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いつまでも可愛くしてると思うなよ!  作者: みまり
いいかげんにしないと怒るからね!
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再び村へ……②


 クレイが、わざわざ横柄な物の言い方をしているのは、こちらも悪党だというポーズを見せているらしい。

 クレイ曰く、こういう輩と交渉するときには相手と同じような悪党だと思わせた方が話がよくまとまるのだとか。

 いったい、どこ情報なのやら……。


「とにかく、まず亡くなったラスバル(門番の名前)氏の埋葬費用と遺族への慰謝料をもらおうか。それと……開かずの間にある物についての引き取り料と俺が口外しないための誠意を見せてもらいたいものだ」


「…………」


「おいおい、だんまりを通すのは賢いやり方じゃないぜ。でないと、カンディアや神殿はおろか『青薔薇の咲く家』にも知らせなくちゃいけなくなる」


 その言葉に、無表情を装おうとしていた村長が顔を引きつらせ明らかに狼狽し始める。


「いくら出すかは村長さんの気持ち次第だが、安値で誤魔化そうしたら大変なことになるのは、わかったな?」


 台詞は、いかにも三下っぽかったけれど、効果は絶大だった。


「……わかった。取引に応じよう。こちらの出せる金額を提示する」


 村長は苦渋の表情で返答を搾り出すように言った。



 さて、どうしてこんな展開になったのかを説明するには、話が少し遡ることになる。 

 

 開かずの間についての話し合いが袋小路に入り、このままでは埒が明かないという状況に陥ったとき、クレイが一つの提案を示した。

 それは、宝の山の持ち主と思われる人物に金を出させ引き取ってもらうというものだった。


「持ち主って……それがわからないから困っているんだろう」


 オレが眉を顰めると、クレイは出来の悪い生徒を見る目つきで馬鹿にしたように言う。


「なあに簡単なことさ。アエル達でも前の所有者の物でもないんだったら、結論は一つに決まってる」


「それって、もしかして……」


「ああ、そうさ。屋敷の持ち主であった者達が気にも留めていなかった開かずの間の様子を確認したかった人物こそ、この宝の山の持ち主ってわけだ」


「つまり、ジロムク村長の物だとクレイは言いたいのですね」


 ヒューの問いかけにクレイは頷く。


「そりゃ、おかしいな。男爵レベルでも持てないような財宝を、いくらなんでもこんな村の村長が持てるわけがないだろう」


 サラが懐疑的な目でクレイを見る。


「確かに男爵級では手に入れられないような代物も含まれているな……けど、侯爵級ならどうだ?」


 クレイは意味深な言葉を吐いてニヤリと笑った。


 その後、オレとサラが思わせぶりな発言をしたクレイを、ずいぶんと問い詰めたのだけど、最後までその内容について明かさなかった。

 とにかく、村長との交渉は任せてくれの一点張りで、オレ達の不平不満など何処吹く風を通したのだ。


「だって、お前にバラしたら、すぐ顔に出るだろ。交渉ごとっていうのは、相手の真意が掴めないから駆け引きになるんだ。上手くいくためにも、ちょっと我慢してくれ。俺に任せてくれれば大丈夫だから」


 自身ありげなクレイの言い分に一理あったし、当事者であるジルコークが了承したのでオレが文句の言える立場ではなかった。


 それで冒頭のシーンに戻るわけだが、結局のところ村長との交渉ごと全般は奴の裁量次第となったわけだ。まあ、クレイのことだ、悪いようにはしないだろう。


「なるほど『青薔薇の咲く家』ねぇ」


 クレイの一言で急に勢いのなくなった村長を見て、後ろにいるサラがしたり顔で頷いていた。どうやら何かヒントになったらしいが、オレにはさっぱり見当がつかなかった。


「で、出せる金額ってのは、いくらだ?」


 クレイが鷹揚に尋ねると村長はクレイの顔色を窺いながら慎重に金額を口にした。

 けっこうな大金に思えたが、クレイは一笑に付す。


「おいおい、あれだけのお宝だぜ。桁が一つ間違ってやしないか?」


 えっ、いくらなんでもそれは無理だろ。

 オレが心の中で呟いていると、案の定村長が声を荒げる。


「そ、そんな無茶な! 言うに事欠いて、何の冗談だ……」


「俺は冗談言ってるつもりはないぜ。あそこにあるお宝は、それ以上の価値があると俺は踏んでるんだ」


「ぐぐ……」


 村長の顔が怒りのせいで赤くなっている。

 クレイ、いくらなんでも吹っかけすぎじゃ……。


「まあ、だけど開かずの間に眠らせているので、すぐに換金できないお宝だってのはわかってるつもりだ。だから、譲歩してやろう」


 クレイは上から目線で要求額の半分を告げた。それでも村長の提示額の五倍は開きがある。


「む、無理を言うな……」


「そうとは思えないがね」


 クレイと村長の息詰まる駆け引きがオレ達を蚊帳の外において、しばらく続いた。




「まあ、こんなところか……」


「この強欲者め!」


 結局、村長が最初に提示した額の三倍強で決着したが、オレからするとそんな大金、こんな村にあるのか? という金額だった。 


 オレが内心驚いていると、村長は一旦奥へ入ると宝箱を抱えて戻ってくる。両脇には妻と侍女を連れてきていた。

 何故、二人を連れてきたのだろうと疑問に思っていたら、どうやらオレ達に対する牽制のようだ。よもや、クレイが悪党だとしてもオレやサラという女性陣の前で女性に危害が及ぶような真似はしないだろうという腹積もりらしい。


 クレイの小悪党という演技が成功している証拠だろう。以前、オレの演技を馬鹿にしていただけのことはあるということなのか。

 いや、悪党な振りをしていても育ちの良さが滲み出る素のせいかもしれない。


「どうだ、これで文句はあるまい」


「へぇ、リフテ白金貨か。たいしたもんじゃないか」


 箱を開けて見せたのは、リフテ皇帝が鋳造した白金貨で通常の金貨の百倍の価値があると言われているものだった。


「待て、まだ渡すわけにはいかん。息子たちや例の宝物と交換だ」


 宝箱に手を伸ばそうとしたクレイの目の前で箱を閉じると、村長は睨みつけるように言った。


職場でインフルエンザB型が猛威を振るっていますw

感染は時間の問題かも……。

けど、今休むと仕事が洒落にならない(>_<)

が、がんばります!


読者の皆様もお気をつけくださいね。

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