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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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北方大神殿……②


「リデル……万が一の場合でもお前だけは、どんな手段を用いてでも絶対に逃がしてやるから安心していてくれ」


クレイは方針を決めると、オレに向き直って真剣な表情で決意を宣言した。なので、にっこり笑って言ってやる。


「やだ!」


「やだって、おま……何を」


 オレの即答にクレイが面食らう。


「だってクレイ、その場合って死んでもオレを逃がすつもりだろ? 絶対に許さないからな、そんな手段」


「しかしだな……」


「しかしじゃない、その時は大人しく一緒に囚わられればいいんだ。相手がオレを利用するつもりなら、命までは取らないだろうからさ」


「それはそうだが……」


「オレの言っていること、間違ってるか? もし、お前が死んだら……」


 オレだって……。


 口にはとても出せないけど、クレイをじっと睨みつける。


「リデル……」


「クレイ、貴方の負けですよ。リデルの方に分があります。ですので、我々が為すべきことはそのような状況に陥らないように気を配ることでしょう」


 ヒューが苦笑しながら正論を述べると、クレイはしばらく唸った後に渋々頷いた。



「リデル、起きろ。神殿長が戻ってきたぞ」


 結構な時間、待たされたせいで不覚にもオレは居眠りしてしていた。

 だって、このソファー座り心地がいいんだもの。


「クレイ様、起こさなくても良かったですのに……微睡まどろむ姿も美しくて、まるで一枚の宗教画を鑑賞しているようでしたわ」


 目を覚ますとルータミナが恍惚とした表情でオレを見つめていた。


「あ、ごめん、ルータミナ。つい、寝てしまって……」


「いえ、構いませんわ。長旅でしたから疲れるのも当然です……それに眼福でしたもの」


 にっこり微笑むルータミナに、オレは何と答えてよいのか一瞬言葉に詰まる。けど、すぐに気を取り直して、アエル達との面談の首尾を確認した。


「それで、北方大神殿はアエル達をどうするつもりなんだ?」


 オレとしては抜け目のなさそうなウィンラット達五正会が、アエルをどう利用しようとするのか気になって仕方がなかったのだ。


「具体的には、まだ何も……。とにかく身柄を確保しておきたいという考えのようですわ」


「やっぱり『血統裁定官』を復活させるつもりなのかな」


「それは有りうると思います。内戦が終われば、ますます需要が高まるでしょうから」


 戦争中は戦死などで家系が断絶するリスクが高いので、世継ぎは多いに越したことはない。したがって、当主は世継ぎ作りに余念が無いわけで、いきおい非嫡子も数多く産まれる。

 戦時において、それはたいして問題にならないが、平時になれば別だ。継承権を持つ者が多いことは争いの種に事欠かないのと同義と言えた。


 なるほど『血統裁定官』が引っ張りだこになるわけだ。


「リデル、 意外なことだが、他国との行き来が盛んで混血も多いアリスリーゼほど、血統にこだわる地域はないそうだ。やっぱり、こういうところだからこそ余計に、血筋や純血を尊ぶ傾向が強いんだろうな」


 クレイが訳知り顔で薀蓄を述べると、ルータミナがそれに応じる。


「ええ、クレイ様の仰る通りです。アリスリーゼの人間ほど血統に拘る民はいないと思います。たとえ、他国の血が入ろうとも、貴族は貴族、平民は平民ですのに……差別する道理がわかりませんわ」


 ルータミナの返答にクレイは微妙な表情をする。

 

「……まあ、そうかもな」


 クレイのあやふやな態度には理由がある。たぶん、クレイ達『流浪の民』が世間から平民以下の扱いを受けてきたという歴史的事実がクレイの感情を複雑にさせているのだろう。

 ルータミナのそれは、封建主義の帝国内では……それも血統第一主義の神殿の中では異例の考えと言えたが、クレイ達の一族に言わせれば、それさえも一方的な押し付けということになるのだ。

 そして、その血統主義の頂点に君臨するのが皇帝であり、すなわち皇女であるオレと言っても過言ではない。


 クレイは不当に貶められている一族が、その元凶である皇族に嬉々として付き従っているのに納得できなくて家から飛び出したと、前に本人からも聞いている。

 それなのに、そのクレイが忌避すべき皇女であるオレに忠誠を誓っているのだから、世の中はわからない。きっと、本音は不本意に思っているに違いないだろう。


 けど、人というのは、概してそんな風に自分の主義主張を全うできない運命なのかもしれない。



「それでね、ルータミナ。これからのオレ達の行動なんだけど……」


 急に無口になったクレイの代わりに、オレは慌てて先ほど決めた方針をルータミナに告げた。


「…………なるほど、わかりました。それでは皇女殿下の身分は明かさずに、帝都からの名代のクレイ様の護衛という立場を貫くのですね」


 ルータミナは、オレ達の思惑を聞くと、すぐに理解してくれた。


「うん、何があるかわからないから、もう少し伏せたままでいたいんだ。協力してくれるよね」


「もちろんですわ。アリシア様の頼みごとでしたら、何をおいても果たさねばなりませんもの」


 ルータミナの確約を受け、オレ達は五正会の面々と交渉する運びになった。


更新が遅れて申し訳ありません。

少しばたばたしていて、時間に間に合いませんでしたm(__)m


無理の無い範囲で頑張りますが、更新が遅れることがあるかもしれません。

その時は、ごめんなさいです(>_<)


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