違いない。
やさぐれる気持ちも、わからないでもないけど、オレに八つ当たりされても困る。
ただ、この会話からここにノルティが帰って来ていることが確定したので、つんけんするのは大目に見てあげよう。
「ところで、そっちのお兄さんは、あんたの彼氏? ちょっと良い男ね」
「ち、違うよ、仕事の相棒さ」
クレイが口を開きかける前にオレは即答する。
「別に誤魔化さなくてもいいのに……やっぱり、この世は不公平だわ」
アリィさんは、急に落ち込んだような表情で呟く。
「あのノルティにだって彼氏がいるのに、何であたしには出来ないんだろう」
そこそこ可愛いしスタイルだって悪くないのに彼氏がいないのは、きっとその勝気な性格にあると思うよ。
でも安心していい。そういう女性が好きっていう男が一定数の割合で、きっといるはずだから。
まあ、万が一オレが男に戻ったとしても、ご遠慮申し上げるけど。
ただ、今のアリィの発言で、さらに判明したことがある。
ノルティの彼に間違えられる人物がいるとしたら、それはトルペン(少年バージョン)に間違いない。
ということは、トルペンもまたここに滞在してる公算が強まったと言えた。
「ねえ、アリィさん。ノルティの彼って……」
オレが核心に触れようとした時、湯茶の支度を終えたカレンさんが部屋に入って来た。
「お待たせしました。クレイさんとリデルさんでしたね」
お茶を入れ終えたカレンさんがオレ達の前に座ると、初めて見るオレの容姿に多少驚きながらも、にこやかに尋ねてくる。
「はい、さっきも言ったけどリデルと言います。ノルティとは皇女候補生の時から親しくさせてもらってます。こっちはオレの……仕事仲間のクレイです」
オレが紹介するとクレイも頭を下げる。
「畏まらなくて、結構ですのよ。さっきみたいに普通に話してくれても構いませんから」
「じゃあ、そうさせてもらうね。オレはノルティの友達で、ここに彼女が居るって聞いてやってきたんだ」
アリィさんの反応から、ここにノルティがいることを確信できたので、カレンさんには、かまをかけてみる。
「残念ですけど……」
え? ここにはいないって、しらばっくれるつもりなのか。
「それにお教えするには、幾つか質問に答えていただきたいのです」
「そ、そうなんだ。なら、何でも聞いてくれていいけど」
「カレンさん、後生ですからこいつにスリーサイズだけは聞かないでやってください」
「ク、クレイ!」
今まで大人しくしていたクレイがいきなりボケをかましたので、盛大に慌てる。
ガタッ。
あれ、どこかで何かの音がした気がするけど……。
「仲がよろしいんですね」
カレンさんは微笑ましそうにくすくす笑う。
「いえ、全然仲よろしくないです!」
「まあ、素直じゃないのね」
「カ、カレンさん……」
ちょっと捉えどころが無くて、ホントよくわからない女性だ。年齢を超えて可愛らしいけど。
「それでですね。実は、質問に答えることで貴女が本当にリデルさんなのか証明して欲しいのです」
なるほど。オレが本物かどうか確認したいわけだ。当然と言えば当然だが、証明と言われると少し困る。
傭兵の鑑札なら持っているが、今のオレの姿では、そもそも傭兵と言っても信用されない可能性がある。
「なので、本物の証明のために質問させていただきますね」
「あ……はい」
「では、一つ目の質問。貴女は今、お幾つですか?」
「17歳。あと少しで18歳になるとこ」
「正解! でも、そんなに大きかったんですね。もっと下だと思ってました」
は、ほっといてくれ。
発育不良はオレだって痛切に感じてるんだから。
「次に二つ目の質問。リデルさんがノルティちゃんと一緒に帝都で探し回ったものは?」
「え~と、トルペンの本」
「一応、正解です。正確にはトルペン著『聖石秘事伝承録』が正しいですが、構わないでしょう」
う~ん。何だか、そこはかとなくノルティの色が見える質問だ。
「では、最後の質問です」
カレンさんが、真面目な顔になったので、オレも身構える。
先週、風呂場でこけて死にかけましたw
滑って前のめりに転び、浴槽に頭から突っ込んで、ぶくぶくしました。
手がつけないと顔を上げるのって大変なんですね。
お年寄りが溺れるわけが、よくわかりました。
けど、左手を浴槽の外へ突いたせいで、浴槽のへり等に頭をぶつけなくて不幸中の幸いでした。
その代わり左手は酷い捻挫でシップだらけです。
右手だったら更新やばかったかもw
それよりも下手したらエタる危機だったので、今後は気をつけようと思います。
皆様もお気をつけくださいね。




