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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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アリスリーゼ政庁舎……⑤


「実はこんなことがあったんだ……」


 オレは皇女候補生だった頃にあったエピソードについて話し始める。


 あれは確か、部屋決めの際に起こった出来事だ。

 トルペンのお節介で、急遽皇女候補に加えられたオレのせいで、あらかじめ用意してあった皇女候補生用の部屋が不足してしまったのだ。

 そのため、オレの部屋は、他の皇女候補生よりずっとグレードの高い部屋が割り当てられることになった。部屋が広すぎて落ち着かないという本音もあったが、何よりプライドの高いアレイラが自分の部屋が狭いと癇癪を起こしていたので、オレは部屋の交換を申し出た。

 当り散らされている侍女のレベッカや不満を訴えられている担当者を見て入れらなかったというのもある。アレイラは最初、素直に応じなかったが、オレの説得で、結局のところ嬉しそうに部屋の交換に応じた。


 その直後のことだ。

 交換した部屋に入ったところで、先ほどのレイモンドのようにシンシアから厳しい駄目出しを食らったのだ。

 オレとしては、三者が満足する三方丸く収まる名案に思えたのだけど、シンシアはそうは思わなかったようだ。ちなみにここでいう三者とは、広すぎる部屋に困っていたオレ、狭い部屋に不満を抑えきれないアレイラ、部屋の割り当てを難癖をつけられて困惑している担当者の三人である。


 そしてシンシアはオレにこう言った。

『あなたは、頭の中が一面のお花畑で、度し難い愚か者だ』と。


 言われていることが理解できず、呆気に取られているオレに対し、シンシアはさらに付け加える。

『今すぐ荷物をまとめて出て行くことをお勧めします。あなたは決して皇女様になれません。いや、なるべきではありません』と痛烈に批判されたのだ。


「いったいシンシアを何でそんなに怒らせたのか、未だにわからないんだ。オレとしては彼女と仲良くなろうと、いろいろ気をつけていた矢先だったし、全く見当も付かなかったんだ」


 当時は、ただ単に虫の居所が悪かっただけなのかなと思い、酷い言われようだったけど、怒るより呆気にとられたのを覚えている。


 けど、深く付き合った今では、シンシアが何の理由も無くあんな暴言を吐くとは思えなかった。いや、ちょっとはあるか……。


 一通りの話を聞いていたレイモンドは、頷くとオレの質問にこう答えた。


「失礼な物言いは別として、内容については全面的に、そのシンシアさんとやらの意見に賛成ですね。まさしく君は『度し難い』と言えるかもしれません」


「え?」


 レイモンドの返答に、今回もまたオレは呆気に取られた。



「あの……レイモンドさん?」


「おや、どうかされましたかな」


「いや、意味がよくわからないんだけど。シンシアに賛成って、どういうことなんだ?」


「そう言えば、わからないから僕に質問したのでしたね。では、まず確認しておきたいのですが、その当時の貴女は成り行きで皇女候補になったのでしたね」


「そ、そうだけど」


「そして、君はそんな状況でもシンシアさんと仲良くしたかった。口振りからすると友達にでもなろうとしていた……そうですね」


「……その通りだけど」


 当時のオレは環境や性別の変化に戸惑い、クレイからも距離を置かれ寂しく感じていたのは事実だ。

 それに、わだかまりのあったソフィアと仲良くできたのだから、シンシアともきっと仲良くなれると勝手に考えていた。

 まあ、実際のところ今は仲良くなれた(とオレは信じてる)のだから、その努力は無駄ではなかったと思いたい。


「でも、それが何でさっきの台詞に繋がるんだ?」


 状況は再確認したけど、非難される理由がわからなかった。


「つまりはこういうことです。君は自分の思いつきで勝手に部屋を交換したんです。侯爵令嬢の我がままや相手の侍女の境遇を思いやってのことでしょうが、結局のところは、他者から良く思われたい、相手より上位でありたいというエゴに他ならない」


「ち、ちが……」


「違わないですよ。しかも、君は口ではシンシアさんを友達だと言いながら、彼女のことを侍女と見下して、彼女のことは考えもせず勝手に部屋を変えた。当然です、侍女は主人の命令に従うものだ、主人のすることに文句を言う筋合いは無いですからね。けれど、この場合、君がすべきだったのは友だと言う彼女に相談することだったのです。『シンシア、向こうも困っているようだから、部屋を交換してもいいよね?』とね」


 オレは愕然としてうなだれた。


「彼女はこう思ったのだと考えます。『この人は口では友達と言いながら、私を侍女としか見ていない。しかも、私より他人の侍女の境遇を気にする人なのだ』と。だから、もし皇女になったら、自分の思いつきや信じたことを勝手に行動し、周りの人間を振り回すタイプの人間に違いないと……」


 何一つ否定できない。

 知らない間に、自分の立場を利用して自分の我がままを押し通してきたのかもしれないと、気が付いてしまったのだ。


 今回の旅だってそうだ。オレが皇女だから、みんな黙って従ってくれたのに違いない。

 全くもって、シンシアの意見は正しい。そう、痛感した。

せっかくのゴールデンウィークだというのに、体調不良です。

寒暖差のせいでしょうか……(>_<)

とにかく、今日は早く寝ることにします。

皆様のGWが有意義なものになりますように!

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