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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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再会……④

 ともかく、闖入者の正体が判明したところで、オレは再びサラの方へと向き直った。


「で、サラさん、ノーマン提督をわざわざ呼び出してくれたのには、何か理由があるの?……えっと『面白いから』ってのは無しにしてくれよ」


「むう、先に手を打つなんて、リデルくんも成長したようだな。がしかし、なあに簡単な理由さ、今ここで説明するとしよう……ところで、提督」


 そう言うとサラはノーマン提督に問いかける。


帝国海軍あんたのところと|アリスリーゼ代表部(うち)は持ちつ持たれつの関係だと言えるよね」


「ああ、今さらだが、その通りだ」


 提督は少し困惑した表情を見せた。


 けど、サラはそう言うが、事実は多少異なる。


 軍隊と言うのは戦うための装置だ。機能を維持するのには多量の物資と金が必要なのだ。言わば非生産部門の代表と言っていい。

 戦うというただ一点に集約された集団は、その行為が日常茶飯事に起こる局面であれば、まだ有用なのだけれど、戦わない軍隊は単なるただ飯喰らいと同等である。


 そして、帝国海軍はまさにその状態にあるのだ。

 何故なら、仮想敵国である『エントランド連合王国』海軍には、一歩も二歩も及ばない戦力の上、帝国内には他の海上戦力が皆無なのである。

 つまるところ、戦う相手がいないのだ。


 したがって、その莫大な維持費はアリスリーゼ皇女領が単独で負担している状況にある。言ってみれば、浪費家で態度のでかい居候を住まわせているのと同じである。


 カイロニア・ライノニア両公国が帝国海軍を目くじら立てないで放置しているのは、そういう理由もあると言ってよかった。国内が統一されれば、対外的にも海軍は必要になるので解体するのは望ましくない。かと言って、多大な出費を負担したくはない。

 なので必要になるまでは、せいぜいアリスリーゼに養ってもらえば良いというのが両公国共通の本音らしい。


 そんな訳で帝国海軍とアリスリーゼ皇女領の関係は『持ちつ持たれつ』どころか『生殺与奪』をレイモンドに握られている状況にあるのだ。


「それじゃあ、互いの方針はなるべく一致する方向にあって共存していくことで良かったよね」


「ああ、その通りだ。だから、アリスリーゼが行っているカイロニア・ライノニア両公国からの中立の立場を支持してるだろう?」


 サラが念を押すと、提督は訝しげに答える。


「ということはだね……つまり」


 サラはレイモンドに視線を向けると、彼はしたり顔で頷き、口を開く。


「ノーマン帝国海軍司令、アリスリーゼは名実ともにアリシア皇女殿下の支配下に入りますが、海軍はどうされますか?」



 

「ぐぬぬ……」


 提督は何とも言えない顔になった。


 まあ、それは当然だろう。


 家主が突然、家の持ち主が変わったから、その意向に従うか出て行くかはっきりしろと言っているのに等しいのだから。

 今まで居心地が良かった分、おいそれとそれを手放す勇気があるとは思えなかった。


 唸っているノーマンを尻目に、オレは近くにいたクレイにこっそり聞く。


「なあ、クレイ。ケルヴィンは皇女の固有戦力として海軍を味方につけろって言ったけど、あんなお荷物、味方にする必要あるのか?」


「いや、リデル。海軍の戦力は捨てたもんじゃないぞ」


「そうなの?」


 意外にもクレイの海軍に対する評価は高いようだ。


「だって、戦う艦隊あいてがいないんだろ?」


「ああ、水上戦力としての実力は正直、俺には評価できないが、海賊に対しては抑止力になっているぞ。それに、あいつらの真骨頂は接舷戦闘にあるからな」


「接舷戦闘?」


「相手の船に乗り込んで白兵戦を挑む戦い方さ。移乗攻撃とも言うな」


 つまり、相手の船の人員を殺傷して、敵船の自由を奪う戦法のことか。確か、海賊などが略奪品や乗客目当てによく使う戦闘方法だって聞いたことがある。


「だから、やつら海軍の海兵隊は、その辺の正規軍が束になってかかっても勝てない精鋭ぞろいだそうだ」


 確かにノーマン提督は艦隊司令官というより、歴戦の傭兵隊長か海賊の親玉にしか見えないしな。

 どう見ても脳筋系のキャラだ。


 さっきのオレの一撃に耐えたところを見ても、海兵隊というのは侮れない戦力なのかもしれない。

  そうなると、俄然その去就に興味が引かれた。


「ぬぬぬぬ………………はああっ」


 ノーマンはしばらく唸った後に、盛大に息を吐いた。


 そして、決心したようにオレを見て宣言する。


「我が海軍は帝国海軍である。皇帝の居られぬ今、その遺児に助力するは、何の差し障りがあろうか。いや、あるまい。よって、我が海軍も皇女殿下に忠勤を励む所存である」


 そう言って片膝をつくと、こうべを垂れた。


「では、アリシア皇女殿下。アリスリーゼ皇女領レイモンド・フィール代理統治官も帝国海軍共々、殿下に恭順いたします」


 レイモンドもノーマンに倣って膝をつき、恭しく一礼する。


 こうして、オレのアリスリーゼ行きの主目的は、呆気なくというか奇跡的にというか、とんとん拍子に終わったのである。


短めですみません。

体調を悪くしたせいで、家族の目が厳しくて執筆時間が取れません(>_<)

しばらく、週一更新になるかもしれません。

頑張りますが、そうなったらごめんなさいです。


P.S。更新していないここ数日のアクセス数がぐんと増えているのは何故なのだろうか(゜o゜)?


あ、総PV数400万突破しました!(ぱちぱち)皆様のおかげです、ありがとうございました!

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