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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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再び村へ……⑤

「何だね、君にそんな風に呼ばれるのを許した覚えはないんだが」


 クレイの馴れ馴れしい口調にエルトヴァイトが眉をひそめる。


「固いことを言うなって。それよりいいのかい、こんなところで油を売っていて? 愛しのアエルちゃんは向こうだぜ」


「し、失敬な奴め。僕は純真でたおやかな女性が見るからに怪しい輩の餌食になろうとしているのを、騎士として見過ごすことができないだけだ」


「そりゃまた殊勝な心がけで……しかし、騎士様ってのは綺麗な女なら誰でも優しいんだな」


「人聞きの悪いことを言うな。美醜に関係なく女性には優しくするのが騎士の務めなのだ。これは博愛の精神によるもので、ヒュー・ルーウィック様も心がけていらっしゃる大切な教えなのだ!」


 そうかなぁ……ヒューは、こんなに手当たり次第じゃないと思うけど。


 息巻くエルトヴァイトの肩越しに見えたヒューの顔が何とも言えない表情になっていたのが、可笑しくて必死に笑いを堪える。


「そうは言っても、あんたはオーダイン家の人間なんだろう。傭兵風情と色恋なんて御法度じゃないのか」


 そういや、確かにエルトヴァイトの家名ってオーダインだったような……クレイの奴、よく覚えてるな。


「オーダイン伯爵ですね。カイロニアでも有力な貴族の一人です」


 クレイの発言に答えるようにヒューが補足した。


 さすが貴族の家系に詳しいヒューだ。思い出してみれば、エルトヴァイトが名乗ったときにヒューもクレイも反応してたっけ。


「ただの実家の名前だ。三男の僕には関係ない……」


 いつも溌剌としていたエルトヴァイトが初めて表情を曇らせる。


「だから、僕が誰と付き合おうと勝手なんだ」


 吐き捨てるように言うエルトヴァイトにクレイは目付きを鋭くして言った。


「こっちこそ、あんたの家の事情は関係ない。考えなしにリデルを巻き込もうとするなら、俺がただじゃおかないからな。俺なら、いつでも相手になってやる」


「何だと!」


 珍しくクレイの方から喧嘩を売っている……どうした、クレイ? よっぽど虫の居所が悪いんだろうか。


「……お二人とも、果し合いをするなら、もう少しあとにしてくださいますか。ほら、村が見えてきましたよ」


 オレがおろおろしていると、ヒューが絶妙なタイミングで間に入り、前方を指し示した。


「キースの言うとおりだ。この決着は後でつけてやる」


「わかった、望むところだ」


 一先ず、村に入る前に内輪もめが治まってくれてオレは内心ほっとした。




 しばらく進んで、オレ達は待ち伏せを警戒しながら、村へと入った。

 けれど、最初に来たときと同様に友好的な村人の態度に拍子抜けさせられる。どうも、オレ達と村長との確執については村人達に伝えられていないようだ。

 おかげで、前と同じように村の子供達にまとわりつかれて困ってしまった。


 しかも、口々に「亡霊は退治できたの?」と聞かれ、返答に窮する。

 そう言えば、オレ達の最初の依頼内容が『亡霊退治』だったことを今更ながら思い出す。村長と口裏を合わせていなかったので、下手に答えることができず笑ってごまかすことしか出来なかった。


 でも、そもそも『亡霊騒ぎ』って、いったい何だったのだろう。

 村長の思惑が今ひとつ掴めない。


 クレイにも、こっそり尋ねたら、村から出たら今回の騒動の種明かしをしてくれると約束してくれたので、もう少し我慢することにする。


 思いのほか順調に進んで、村長の屋敷の前に通りかかると、村長は苦虫をつぶしたような表情でオレ達を見送ってくれた。


 けど、息子や例の傭兵団の姿は一向に見えない。


「ねえ、クレイ。あの傭兵団の連中がいないけど、村外れとかで待ち伏せでもしてるのかな?」


「いや、その可能性は低いだろう」


「え、どうしてわかるの?」


「あの団長は不意打ちでもオレ達を倒せるとは思っていないだろうし、あの村長もせっかく纏まった取り決めを反故にするような真似はしないだろうさ。それに、村長としては馬鹿息子の身柄を確保したかっただけで、連中のことなんて正直どうでもいいと思っているはずだ。それに……」


「それに?」


 急に声を潜めたクレイに耳をそばだてる。


「もう殺されてるかもしれない」


「何だって!」


「しっ、声が大きい」


「だ、だって……」


 驚いて声を上げるオレにクレイが釘を刺す。


「例の財宝の件は外部に絶対漏らせないこの村の最重要機密だ。俺は村長との誓紙で、外へは絶対に漏らさないと誓約したが、秘密を知っている者は少ないに越したことはないからな」


「そんな……それほどのことなの?」


「それほどの話なんだよ、この村にとっては……」


 あとで真相を聞くつもりだったけど、ちょっと怖い話になりそうだ。


 オレの不安を余所に、オレ達とアエル一行は村内を無事に通り抜け、ようやくこの村を後にした。


さ、寒いです!

あちこちで大雪の被害が出ているようですが、読者の皆様のところはどうでしょうか?

私の方は父の関係でばたばたしてますが、今のところ大丈夫です。

今週は、ますます寒くなるとの話なので、皆様もお気をつけくださいね。



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