表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
368/655

再会……③


「おやおや、ノーマンではないですか。珍しいですね、こんな時間にここへ来るなんて」


 レイモンドの顔見知りのようで、親しげに話しかける。


「おうよ、いつもなら女のところに、しけこ込んでいる時間なんだが、手前んとこの跳ねっ返り娘が、今日ここに来ると面白いもんが見られるってんで、わざわざ顔出したんじゃねえか」


 うわぁ、悪人顔の通り口も悪いぞ、このおっさん。


 人相と相まって、山賊にしか見えない……いや、海が近いから海賊か。


「よお、おっさん。やっと来たね。来ないんじゃないかと冷や冷やしたよ」


「悪いな、あいつんとこ寄ったら神官連中が、ぎゃーぎゃーうるさくてな。ちっと遅れちまったぜ……で、サラ坊、面白いもんってどれだ?」


「あんたの目の前をご覧よ」


「ん……」


 今、確かに神官連中って言ったよね。

 と言うことは、もしかしてこの海賊おっさんは……。


「ひゅう、こいつは驚いた。なりは小さいが、とてつもねえ別嬪さんだな」


 オレを見るなり、その男の目の色が変わりオレに詰め寄った。


「おい、あんた俺様の子、産んでくれ!」


 ばきっ!


 やべ……あまりの発言に反射的に殴っちまった。

 けど、オレの一発を腹に受けた海賊おっさんは、驚いたことに倒れてはいなかったのだ。


 手加減したとはいえ、オレの一撃を受けて立っていられる人間は、そうはいない。

 そう考えると、この海賊風味のおっさんが、なかなかの戦闘力を秘めているのは確実だ。


「……っ、いってえな。すげえ拳だぜ。可愛い顔して、えげつない威力だな」


「そういうあんたも、たいしたもんだと思うよ」


「ふふ……ますます気に入ったぜ。あんたは俺様の正妻にしてやる。それなら文句ねえだろう」


 いやいや文句大有りだって。


「ノーマン、お控えなさい。君が口説いている少女は我々の主に連なる御方なのだよ」


 見かねたレイモンドが苦笑いしながら助け舟を出してくれる。


「は?」


 一瞬では理解できなかったようで、おっさんは間の抜けた声を上げる。


「だから、こちらにおられる御方はアリスリーゼの正統なる支配者アリシア皇女殿下なのですよ」


「な、何だと!」


 今度は、はっきり理解したようだ。そして、慌てて膝を折って頭を下げる。


「こ、こいつは、ご無礼いたしました」


「いいって、今さら取り繕わなくても。そんなことより、あんたはいったい何者なんだ?」


 でかい図体を目一杯小さくさせて、謝罪の意を示すおっさんに尋ねてみると、奴は顔を上げて神妙そうに答えた。


「ノーマン・ウェステリオと申します、殿下。帝国海軍の司令長官を拝命しております」


 え? このおっさんが海軍司令だって?

 

 確かアリスリーゼには帝国海軍の根拠地があるって聞いていたけど。

 しかも、皇帝が行方不明になり内戦が勃発した折、アリスリーゼが皇女直轄領を理由にカイロニア公国・ライノニア公国双方に与せず中立を宣言すると、帝国海軍もそれに同調し中立を宣言した筈だ。

 だから、今回の旅の目的は皇女直轄領アリスリーゼを支配下に置くことと、旗色を明らかにしない帝国海軍を掌握することにあるって、ケルヴィンからさんざん言われてきたんだっけ。


 なので、海賊おっさん、もといノーマン海軍司令とここで会えたのは非常に幸運だったと言っていい。たぶん、これもサラの差し金だと思うのだけど、彼女の目的が何なのか相変わらず思惑は読めなかった。


「サラ坊、酷いじゃないか。殿下が来るなら、先に言っとけよ。知らないもんだから、本気で口説いちまったじゃないか」


「へえ、さすがのあんたも皇女殿下様は口説かないんだ。そいつは驚きだ」


「お前なぁ、俺様を何だと思ってやがる。破天荒の俺様でも、そこまで節操なしじゃねえっての」


 いやいや、初対面の少女、それも外見が年齢より幼く見える女の子に、本気で求婚する奴が節操があるとは、とても思えないぞ。


 貴族でなければ間違いなく捕まるぞ……あ、一応こいつも貴族なのか。


「そういや、ノーマン帝国海軍司令……」


「ノーマンで結構です、殿下」


「じゃ、ノーマン提督。ひょっとしたら、ルータミナ神殿長は貴方の娘さんなの?」


 気になっていたことを質問する。


「ええ、その通りでございます。はて、うちの娘にお会いになったんで?」


「うん、北方大神殿に用があってね。とても綺麗で気立ての優しい娘さんだよね」


「もったいないお言葉です。あれは幼い頃から今は亡き皇妃殿下に憧れていたんで、皇女殿下の帰還を人一倍嬉しがっておりましたので、殿下にお目にかかれて喜んだことでしょう」


「ああ、とても喜んでくれて、オレも嬉しかった」


 それにしても……。


 あの華奢で美しいルータミナが、この海賊親父の血を引いているとは、とうてい思えないな。よっぽど、お母さんが綺麗な人だったんだろう。

 母似で良かったね、ルータミナ。


 でも待てよ、さっきオレを正妻にすると何とかほざいていたから、ルータミナのお母さんはすでに他界しているのかもしれない。自分より年上の女性を娘と呼ぶのはさすがに勘弁してもらいたい。


 けれども、これでルータミナが北方大神殿の神殿長に抜擢された理由がわかった。海軍司令の娘だったら、名誉職の大神官にもってこいと言えるだろう。


木曜日からまた風邪で寝込んでます。

転勤のせいで心身ともに弱ってるみたいです。

もしかしたら、水曜日の更新はお休みするかもしれません。

ごめんなさい。

皆様も体調にお気をつけくださいね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=687025585&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ