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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
373/655

レイモンド邸にて……④


「あとはそうですね……殿下と陛下とはよく似ていらっしゃると思います」


「え?」


 レイモンドの言葉に意表を突かれて少し驚く。


 親父とは似ても似つかない立派過ぎるあの皇帝陛下とオレが似てるって?

 何かの間違いじゃないか。オレはどちらかと言えば、記憶に残っていない母親似で、あのクソ親父とだって、あんまり似てないと思ってたのに……。


「いえ、お顔がとかではなく受ける印象がでしょうか」


 オレの訝しげな表情にレイモンドが補足する。


「殿下の性格や行動については、道中を共にしたサラリエから詳しく報告を受けております。それを聞く限りでは、やはりよく似ておられる、さすが親娘であるなと感心いたしました」


「ど、どの辺が……似てるんだ?」


「何とも要領を得ない返答で申し訳ありませんが、何となくと申しましょうか」


「レイモンド……」


 オレはレイモンドに神妙に聞く。


「オレに似てるってことは、ひょっとしたら、皇帝陛下って……」


「はい」


「……馬鹿だったのか?」


「は?」


 オレの言葉に、クレイはプッと吹き出し、ヒューは天を仰ぎ、ソフィアは俯いた。

 そして、レイモンドはその細い目を見開いて固まっていた。


 あれ、オレなんか変なこと口走ったか?

 周りの反応に不安を感じていると、レイモンドがいち早く正気を取り戻す。


「へ、陛下は大変賢いお方でした……もちろん、殿下も頭の良いお方とお見受けしております」


「いやだなあ、オレはそんなに賢くないよ」


「いえいえ、ご謙遜を。サラリエの話では、ここに至る道中の難しい局面で的確に正しい選択をしていらっしゃったそうではありませんか」


「あれは成り行きと偶然の産物だと思うけど」


「……いや、ただ単に運が良いのと野生の勘が鋭いだけだな」


 横でぽつりとクレイが呟くのを聞き逃さない。

 あとで、覚えてろ。きっちりお仕置きしてやるからな。


「し、しかしですな。殿下と陛下が似ていらっしゃるのは、そういうことではありません」


 レイモンドがオレの表情を見て、慌てて取り成す。


「そう……あえて言葉にしますと、正義感にあふれ、他人が困っていると放っておけないところとか、好奇心の旺盛なところ、そして何より心根が真っ直ぐなところでしょうか」


 おいおい、ちょっと褒めすぎだ。確かにそれについてはオレ自身思い当たる節もあるけど、皇帝はともかくあの親父がそんな殊勝な性格だったとは、とても考えられない。

 オレと四世陛下が似てるってことは、レイモンドの証言で何となく理解できたが、逆にオレがあのクソ親父と全く似てないような気がしてきた。 


 もしかして、聖石で姿格好を変えたとき、性格まで変えたとか?

 ま、まさか……さすがにそんな都合のいい話はないか。



「それにしても時間がかかるね」


「そうでございますね」


 待たされるのに飽きてきたので、つい本音を呟くとレイモンドが同意を示す。


「少し様子を見に行かせましょうか」


「そうだね……」


「止しておけ、リデル。女性の支度は時間のかかるものと相場が決まっている」


「そうなのか、クレイ。でも、何をそんなに準備する必要があるんだ。オレなら、一瞬で終わってるぞ」


「……そういや、お前も一応女性だったな」


 失敬な。オレだって女になってからは、いろいろ気を使っているんだからな。

 お化粧とか服装とか……は、あんまり気にしてないけど。


「本当にクレイ様の仰る通りです。リデル様も、もう少し身の回りに気を配っていただけましたら、国中の男性を虜に出来ますのに」


 嫌だね、そんな状況。

 ソフィアが残念そうにオレを見ているが、そんなの真っ平ごめんだ。たくさんの男に言い寄られるなんて、考えただけで寒気がする。


 まあ、そんな訳で、結局お祖母さまに様子伺いするのは止めにして、もう少し待ってみることになり、オレ達の雑談は続くことになった。


 そこで、ふと視界に入ったヒューを見て思い出した気懸かりな質問をレイモンドにぶつけてみることにする。


「そう言えば、レイモンド。剣聖ユーリス・ルブランを知らないか? アリスリーゼに来ているって聞いたんだ。彼と友達なんだろ」


 オレの発言にヒューも反応する。ヒューのアリスリーゼ行きの目的は、元々は師匠であるユーリスに会うためだったからだ。

 オレとヒューがレイモンドの返答を固唾を呑んで待っていると、思いがけない答えが返ってくる。


「ユーリスですか? ここにはいませんが……」


「それって、この屋敷にはいないってこと?」


「いえ、アリスリーゼにです。彼なら、ずいぶん前に帝都へ向いましたよ」


「はぁぁ?」


 あまりの言葉に思わず、開いた口が塞がらない。


「そ、それは、いったいどうして……」


「決まっています。彼の可愛い弟子が皇女を救う大活躍をしたのです。もちろん、帝都に会いに行ったのですよ」


 オレは恐る恐るヒューに視線を向ける。


「そうでしたか……私に会いに帝都へですか」


「ヒュー……」


 どう言葉をかけて良いかわからないオレに対し、ヒューはさっぱりとした表情で答える。


「リデル、お気遣い無く。こういうこともあります。ただ、こうまですれ違うと、やはり剣の神様は私が師匠に会うことを望んでおられないような気がします」


「そ、そんなことないよ、絶対!」


 オレの慰めにヒューは笑顔を見せる。


「ありがとうございます、リデル。でも、大丈夫ですよ」


 オレが、さらに声をかけようとした瞬間、レリオネラの準備が整ったとの連絡が入った。


あれ? いつまでたってもお祖母さまが出て来ないぞ……w

な、何でだろう。


じ、次回はきっと出ますから(たぶん)

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