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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
388/655

再び、北方大神殿……⑦


「それじゃ、オレ達はそろそろ……」


 心残りだった『血統裁定官』の件も何とか片付いたので、そろそろレイモンドの屋敷に戻ろうと立ち上がると、アエルがオレの服の裾を引っ張る。


「リデル……モウ、カエル?」


「うん、アエルとも話せたし、ジルコークさんの長年の懸案にも解決の目途がつきそうだし、レイモンド邸に帰るよ」


「レイモンド、チガウ……テイトニ、カエルン?」


「ん? ああ、レイモンド邸にじゃなくて、帝都に帰るかって聞いたの?」


「ソウ……」


「そうだね。アリスリーゼでしなきゃいけないことも大体済んだし、帝都で首を長くして待ってる人達もいるから、急いで帰らないとね」


 特にケルヴィンは怒り心頭で待ってるはずだ。当初の予定ではこんなに長くなると思っていなかったに違いない。


「……アエル……サミシイ」


 オレの返答に例の目玉もしゅんとうなだれる。

 目は口ほどにものを言うって言うけど、アエルの場合は比喩ではなく現実にそうなんだと微笑ましく感じられた。


 なので、にっこり笑って約束してあげる。


「絶対、また会いに来るよ……安心して。だって、ここはオレの領地なんだから」



◇◆◇◆



「だから、そんなに機嫌損ねないでくださいって……」


 オレが、ひたすら平身低頭を繰り返しても、扉越しの相手はまったく聞き入れる気配もない。


「そうですよ。それではアリシア殿下も困ってしまいますよ」


 レイモンド代理統治官もオレの肩を持って説得に協力してくれるが全く効果はない。


「とにかく、ここを開けてください…………」


「食事もお取りにならないと侍女も心配しています」


 オレとレイモンドが口を揃えて諭しても、扉の向こうの相手の態度が軟化することは望めそうになかった。

 現在進行形で、子供のように部屋に閉じこもって皇族としての威厳も外聞も、かなぐり捨てているのは レリオネラ皇太后その人である。


 事の発端は、きわめて簡単だ。

 アリスリーゼ行きの目的の全てが達成されたので、そろそろ帝都に戻ろうと思いますと、夕食を食べ終えた後にレリオネラお祖母さまへ告げたことによる。


 その結果、彼女はひどく狼狽し、オレにここへ残るように懇願してきたのだが、オレがやんわりと拒絶するや、自室に篭城するという手段に訴えたという訳だ。

 しかも食事も取らないという徹底振り。


 ホント、駄々っ子か、ばあちゃん。


 室内トイレも完備していて、焼き菓子なども部屋に十分残っているらしく、立て篭もりはすでに半日は経過している。

 ほとほと困り果てたオレ達にサラが一計を案じてくれた。



「本当に、こんなんで機嫌直るのかなぁ」


「やってみなければわからないさ。どうせダメもとだろう?」

 

 オレの疑問の声に、サラは気楽に返答する。


「それはそうなんだけど……」


 オレは自分が手にしている怪しい道具をまじまじと見つめる。


 材質不明の四角い箱に、円形の硝子状の部品が前面に取り付けられており、背面には透明な球状の物体が埋め込まれていた。

 これが何かと言うと、Ⅳ類神具の『誓約証球』という代物らしい。本来は、国家間の重要な取り決め等に使われる神具で、レイモンドの金庫からサラが、ずいぶん前にくすねていた物のようだ。


「道理で見当たらないと思っていたら、君が持っていたのだね」


「いいじゃないか、どうせ親父殿じゃ、ケチって使わずじまいに終わるのがオチなんだから」


「まあ、有意義に使ってくれるなら、良しとしましょうか」


 いいのか、そんな簡単で。神具だし、かなり高価な物だろうに。


 レイモンドって放任主義に見えるけど、けっこうサラに甘いよな。ま、彼からそれ以上に甘やかされているオレに言えた義理ではないけれど。





 結果的に、サラのこの目論見は大成功に終わる。


 お祖母様のご機嫌は一発で直り、オレの一時・・帰国を何とか認めてくれた。


 えっ、どうしてそうなったかって?

 それには、『誓約証球』という神具の説明が不可欠だ。さっきも言ったけど、この神具の本来の用途は誓約が必要な局面で紙とは別に証拠を残すことにある。その方法は箱の前面の硝子面レンズで、その誓約場面を写し、背面の『証球』に記録するという形式となっている。

 記録されると透明な『証球』は白く変色し、再記録は出来ない仕組みのようだ。


 これにより、実際に「誰と誰が」、「どのような誓約をしたか」が、つぶさに記録され、誓約状とは別に証拠として重要視されているのだとか。

 ちなみに、記録される時間は少ないものの、『証球』単体でも映像を見ることができるので、思ったより使い勝手の良い道具のようだ。


「ん~、アリシアちゃんそこで止まって……そうそう、そこでにっこり笑って」


「え、はい……お祖母様」


 サラの一計は、その国家レベルで使われる神具を個人的な記録に使ってしまおうと言うものだったのだ。おかげで、お祖母様のご機嫌は直ったけれど、こんな細かい指示に従いながら撮影される羽目に陥った訳である。


「それじゃ、次の衣装はこれね。すぐに着替えて」


「ま、まだ着るんですか?」


「もちろんよ、アリシアちゃんのためにあつらえた衣装は、まだたくさんあるんだから」


か、勘弁して欲しい……。


オレオレ詐欺ならぬ、終わる終わる詐欺でしたが、やっとアリスリーゼ編も終わりになります!

な、長かった(>_<)

自業自得なのですが、過去の自分の見込みの甘さを怒ってやりたい気分ですw

いよいよ次章から帰路になります。

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