表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
382/655

再び、北方大神殿……①

「ウィンラット正神官、ちょうど良いところで会いました。実は貴方にお願いが……」


「お願いも何もありません。ずいぶん探しましたぞ、神殿長。午前中の公務を放棄するとは、まったく良い御身分ですな」


 ルータミナが話しかけようとすると、ウィンラットは憤懣ふんまんやるかたない様子で嫌味を言う。


「あら、事前に北方大神殿にとって大事な御方のため、午前中の公務は取りやめにすると伝えてあった筈ですが」


「ルータミナ神殿長、お父上が実力者とはいえ、さすがに我がままが過ぎますぞ。もう少し、自分のお立場を考えて行動なさっては如何ですかな。尻拭いするこちらの身にもなって欲しいものです」


 うわあ、感じ悪い。

 あからさまに悪意を感じるぞ。


 ルータミナも、よくこんなのと、にこやかに会話できるなぁ。

 さすがは神殿長が勤まる訳だ。ホント尊敬に値するよ、オレなら一瞬でブチ切れそうだもの。


「……それで、その者が大切な御方と神殿長は申されるつもりですか?」


 オレの姿を認めると、ウィンラットは不審げな表情でルータミナに尋ねる。


「ええ、そうですが……」


「この者は、いつぞやの傭兵ではありませんか。知り合いの娘と聞きましたが、公私混同も大概にするようにと、ご忠告申し上げた筈ですぞ」


「もちろん、十二分に理解しているつもりですよ。何か、問題でもありますか?」


「大ありですとも。このような下賎のやからを大神殿の奥深くまで招き入れるなど言語道断ではありませんか」


 ルータミナの平然とした態度にウィンラットが怒りを露に暴言を吐いた瞬間、不意にルータミナの雰囲気が一変する。


「ウィンラット……この方を侮辱するのは、わたくしが決して許しません。すぐに謝罪の言葉を申し上げなさい!」


 いつものふわふわした印象が影を潜め、静かだが有無を言わせぬ迫力を漂わせるルータミナにウィンラットは思わず息を呑む。


「ウィンラット!」


 追い討ちをかけるように声をかけると、ウィンラットは早口でまくし立てる。


「た、確かに少し言い過ぎたようだな。謝るほどのことでもないが、ここは素直に非を認めよう。今の発言は撤回する…………も、申し訳なかった」


 ルータミナに気後れしたのか、焦ったようにウィンラットは謝罪の言葉を吐き出した。


 とても本気で謝っているようには見えなかったけど、謝意は一応伝わったのでルータミナもひとまず矛を収めることにしたようだ。

 ただ、さらにルータミナは厳粛な態度と厳しい口調でウィンラットに対し厳命した。


「ウィンラット正神官、北方大神殿の神殿長として命じます。ただちに正神官の全てを『全智の間』に集合させなさい」


 思いも寄らぬルータミナの威厳ある態度に、ウィンラットは「いや、それは」「まさか、そんな」などと口の中でぶつぶつ言っていたが、結局のところ口答えせずに一礼して、その場から立ち去った。


 不満を抱えながらも、一応は指示された命令を遂行するつもりらしい。


「凄いね、ルータミナ。ちょっと見直したな。あんなに年上の部下を意のままに動かせるなんて。貴女のこと、オレ誤解してたよ」


「いやですわ、殿下。恥ずかしいところを、お見せしてしまいましたね。それに自分ことならさておき、殿下を侮辱するなんて、万死に値する所業ですもの。正神官でなければ、不敬罪で厳罰に処すところでした」


「そ、そう……」


 にこやかに言い放つルータミナに、思わずちょっと引いた。


 前から感じてたけど、女になってからの方が確実にモテている気がする、それも主に同性から。

 いや待てよ、男だったときにも男からモテていたような……思い出すのは止めよう。


 むうっ……よくわからないけど、何か釈然としないぞ。


「それでは先を急ぎましょう、アリシア殿下」


「ん、いいけど。その前にさっきから出ている『全智の間』ってのが何なのか教えてくれる?」


「あ、説明してませんでしたね。では、不作法ですが、歩きながら説明いたしましょう」


 嬉々としてオレの隣に並んで歩き始めたルータミナは、『全智の間』の解説を始める。


 それによると、『全智の間』というのは大神殿の中枢部にある会議場で、元々は教義や神意について疑義が生じたときや異端審問など神官達が意見を交えるための部屋だったらしい。

 ただ、昨今ではそうした事例も発生せず、その目的で使用されることはめったにないのだそうだ。


「現在は、別の目的で使われることが多いですね。まあ、アリスリーゼならではと申しますか……」


「別の目的?」


 オレは言っている意味がわからず、鸚鵡おうむ返しにルータミナに質問する。


「ええ、そうです。実は『全智の間』には、Ⅲ類神具の『神位具現鏡』が設置されているのです」 


 『神位具現鏡』だって?


 オレは懐に手を入れて、肌身離さず持っている『まもりの紅玉こうぎょく』を嵌め込んだフィビュラ(装身具の一種、留め具)に触る。


 そう言えば、これを使えばオレが皇女であることを証明できるんだっけ。


 すっかり忘れてた。

最近、微弱ながらアクセス数が増えています。

とても嬉しいですが、理由がわかりません。

何が原因なのだろうか……不思議です。


え~と、案の定、出立まで時間がかかっていますw

いったい、リデル達はいつ出立するのだろう……(~_~;)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=687025585&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ