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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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帝都への帰還……①


「――と言うわけで、現れた偽皇女はケルヴィンと手を組んで、帝都を完全に掌握している模様です」


 ソフィアが無念そうな表情で現状を報告してくれる。


「それよりユクはどうなった? 無事でいるの、怪我なんかしてないよね……そうだ、傍にいたシンシアの安否は……とにかく、すぐ助けなきゃ……」


「リデル様、落ち着いてください。今、順を追って、ご説明いたしますので」


 オレが興奮してまくし立てるとソフィアは慰めるような口調で語りかける。


「そうですよ、リデル。焦る気持ちはわかりますが、貴女が慌てても問題の解決にはなりませんから」


 ヒューも心配げにオレを宥める。


「でも、ヒュー。ユクが皇女の身代わりをしていた件はオレのアリスリーゼ行きが原因だし……こうしている間に酷いことされてるかもしれない……いや、もしそうだったらオレは……」


「落ち着け、リデル」


 気が動転しているオレの肩をクレイが、がっしりと掴む。


「まず、今できることから考えるんだ。焦っても何一ついいことはないぞ」


「……う、うん」


 真っ直ぐクレイに見つめられ、いつもの声で優しく言われると、不思議に落ち着いてくる。

 

 そっか……オレってクレイの声が大好きだったんだな。だから、こんなにもしっくり来るのか。

 改めて、そう気付かされる。


 オレは気を落ち着かせるために、ゆっくりと息を吐くとソフィアに言った。


「ごめん、ソフィア。報告を続けて……」




 ソフィアの報告によると帝都は概ね次のような状況にある。


 偽皇女は、イクスの妹と目される女性と魔法使いとおぼしき女性以外にも多くの手勢を宮殿に連れて来ており、オレの部屋のあった中枢部の一角を占拠し我が物顔に振舞っているらしい。

 また、ケルヴィンと手を組んだことにより、宮殿内の近衛兵の指揮権の一部を有することになり、手勢と合わせたその武力を背景に、内政にも口を出し始めているとの話だ。


 はっきり言って、こと権力に限れば、帝都にいた頃のオレと比べて雲泥の差があると言って良かった。


 クレイ曰くそもそも「権力に対する志向がオレとは全く違う」のだそうだ。オレは権力から遠ざかりたい、関わりたくないと思っているのに対し、偽皇女は権力を持つことに執着心を持っているのだとか。

 まあ、それが良いことなのか悪いことなのかはオレにはわからないけど、オレにはとてもそうした志向は無理だと思った。


 オレの内心のわだかまりを余所にソフィアの報告が続き、肝心のユク達の動向についても、おおまかに伝わって来ていた。


 まず、ユクは怪我もなく元のオレの部屋に幽閉されているようだ。詳細は不明だが、どうやら酷い目にも遭わずに済んでいるようで安心した。

 シンシアも同様に無事で、引き続きユクの世話を続けてくれているとの話だ。


 ちなみに、曲がりなりにもオーリエはデイブレイクの、アレイラはケルヴィンの配下なので、そのまま宮殿で働き続けているようだ。オレの関係者だが、組織の一員なので、無体なことはされないと信じている。


 唯一、所在がわからないのはノルティで、行方を眩ましたトルペンと行動を共にしているらしい。



「以上で報告を終わります」


「ありがとう、ソフィア。状況はよくわかったよ」


 ソフィアからの報告を全て聞き終えたオレは部屋にいる仲間達を見渡した。

 オレ以外にいるのは、クレイとヒュー、それにソフィアだけだ。


 ちなみに今、オレ達がいるのは帝都の街壁の外に乱立する宿屋の一つ、例のごとくゴルドー商会絡みの宿屋の一室にいた。

 帝都に入る前に情報を交換し、今後について話し合うためだ。


「で、今後の方針なんだけど……オレとしてはユクとシンシアを助け出すことを最優先に考えたい」


「まあ、そう言うだろうな」


「ええ、リデルなら当然です」


 クレイとヒューが納得顔で答える。


「ソフィアの報告によると今はまだ安全でいるようだけど、今後はどうなるかはわからない。だから、一刻も早く救ってやりたいんだ。それに……」


「それに?」


 オレが唇を噛み締めるのを見てクレイは訝しげな顔になる。


「今回、ユクが酷い目に遭っているのは、ひとえにオレの浅はかな思いつきが原因だ。オレがアリシリーゼ行きを提案しなければ、ユクが皇女に化けることはなかったんだ。だから、オレにはユク達を助ける責任がある」


「責任があるかどうかは別問題として、アリスリーゼ行きは浅はかな思いつきじゃないと思うぞ。ケルヴィンや俺も認めているし、何よりアリスリーゼや帝国海軍を味方につけるという成果が上がっている」


「けど、肝心の帝都が取られたんじゃ本末転倒も良いとこじゃないか」


「リデル、今回の偽皇女の件は想定外のことです。あまり自分を責めるのは良くないと思いますよ」


 ヒューが心配そうに慰めてくれるが、オレは沈痛な面持ちで自分の考えを述べることにした。


「みんな……一つ言っておきたいことがあるんだ」


 オレの言葉にクレイは頷いて先を促す。


「クレイは怒るかもしれないけど、オレとしてはユク達が無事なら、皇女になれなくてもいいと思ってる」


 クレイは感情を見せずにオレをじっと見つめ、ヒューは達観した顔つきで微笑み、ソフィアは息を呑むのがわかった。


「もともと皇女になりたいと思っていた訳じゃないし、向いてないとも思う。新たに現れた皇女がシトリカであったガートルードなら、オレよりずっと上手くやれるかもしれないしね」


 もっともオレを目の敵にしていたから、皇女になったらオレを亡き者にする可能性は否めないけど。


新章です!

お待たせしました、リデルくんがとうとう帰ってきましたw

このまま失踪するんじゃないかと、ドキドキしてましたよ(>_<)


とにかく、ユク達の身柄が気になります。

はたしてリデルはどう動くのか、お楽しみに (T_T)/~~~


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