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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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海軍基地での……④

「いやはや、壮観だったねえ。歴戦の勇士が子供のような殿下に次々と投げ飛ばされるのは」


 敗者の傷口に塩を塗りこむような台詞を言うのは、もちろんサラだ。


「アリシア様、素敵です! まるでロニーナ皇妃殿下のようです」


 そして、少女のように目をきらきらさせながら、感激しているのはルータミナ。


「リデル様なら、あれくらい当たり前のことです」


 小声で呟くソフィアは、さも当然と言う顔をしながらも、ちょっと得意そうにしている。


 つい、調子に乗ってやり過ぎた感はあったけど、ソフィア達が喜んでくれたなら、良しとすることにしよう。

 ただ、問題は約一名だ。


「え~と、クレイさん。怒ってます?……怒ってますよね」


 オレが様子を窺うように上目遣いでクレイを見ると、奴は表情を変えずにじろりと冷たい視線をオレに向ける。


 こ、これは本気マジで怒ってる。


 こういう時には……。


「す、すいませんしたぁ――!」


 オレは冷や汗をかきながら、直角に腰を曲げて深々と頭を下げた。



「おい、ちょっ……待てよ。人前で頭を下げるな。立場を考えろ、馬鹿っ!」


 クレイが能面のような表情を消して、焦った顔でオレを止めに入るが、時すでに遅く、クレイは人々の注目の的となった。


 それはそうだろう。

 この場における最上位であるはずのの皇女が側近の男に深々と頭を下げたら、みんな不審に思うのは当然ことだ。

 しかもこの男、皇女殿下であるオレに、あろうことか馬鹿呼ばわりしたものだから、周りで聞いていた陸戦の連中、特にオレに熱い視線を送っていた紳士諸君は気色ばんだ。


「何者だ、あいつ」


「俺達の皇女殿下様と、いやに親しげだが……」


「どうやら、殿下の側近のようだぞ」


「だが、敬愛して止まない皇女殿下を馬鹿呼ばわりするとは、何事か」


「しかも、けっこう仲良さげではないか」


「ゆ、許さん。俺の殿下を……」


「おい、そこかわれ」


 どう聞いても変態な台詞にしか聞こえないが、その非難を一身に受け、窮地に陥っているクレイを見るのは、ちょっと楽しい。

 オレの反省を促そうと、無表情を装ったのだろうが、そうは問屋がおろさないぞ。


「リデ……アリシア殿下、そろそろ大神殿に赴く時間になります。すぐに出かけられるように、お支度願います。ルータミナ神殿長も皇女殿下の案内をよろしくお願いします」


 困り果てたクレイは、次の予定をオレに指示すると、ほうほうの体で逃げ出した。


 ぷぷっ、クレイの奴。

 そういつもいつも、オレが一方的からかわれてばかりじゃないからな。





「ま、まさか……こんなことが」


 北方大神殿の『全智の間』で五正会の筆頭正神官であるウィンラットは狼狽のあまり、膝から崩れ落ちた。微かに得意げなルータミナと見比べながら、オレはため息をついた。


 話は少しばかり遡る。

 ノーマンの海軍陸戦隊とやり合った後、オレは当初の予定通り、北方大神殿へと向った。


 オレとしては、すでにレイモンドとノーマンの助力を得られたのだから、正直大神殿はどうでも良かったのだけど、レイモンドは「この際、ぜひ大神殿も掌握しましょう」と譲らなかった。

 ノーマンも、大神殿の神殿兵も馬鹿にできない戦力なので味方に付けられるのなら、それに越したことはないという意見だったため、気は進まなかったが北方大神殿に再び出向くことにしたのだ。


 まあ、アリスリーゼを発つ前に、もう一度アエル達に会っておきたかったという本音もあったしね。


 そんなわけで、ルータミナの案内で大神殿までやって来たのだけど、オレに対する態度が前回と全く変わらないのに驚かされた。


「ねえ、ルータミナ。ちょっと聞きたいんだけど……」


 不思議に思ったので、前を歩くルータミナに聞いてみた。


 神殿を挙げて出迎えてくれるとまでは思っていなかったけど、それなりの対応をしてくるものだと思い込んでいたからだ。

 その問いかけに対するルータミナの返答にオレの目は点になる。


「申し訳ありません。神殿はおろか五正会の面々にも殿下の素性を、まだお知らせしておりません」


「……なんでまた」


「わたくしが説明しても、彼らは信じないと思いまして……それなら、殿下においでいただいた方が早いと考えた次第です」


「そ、そうなのか……」


 さすがに、その展開は読めなかった。

 この間の様子から、あの連中がそう簡単には信じないだろうとは思ってたけど。


 それじゃ、今からオレがあの連中に説明するの?

 何だか面倒そう。


「って言うか、ルータミナ。貴女の言うことを信じないなら、オレの話なんて頭から受け付けないんじゃないの」


「はい、ですから『全智の間』に向っております」


「『全智の間』?」


 また聞きなれない単語が出てきたぞ。


「はい、『全智の間』と言いますのは……」


「ルータミナ神殿長!」


 ルータミナが説明しようと矢先に、横合いから彼女を咎める声がした。


 視線を向けると、そこには五正会筆頭のウィンラット正神官が渋面で立っていた。


ちょっと短めで、すみません。

クーラーと外気の差で、体調を悪くしてます。

皆様も、お気をつけください。

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