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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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再び、北方大神殿……③

 納得のいっていないオレの表情を見咎めて、ルータミナは自信満々のウィンラットを無視してオレに問いかける。


「どうしました? 何か不明な点でもございましたか」


「いや、『全智の間』が神官の討論する場所だって聞いてたけど、なんで今回の件で『全智の間』が出てくる必要があるのかわからなくて」


 オレが疑問を呈すると、それに対しウィンラットは露骨に見下したような態度をとる。


「まさか、そんなことも知らないで、この場所にいるとは無知にも程があると言うものだな」


「あいにくと、アリスリーゼの人間じゃないもんでね。こっちの常識なんて知らないのは当たり前だろ」


 オレが悪びれもせず言い返すと苦虫をつぶしたような顔になる。


「本来の目的については、さきほどお話したとおりですが、『全智の間』には別の使用目的がございまして……まあ、実にアリスリーゼらしいと申しましょうか」


 そういや、さっきもそんなこと言いかけてたな。


「アリスリーゼは諸外国と交易が盛んで人種の坩堝るつぼでと言えます。が、しかしそうである故に他の地方に比べて血統に重きを置く地域なのです……」


 その話は、アエル達の一件の時にも耳にしたことがある。確か、人種が多様で自由な気風の反面、血統や権威が何よりも重要視される……それがアエル達『血統裁定官』の、ここアリスリーゼで重用された理由だったって。


「そんな訳で、貴族はおろか商人、果ては裕福な平民に至るまで自らの血筋にこだわるのがアリスリーゼという土地柄なのです。そして、そうした場合、次に発生するのは当然と言いますか、後継者問題となります」


 より良い血筋を後継にしたいと願う当主や家長も多く、親の選んだ結婚や養子縁組も盛んなのだそうだ。クレイからも、そうした情報を事前に聞いていたし、実際にそういう状況の現場も目にしたが、部外者のオレからすれば少々やり過ぎに感じられた。

 人間の価値が血統なんかで計れない……と思うのはオレが権威に程遠い傭兵だったせいなのか、正直よくわからなかった。


 ちなみに、そんな血統を重んじるアリスリーゼで大いに活躍するのは、家柄を保証するその家に代々伝わる家宝なのだとか。

 しかも、そうした物の多くが、例の『神具』とやらなのだそうだ。 


 帝国に対して貢献した証のそれらは、すなわち家柄を示す根拠となり、その家の家宝となって、代々引き継がれる。神具の神位が高いほど良い家柄という、オレ的にはどうかと思う風潮が根強いとの話だ。


 けど、神具の数は限られている……そのため、当然贋作が多く世に蔓延はびこることになる。もちろん、専門の鑑定士が存在するが、人間のすることには不正の余地があり、大金が絡むと度々問題となった。

 したがって、後継者選定に関わる神具の真贋が問われる事態となった場合、それを調停する場所が、大神殿の『全智の間』であり、『神位具現鏡』という訳だ。


「つまり、『全智の間』の別の使用目的っていうのは……」


「ええ、『神具』の真贋の鑑定と後継者争いの調停です」


 ルータミナは、そう言うと身内の恥を晒すのを恥じるかのような表情を浮かべ肯定した。


 きっと、鑑定や裁定には、しっかりとお金がかかる仕組みだろうから、北方大神殿の商魂逞しさが如実に表れていて気恥ずかしい思いだったのだろう。


 でも、それで先ほどのウィンラットの台詞に得心がいった。大方、オレがそうした神具を受け継いだ持ち主で、その神位や真贋を『神位具現鏡』で鑑定しようとしていると考えたに違いない。

 そして、五正会の面々が呼ばれた理由は、オレが彼らの内の誰かの隠し子で、それを明らかにすることで、神殿内でのその人物の立場を低下させようとの試みと捉えたのだろう。


 数が限られているとはいえ、最低ランクの『Ⅴ類神具』の数は膨大だ。ここにいる連中なら、目をかけた女に、それらの神具を分け与えるなど造作のないことだと言える。

 現に何人かの正神官が青ざめているところを見ると、そうしたことに身に覚えがあるのだろう。


「全く迂遠なことを行いますな。こんなことをしても、我ら五正会の立場が悪くなることなど、ありませんぞ。ましてや、それで北方大神殿を掌握しようなどと片腹痛いと言わざる得ませんな」


 ウィンラットは、そうした可能性が全くないのか、えらく自信満々で大見得を切る。


 いや、仮にも神官の地位にある人が愛人持ったりしたら、駄目でしょ。それとも、もしかして……まさかね。

 ウィンラットは40代ぐらいに見えるけど、ずっと信仰に身を捧げてきたそうだから、ひょっとしたら……有りうるかもしれない。

 いやいやいや……オレは頭に浮かんだ考えを慌てて打ち払って顔を赤くする。


「どうも、ウィンラット正神官は何か思い違いをしているようですね」


 赤面したオレと自信満々のウィンラットを見比べ、不思議そうな顔をしたルータミナは、おもむろに口を開く。


「それでは、五正会の皆さんを緊急に集めた理由についてお話したいと思います」


 お、ルータミナ。いよいよ核心に触れるつもりだな。

 少しばかり、彼らの反応が楽しみになる。


暑くて死にそうな日が続いていますね。

あまりの暑さに今日は実家に退避してました。

いつまで、この暑さ続くんだろう……(>_<)


なかなか出立しないので、ちょっと困ってますw

どうしよう、まだアエルとの話があるし……。


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